岡本桂多のKill them All!「統率者戦の基本」リマスター










※:このコラムは当サイト立ち上げ時に掲載された"岡本桂多のKill them All!「統率者戦の基本」"に加筆・修正を施したものとなります。
  『Commander Anthology』の発売に併せて、統率者戦の魅力を改めていきたいという思いから、再掲となりました。







はじめに




お久しぶりです、BIG MAGIC池袋店・統率者戦担当の岡本です!
以前BIGWEBマジック:ザ・ギャザリング情報サイト開設の際に、統率者戦に関する初心者向け記事を書かせて頂きました。
今回『Commander Anthology』の発売、そしてBigwebで多人数戦特集をするという事で、当時の記事を今風にブラッシュアップしました!

このコラムでは



・統率者戦をやってみたいけどどんなものなのかよくわからない
・統率者戦の構築済みセット等を購入して実際に始めてみたけど右も左もわからない



という初心者の方々のために、このフォーマットにおける基本的な事柄の紹介をします。
すでに統率者戦に馴染みのある方はちょっと退屈かもしれませんが、ご友人に「布教」する時にでも活用して頂ければと思います。


今回は統率者戦の基本的なルールと、各色の統率者戦における特色、よく使われるカードを紹介していきます。
少し長くなってしまうので、アーティファクトと多色、土地に関しては次回以降に紹介します!






統率者戦の基本




統率者戦とはマジックにおける多人数戦ルールを用いたカジュアルフォーマットです。多人数とは言っても4人±1人ぐらいでやるのがちょうどいいです。
統率者戦では、普通のマジックの構築とは違ったデッキ構築ルールがあります。

・デッキは統率者として指定した伝説のクリーチャー1枚を含む100枚ちょうど
・基本土地以外のカードは各種1枚ずつしかデッキに入れられない
・デッキに入れられるカードは、統率者の固有色(そのクリーチャーの色+そのクリーチャーのテキスト欄に書いてある色マナシンボル)のカードのみ、それ以外の色を持つカードは入れられない

この3つの大前提のルールが統率者戦の面白さと難しさを形作っています。
1つ目と2つ目のルールによって、必要なカードを必要なタイミングで手札に引き込む事が困難になっていて、各ゲームでの「引き」に依存して毎回異なったゲームの展開が楽しめます。
3つ目のルールによって、各デッキに出来る事と出来ない事が分かれて、それぞれのデッキを差別化する事が出来ます。


ここまではデッキ構築段階で気を付けるべき事を紹介してきたので、ここからは実際にゲームを始める時の流れを解説していきます。




統率者戦のデッキは統率者込みで100枚のデッキを構築しますが、ゲーム開始時には統率者はデッキから除き、統率領域という領域におかれます。
統率者がこの統率領域にいる時、手札にあるかのようにプレイすることが出来ます。 

また、統率者がいずれかの領域からライブラリー、手札、墓地、追放領域に置かれる場合、代わりに統率領域に置くことを選択できます。
しかし、2回目以降に統率領域から唱える時、1回につき無色2マナの追加コストを支払わなければいけません。
従って、統率者を出しては除去されてという流れを繰り返すと、唱え直すためのマナコストが2回目は2マナ、3回目は4マナ、4回目は6マナとどんどん重くなっていきます。

統率者はどのゲームでも(土地事故さえ起きなければ)毎回唱える事が出来るため、基本的にはデッキの核となります。

統率者の持つ能力・効果をうまくサポートするカードを採用したり、統率者とコンボするカードを採用したり、逆に統率者を囮にして残りの99枚のデッキに入っているまったく別のコンボを成立させたりと色々な戦術が取られます。



統率者戦は多人数で行われるので、多人数ルールとして先行プレイヤーも最初のターンのドローフェイズにドロー出来ます。
ちなみにマリガンのルールについても以前記事を掲載した時とは少し変わっており、いわゆる「バンクーバーマリガン」の多人数戦版になります。

1.初手の7枚をチェック
2.気に入らない場合はライブラリーに戻して(ここで多人数戦ルールが適用されて)最初の1回は7枚引き直す(※)
3.それでも気に入らない場合はまた引き直す。ここからは引く枚数が1枚ずつ減っていきます。
4.キープする事にしたら、もし6枚以下で始める場合は占術1を行ってからゲーム開始

という手順になります。


※99枚のデッキを毎度シャッフルするのが面倒なので、僕が身内とやる時はステップ2で気に入らなかった初手を一旦脇にどけて新たに引き直し、キープを宣言したらそれまでに脇にどかしたカードをライブラリーに戻してシャッフルという事をやっています。


各プレイヤーの初期ライフは40から始まります。
これだけライフがあると普通の構築戦では非常に強力な《タルモゴイフ/Tarmogoyf》などの「マナレシオが良い"だけ"のクリーチャー」は基本的に採用されません。
代わりに、少々マナコストがかさんでも強力なパワーを持っていたり、アドバンテージを一気にとれたりするカードはよく採用されます。
これは、多人数戦だと必然的に長期戦になる事が多く、長期戦になればなるほどマナレシオの良さよりも単体でのカードパワー(並外れた打点の高さやアドバンテージ確保能力など)が重要になってくるためです。


精霊龍、ウギン.jpgスランの発電機.jpg


こういったマナコストがかさむ代わりに強力なカードを無理なく運用するために、一般的にはマナ加速が多く採用されます。マナ加速に長ける緑以外の色では、マナを生み出すアーティファクト「マナアーティファクト」を主に用います。


普通に攻撃してライフを攻めるだけだと、4人戦と仮定すると合計で120点のライフを削らなければ勝利できません。
したがって、普通に攻撃するだけではなく無限コンボや即死コンボを採用したり、通常の攻撃をあきらめて無限コンボしか狙わないようにデッキを構築したり、毒カウンターなら合計30個で良いので感染デッキを組んだりと様々な工夫を凝らす必要があります。




後は基本的には普通のマジックのゲームと同じようにプレイするだけですが、いわゆる「ヘイト値」と呼ばれる「卓の中でいかに目立った脅威となっているかどうか」という目に見えない値があると信仰されています。
めちゃくちゃ平たく説明すると「嫌われないプレイを心がける」ことでこのヘイト値を稼ぎすぎないように出来ます。
これに関してはもう実戦を重ねて慣れていくしかありません。






各色の特徴




ここからは統率者戦における各色の特色やよく採用されるカードの例を挙げていきたいと思います。


まずは白から。



white.jpg



「リセット呪文」



《神の怒り/Wrath of God》《ハルマゲドン/Armageddon》《質素な命令/Austere Command》《カタストロフィ/Catastrophe》《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobite》など


神の怒り.jpg質素な命令.jpg

多人数戦では、効果が全体に及ぶものは普通のマジックのゲームとは異なり、対戦相手3人全てに効果が及ぶので、大変強力なものになります。リセット呪文に関しては特にその傾向が顕著になります。
対戦相手1人だけが強力なクリーチャーを展開している場合は単体除去で事足りますが、対戦相手3人ともが強力なクリーチャーを展開してきた場合、1枚の《神の怒り/Wrath of God》で対戦相手全員のクリーチャーを一掃してしまった方が良いでしょう。


大修道士、エリシュ・ノーン.jpg



《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobite》はクリーチャーカードゆえに対処されやすい事もありますが、永続的に小型クリーチャーを殲滅しつつ自分のクリーチャーを強化できるので、速やかにゲームを終わらせてくれるでしょう。



ハルマゲドン.jpg


土地破壊に関しては、マジックの古えのデッキ「セラマゲドン」と同様の単純な戦法である「自分が先に脅威となるクリーチャーを展開し、対戦相手が展開する前に《ハルマゲドン/Armageddon》で土地を吹き飛ばす」使い方が非常に強力です。




「アーティファクト・エンチャント破壊」



《断片化/Fragmentize》《解呪/Disenchant》《浄化の印章/Seal of Cleansing》《塵への帰結/Return to Dust》《塵は塵に/Dust to Dust》など。


断片化.jpg
 


統率者戦デッキは特別に尖った構成にしない限り、アーティファクトやエンチャントが採用されないデッキはありません。それらがただ単にマナ加速をしていくものやカードを引き増しするものであれば(限度はありますが)そこまで躍起になって破壊する必要はありませんが、無限コンボのパーツとして採用されるアーティファクトやエンチャントも無数に存在します。


解呪.jpg

他の人が妨害してくれればそれで良いのですが、基本的に無限コンボは成立してしまえば他のプレイヤー全員が敗北してしまうので、一人勝ちを阻止するためにも《解呪/Disenchant》などのインスタントタイミングで使える妨害カードを採用しましょう。

また、緑以外のデッキはマナ加速をアーティファクトに頼るしかありません。したがって、卓に緑が絡んだデッキばかりでない限りはアーティファクトの総数が必然的に多くなります。


塵への帰結.jpg



自分のマナ加速を進める事ももちろん重要ですが、対戦相手のマナ加速を妨害する事もまた重要になってきます。こういう時は一人のマナ加速を妨害するだけでは効果が薄いので、1対1交換しか出来ない《解呪/Disenchant》などよりは《塵への帰結/Return to Dust》などの1対多数交換が出来るカードを積極的に使っていきましょう。




「ロック手段」



《沈黙のオーラ/Aura of Silence》《石のような静寂/Stony Silence》《戦争の報い、禍汰奇/Kataki, War's Wage》《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》など。


沈黙のオーラ.jpg



アーティファクト・エンチャント破壊と通じるものがありますが、永続的に動きを制限していく事が出来るのも白の強みのひとつです。
この中でも《沈黙のオーラ/Aura of Silence》は対戦相手だけアーティファクト・エンチャントの展開が遅れ、しかもいざという時には破壊にも使えるのでにらみを利かせる事が出来る便利エンチャントです。




「質の良いクリーチャー」



漠然としていますが、白にはここには書ききれないほど多くの優秀なクリーチャーが存在します。
《セラの高位僧/Serra Ascendant》は初期ライフが40の統率者戦では1マナ6/6飛行絆魂というとんでもない強さのクリーチャーになります。


セラの高位僧.jpg目覚ましヒバリ.jpg



《目覚ましヒバリ/Reveillark》は多くのカードとシナジーを形成します。《霊体の先達/Karmic Guide》、《サッフィー・エリクスドッター/Saffi Eriksdotter》、《影武者/Body Double》、《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》のどれか1枚と生け贄手段で無限生け贄コンボになります。
無限コンボを狙わなくとも、戦場に出たときに何か効果を及ぼす、パワー2以下のクリーチャーカードは無数に存在します。スタンダード当時でも「青白ヒバリ」や「赤白ヒバリ」などのデッキが存在していましたが、その当時共演出来なかった意外なカードとのシナジーは多く存在します。




白は一見何でもできるように見えますが、欠点の一つにカードを引く効果を持つカードが少なく、工夫しなければいずれ手札が切れてしまう事があげられます。
ドローサポートが出来る色との混色だと話は簡単なのですが、単色で組む時はアーティファクト(《精神の眼/Mind's Eye》《遠見の仮面/Farsight Mask》《頭蓋骨絞め/Skullclamp》《ニンの杖/Staff of Nin》など)を使って補っていきましょう。

白は単色だとドローサポートが弱いという欠点が厳しいためあまりオススメ出来ません。
その反面他の色、特に青や黒との混色になると欠点を補うことが出来、とても強力な色になります。



続いては青。


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「カウンター」



《対抗呪文/Counterspell》《秘儀の否定/Arcane Denial》《巻き直し/Rewind》《Force of Will》《Mana Drain》《マナ漏出/Mana Leak》《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》《否認/Negate》《白鳥の歌/Swan Song》など。


対抗呪文.jpg



青の特徴の一つとして有名なのが豊富なカウンター呪文でしょう。マジックでは土地以外のカードは基本的に全て打ち消す事が可能なので、そのカウンター呪文を使える青は全てのカードに干渉できると言っても過言ではありません。よく使われる無限コンボの中にはクリーチャー除去が効かないものや、アーティファクト・エンチャント破壊が効かないものなど、色々な妨害耐性を持ったコンボがあります。しかし、打ち消し耐性のある無限コンボはほぼ存在しません。何を打ち消せば良いのかの判断さえ的確に出来れば、どんなコンボであっても妨害する事が出来ます。



よく使われるカウンター呪文の中には、コストが重い代わりにカウンター出来る範囲が広いもの(《対抗呪文/Counterspell》や《否認/Negate》など)と、コストが軽い代わりにカウンター出来る範囲が狭いもの(《白鳥の歌/Swan Song》や《払拭/Dispel》など)があります。


秘儀の否定.jpg



前者は相手の行動の妨害として、後者は自分の行動の妨害対策としての役割の違いがあるので自分のデッキに何が必要なのか見極めて採用しましょう。
カウンターの中でも《秘儀の否定/Arcane Denial》は比較的(色拘束的な意味で)軽く、範囲が広いので採用される頻度は高めです。



「ドロー」



《定業/Preordain》《思案/Ponder》《渦まく知識/Brainstorm》《強迫的な研究/Compulsive Research》《入念な考慮/Careful Consideration》《嘘か真か/Fact or Fiction》《青の太陽の頂点/Blue Sun's Zenith》《明日からの引き寄せ/Pull from Tomorrow》《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》《リスティックの研究/Rhystic Study》《Mystic Remora》など。


思案.jpg聖別されたスフィンクス.jpg

統率者戦では対戦相手が3人もいるため、対戦相手の行動と1対1交換等を繰り返していくとすぐに手札が尽きてしまいます。ドロー呪文が豊富な青なら息切れすることなく継続的に展開していけるでしょう。
序盤にマナ加速を引きたい時、中盤から終盤にコンボパーツを集めたい時、相手のコンボを妨害できる妨害カードを探しに行く時など、ドロー呪文がいらないタイミングはほとんどありません。


リスティックの研究.jpg


《リスティックの研究/Rhystic Study》《Mystic Remora》はカードを引ける量は対戦相手依存になってしまいますが、早いターンに設置することが出来れば大量ドローが見込めます。






「バウンス」



《残響する真実/Echoing Truth》《送還/Unsummon》《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》など。


残響する真実.jpg



青いカードでパーマネントを破壊する手段はほとんどありません(クリーチャーだけなら《猿術/Pongify》《急速混成/Rapid Hybridization》で破壊できます)。しかしその代わりに青は手札に戻す(バウンス)効果が豊富にあります。



これらのバウンスカードは一時的にしかカードをどかす事は出来ませんが、コンボを妨害するカードや1ターンでも長く放置しておくと莫大なアドバンテージにつながってしまうカード、こちらのコンボを警戒して全力でこちらのライフを削りに来るアタッカーなどを手札に戻す時の動きはゲームに非常に大きな影響を及ぼします。



もちろん何も考えずにただ闇雲にバウンスしていてもこちらのリソースが減っていくだけなので、どのタイミングでバウンスすれば最も効果的なのかをしっかりと見極める必要があります。


サイクロンの裂け目.jpg
 


《サイクロンの裂け目/Cyclonic Rift》はバウンスカードの中では別格です。何といっても超過で放った時の盤面への影響力が尋常ではありません。自分のパーマネントを破壊等から守る使い方は出来ないものの、青いデッキならほとんど採用しているカードですね。



「コントロール奪取」



《金粉のドレイク/Gilded Drake》《支配魔法/Control Magic》《不実/Treachery》など。


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統率者は破壊や追放をしても統率領域に戻るだけで、再び戦場に戻ってくることができます。しかしコントロールを奪われた時は統率領域に戻れないので、統率者を除去する方法としては最良の方法と言えるでしょう。


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統率者のコントロールを奪わなくとも、統率者戦のデッキで採用されるクリーチャーはそのほとんどがカードパワーが高く、コントロールを奪取することで形勢を一気にひっくり返すことができる事でしょう。
《金粉のドレイク/Gilded Drake》はクリーチャーという性質を生かしてバウンスで再利用、コピーで再利用、黒の墓地利用で再利用、緑のクリーチャーサーチでサーチ等々、悪用し放題のトンデモクリーチャーです。



「コピー」



《幻影の像/Phantasmal Image》《ファイレクシアの変形者/Phyrexian Metamorph》など


幻影の像.jpg


コントロール奪取と似通った部分がありますが、何かのコピーになるカードがあるのも青の特色の一つです。
その性質上コピー元は必要ですが、その場で最も有用なカードになれるこれらのカードは柔軟性に富んでいるカードと言えるでしょう。


ファイレクシアの変形者.jpg


相手が《酸のスライム/Acidic Slime》などを出していれば本来青では触る事が出来ないアーティファクト・エンチャントも破壊することが出来ますね。
《ファイレクシアの変形者/Phyrexian Metamorph》は無色マナだけで唱えられる点、クリーチャーだけでなくアーティファクトのコピーにもなれる点などから比較的よく採用されます。




「豊富なコンボパーツ」



青単色でもいくつか無限コンボがあり、また青はそのコンボパーツを探すand/or引く能力に長けています。


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《精神力/Mind Over Matter》+《寺院の鐘/Temple Bell》(+《無限に廻るもの、ウラモグ/Ulamog, the Infinite Gyre》や《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》等)で、対戦相手全員がライブラリーアウトして自分は各種自動的にライブラリーを修復するカードによって生き延びるコンボです。無限コンボはクリーチャーを介するものが多いなか、このコンボはクリーチャー除去が全く効かないコンボで、色によっては全く干渉できないので非常に強力です。


パリンクロン.jpg狙い澄ましの航海士.jpg

《パリンクロン/Palinchron》+《幻影の像/Phantasmal Image》、《パリンクロン/Palinchron》or《巨大鯨/Great Whale》or《流浪のドレイク/Peregrine Drake》+《狙い澄ましの航海士/Deadeye Navigator》、《High Tide》+《パリンクロン/Palinchron》で(島の枚数が十分にあれば)無限マナというコンボもあります。





青の欠点は厄介なカードをカウンターで打ちもらしてしまった場合に一気に苦しくなってしまう点があげられます。
アーティファクトを多用している場合は《無のロッド/Null Rod》や《石のような静寂/Stony Silence》などのアーティファクトヘイトカードが着地してしまうと、バウンスで一時的に対処するしか無くなってしまいます。


無のロッド.jpg石のような静寂.jpg

他の欠点としては、クリーチャー同士の戦いになった時、クリーチャー自体のスペックが低いので打ち負けてしまう事があげられます。単色の場合はより早くコンボを目指せるようにしてクリーチャー戦を出来るだけ避け、多色の場合は他の色のクリーチャーに頼るようにしましょう。

青はどんなカードに対してもカウンター呪文によって対処する事が出来、また仮に打消せなかったとしてもバウンスすることにより一時的とはいえ対処する事が出来る万能色です。
それ故に「卓に青がいたら殴れ」という格言があるぐらい「ヘイト値」という意味では高い色になってしまいます。速度を追い求めてヘイトを振り切る、妨害カードを使って恩を売って交渉する、などの工夫が必要になります。





黒の役割も見てみましょう。


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「ドロー」



《夜の囁き/Night's Whisper》《血の署名/Sign in Blood》《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》《月光の取り引き/Moonlight Bargain》《古えの渇望/Ancient Craving》など。


夜の囁き.jpgファイレクシアの闘技場.jpg

ドローは青の特権のように思えますが、黒にも多くあります。その多くがドローと引き換えにライフを要求してきますが、幸い統率者戦では初期ライフが40もあるので大きな痛手にはなりません。
《ファイレクシアの闘技場/Phyrexian Arena》は各ターン追加で1ドローをもたらしてくれるカードで、コストもたった1点のライフを支払うだけという素晴らしいカードです。数ターンで勝負が決まってしまうような殺伐とした卓では効果が薄いですが、長期化した時にこのカード1枚がもたらしてくれるアドバンテージはとても大きいでしょう。なるべく早いターンに設置したいので、最序盤のサーチカードで持ってくることが多いですね。




「サーチ」



《吸血の教示者/Vampiric Tutor》《Demonic Tutor》《魔性の教示者/Diabolic Tutor》《悪魔の意図/Diabolic Intent》《伝国の玉璽/Imperial Seal》《女王への懇願/Beseech the Queen》など


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黒のサーチカードは何でも持ってこられるサーチカードです。その代償としてやはりライフの支払いを求められますが、ここでもやはり初期ライフが多い事からほとんどデメリットとして見られません。
惜しむらくはほとんどが高額なために手放しで初心者の方にオススメしづらい点です。
最初の内は「今の状況にクリティカルなカードがない」、もしくは「何を持って来れば良いのか分からない」という事もあるため、無くても問題ありません。
統率者戦を繰り返して慣れていって、「この状況ではこれが欲しい」という目的が明確になってきたら手を出してみるのも良いと思います。



「クリーチャー除去」



《殺し/Snuff Out》《四肢切断/Dismember》《喉首狙い/Go for the Throat》《滅び/Damnation》《苦痛の命令/Decree of Pain》《毒の濁流/Toxic Deluge》など。


殺し.jpg四肢切断1.jpg

黒の特権といえばクリーチャー破壊です。単体除去から全体除去まで豊富に揃っています。
クリーチャー同士の殴り合いになった時にはもちろん、よく採用される無限コンボはクリーチャーを介するものが多いので、それらを妨害する時にも必要になります。
単体除去なら《殺し/Snuff Out》《四肢切断/Dismember》あたりが軽いコストで広い範囲のクリーチャーに対処できるのでオススメです。


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全体除去は支払うライフコストが重くなってしまう場合もありますが《毒の濁流/Toxic Deluge》がマナコスト的には軽く強力です。





「墓地利用」



《再活性/Reanimate》《動く死体/Animate Dead》《ネクロマンシー/Necromancy》《死体のダンス/Corpse Dance》など。


再活性.jpg死体発掘.jpg

 統率者戦では、初動が速くて妨害されずに勝利まで駆け抜ける時以外は基本的には長期戦になります。長期戦になると必然的に墓地が増えて、墓地利用を出来るデッキが有利になっていきます。黒は自分のクリーチャーのみならず対戦相手のクリーチャーも墓地から釣り上げる事が出来るので、臨機応変に動くことが出来ます。


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《ネクロマンシー/Necromancy》は緊急時の墓地対策としても使えるのでオススメの1枚です。



黒の欠点はなんと言ってもアーティファクトとエンチャントに対処する手段がほとんどない事です。
他の色との混色デッキの場合はそちらの色のカードに任せられます。
黒単色の場合はあきらめるか、使い勝手は悪いもののアーティファクト(《漸増爆弾/Ratchet Bomb》《イシュ・サーの背骨/Spine of Ish Sah》など)や最終兵器《解放された者、カーン/Karn Liberated》に頼りましょう。
漸増爆弾.jpg解放された者、カーン.jpg


黒はドロー&サーチ能力が高いため、混色だとよく潤滑油役で重宝します。
単色でも先述の欠点はあるものの、単色サポートのカード(《陰謀団の貴重品室/Cabal Coffers》など)のおかげで爆発力自体はあるため、単色でも混色でもよく見かける事になるでしょう。






赤のカードはバラエティー豊かです。




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「アーティファクト破壊」



《汚損破/Vandalblast》《溶解/Smelt》《破壊放題/Shattering Spree》《破壊的脈動/Shattering Pulse》《溶融/Meltdown》《荒残/Rack and Ruin》《ヴィーアシーノの異端者/Viashino Heretic》《力ずく/By Force》など。


汚損破.jpg破壊放題.jpg



赤には豊富なアーティファクト破壊があります。
色によってはあまり採用されないエンチャントと違って、アーティファクトはほとんどの統率者戦のデッキに採用されています。
アーティファクト破壊が全く使い所がないという状況は非常に稀なので、忘れずに採用するようにしましょう。


力ずく.jpg


《汚損破/Vandalblast》《力ずく/By Force》は序盤に急いで1個破壊する時も終盤に多数破壊する時もこれ1枚で事足りるため、採用される事が多いですね。




「アーティファクトシナジー」



《屑鉄の学者、ダレッティ/Daretti, Scrap Savant》《財宝発掘/Trash for Treasure》《ゴブリンの溶接工/Goblin Welder》《ヘルカイトの暴君/Hellkite Tyrant》


屑鉄の学者、ダレッティ.jpg財宝発掘.jpg



赤はアーティファクトを破壊する手段だけでなくアーティファクトを活用する手段にも長けています。
赤単色で組む場合は、手札を補充する手段などのためにどうしてもアーティファクトに頼る事になります。そうなった時にこのアーティファクトシナジーのカードをデッキに組み込む事でよりデッキの動きが強固になる事でしょう。





「全体リセット呪文」



《ジョークルホープス/Jokulhaups》《壊滅/Devastation》《黙示録/Apocalypse》《抹消/Obliterate》など。


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赤が使うリセット呪文は、白や黒のものと違って非常におおざっぱなものです。
クリーチャーだけでなく土地もまとめて破壊してしまうものなので、《神の怒り/Wrath of God》を撃つような気軽さでは使えません。
その効果は非常に大きい反面、何も考えずにただ盤面を更地にしてしまうだけだとトップ勝負になってしまい、ゲームがグダついてしまいます。使うときは十分注意しましょう。
自分のパーマネントに破壊不能を持たせる、大量のマナを生み出しておいてリセット後に更に展開する、待機呪文を活用する、エンチャントやプレインズウォーカーのようなリセットに巻き込まれないものを使う等の工夫をしてあげると、使いにくいリセット呪文が一転強力なフィニッシャーになってくれます。


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リセット呪文とは少し毛色が違いますが、赤単色の場合は《破滅/Ruination》《月の大魔術師/Magus of the Moon》《血染めの月/Blood Moon》の3種の特殊土地攻めカードを自分への被害が少なく使用できます。
使用用途は白の《ハルマゲドン/Armageddon》と似たようなものですが、自分への被害が軽微であれば《ハルマゲドン/Armageddon》以上の影響を及ぼすでしょう。



「ドロー」



《信仰無き物あさり/Faithless Looting》《苦しめる声/Tormenting Voice》《安堵の再会/Cathartic Reunion》など



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赤のドロー呪文は引いた後に捨てる、捨てた後に引くなど手札の枚数が増えないものです。
単純なドローとは違って墓地を肥やす事が出来るので、是非墓地利用とセットで採用したいところですね。



赤の欠点はパーマネント対処能力が低い点がまずあげられます。
アーティファクトこそ破壊手段に富んでいますが、クリーチャーは使い勝手の悪いものを除くとダメージによる破壊ばかりで、大型クリーチャーへの対処手段はほぼありません。
また、黒のようにエンチャントに触る手段がありません。先述のリセット呪文もご丁寧にもエンチャントにはノータッチのものばかりです(それを逆に利用するプランもあるので一概に欠点とは言えませんが・・・)
赤のカードでは手札の枚数を増やす手段も乏しいため、すぐに息切れしてしまいます。白と同様にアーティファクトに頼る事で補う必要があります。

赤は対戦相手の行動への対処能力には乏しいため、統率者戦で安定した勝率を求めるのは難しいです。
逆に言うと対戦相手の行動に一々干渉する必要がないためカードを把握していない初心者の方には使いやすいかもしれません。





最後に緑を。




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「質の良いクリーチャー」



緑はクリーチャーの色です。


極楽鳥.jpgラノワールのエルフ1.jpg


マナクリーチャー(《極楽鳥/Birds of Paradise》《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》等)はアーティファクトに頼る事なく、しかも多くの場合1ターン目からマナ加速に貢献出来るので、スピーディなゲームの展開が期待できます。


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中堅のクリーチャーも強力なものが多く、《酸のスライム/Acidic Slime》《再利用の賢者/Reclamation Sage》《刻み角/Manglehorn》などの対応力重視のものから《野生の狩りの達人/Master of the Wild Hunt》や《猛り狂うベイロス/Rampaging Baloths》などの自軍を簡単に増強できるものなど精鋭ぞろいです。


飢餓の声、ヴォリンクレックス.jpg雷足のベイロス.jpg


大型クリーチャーは言うまでもなく、《ゼンディカーの報復者/Avenger of Zendikar》《飢餓の声、ヴォリンクレックス/Vorinclex, Voice of Hunger》《テラストドン/Terastodon》などの圧倒的なパワーを持つものや《雷足のベイロス/Thunderfoot Baloth》《孔蹄のビヒモス/Craterhoof Behemoth》などのフィニッシャーまで揃っています。
パワータイプばっかりかと思いきやシステムクリーチャーも豊富です。


ムル・ダヤの巫女.jpg種子生まれの詩神.jpg


《永遠の証人/Eternal Witness》《棲み家の防御者/Den Protector》《ムラーサの緑守り/Greenwarden of Murasa》《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》《種子生まれの詩神/Seedborn Muse》《放浪の吟遊詩人、イーサーン/Yisan, the Wanderer Bard》《森を護る者/Sylvan Safekeeper》《生命線のハイドラ/Lifeblood Hydra》等々、種類・用途が豊富で紹介していくにはスペースが足りません。




「優秀なクリーチャーサーチ」



《俗世の教示者/Worldly Tutor》《出産の殻/Birthing Pod》《緑の太陽の頂点/Green Sun's Zenith》《歯と爪/Tooth and Nail》《召喚の調べ/Chord of Calling》など


俗世の教示者.jpg出産の殻.jpg


先ほど紹介した優秀なクリーチャーも適切なタイミング以外で引いてきても弱い可能性があります。
しかし緑はクリーチャーをサーチする手段が豊富なため、適切なタイミングで引っ張ってくる事が出来るのです。
《俗世の教示者/Worldly Tutor》はすぐに手札にいれる事が出来ないものの、インスタントでコストも非常に軽く、サーチできる範囲もクリーチャーであればなんでもOKという柔軟性に富んでいるため、単色デッキでも多色デッキでもお呼びがかかる優秀なカードです。





「パーマネント破壊」



《内にいる獣/Beast Within》《押し潰す蔦/Crushing Vines》《帰化/Naturalize》《自然の要求/Nature's Claim》《酸のスライム/Acidic Slime》《森滅ぼしの最長老/Woodfall Primus》《ドライアドの歌/Song of the Dryads》など。



内にいる獣.jpg押し潰す蔦.jpg


緑は全てのパーマネントに触る手段があります。クリーチャーを破壊する方法は限定されますが、それ以外のパーマネントの破壊に関しては非常に得意としています。
エンチャントやアーティファクトが絡んだ無限コンボは少なくはなく、また無限コンボでなくとも強力なエンチャントやアーティファクトは無数に存在するので、それらを簡単に処理できる緑は柔軟に戦える色と言えるでしょう。
《内にいる獣/Beast Within》はどんなパーマネントでも破壊してただの3/3クリーチャートークンに変えてしまいます。統率者戦ではただの3/3クリーチャーなどデメリットにしてはあまりに軽微で、非常に使い勝手が良いカードです。





「ドロー」



《調和/Harmonize》《森の知恵/Sylvan Library》《精霊の絆/Elemental Bond》《巫師の天啓/Shamanic Revelation》《リシュカーの巧技/Rishkar's Expertise》など



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単純なドロー呪文の枚数は青や黒には劣りますが、緑も十分ドローカードが豊富です。
その多くはクリーチャーに依存したものではありますが、緑がデッキに入っていてクリーチャーがほとんどいないというデッキは稀なので、そこまで気にすることは無いでしょう。


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《森の知恵/Sylvan Library》は唱えるコストが軽く、クリーチャーに依存せず、毎ターン適切なドローがしやすくなるため緑絡みのデッキであれば必ず入っているカードです。




「マナサポート」



《三顧の礼/Three Visits》《自然の知識/Nature's Lore》《遥か見/Farseek》《木霊の手の内/Kodama's Reach》《耕作/Cultivate》《繁茂/Wild Growth》《肥沃な大地/Fertile Ground》



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マナクリーチャーだけでなく、呪文によってマナ基盤をサポートしやすいのも緑の特徴の一つです。
マナアーティファクトは全色で使うことが出来ますが、対処できるカードの種類が多く、しかも頻繁に採用され得るものですので信頼性は少し落ちてしまいます。特にマナアーティファクトをばら撒いたものの対戦相手に《無のロッド/Null Rod》を置かれて手も足も出ずに負けた、という展開はザラにあります。
土地を伸ばす事、エンチャントによりマナを確保する事は対戦相手からすると非常に妨害しづらいため、信頼性の高いマナ確保手段です。


ティタニアの歌.jpg


自分はあえてマナアーティファクトをほとんど採用せず、自分から《無のロッド/Null Rod》《ティタニアの歌/Titania's Song》などで対戦相手のアーティファクトをロックする手段も容易に取ることが出来るでしょう。



緑の弱点としては、(青以外の色全てに言えますが)インスタントやソーサリーに干渉できないため、相手に強力なインスタントやソーサリーを使われると一気に不利になってしまう事があげられます。特にクリーチャーに頼る事が多いので、全体除去などを一度まともに喰らってしまうと立て直す前に他の人に勝利を持って行かれる事があります。むやみにクリーチャーを展開しすぎないように注意しましょう。

緑はマナ基盤も優秀、ドローも優秀、クリーチャーも優秀、と何でも揃っている色です。短期決戦の際に重要なマナクリーチャーもあり、長期戦の際のアドバンテージ確保手段もあります。
ストレスなくゲームが出来るため初心者から上級者までに好まれる色ですね。






「最後に」



統率者戦を楽しむ際に注意するべき点が一つだけあります。
このフォーマットをカジュアルフォーマットだからと気楽にデッキを組んでパーティゲームの一環としてプレイしたいカジュアルプレイヤーもいれば、カジュアルフォーマットとはいえしっかりと勝ちに行きたいガチプレイヤーもいます。もちろん前者も後者もプレイスタイルとして正しい姿勢です。
自分がプレイする環境に応じてデッキを構築していけると、もっと長く統率者戦を楽しんでいけると思います。


今回の記事で各色の特色やよく使われるカードを挙げましたが、これらを必ずしも採用する必要はもちろんありません。
自分の好きなカードやデッキ、コンボを使うのが一番長続きするコツです。
統率者戦はデッキを構築する楽しみも、実際にゲームをプレイする楽しみも他のフォーマットとは段違いです。近しい友人を誘って一回統率者戦をやってみればすぐにその魅力に気づくはずです。
是非マジックの新旧入り乱れた混沌としたゲームを楽しんでみてください!!



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