By Riku Imaizumi
マジック・フェスト名古屋2020#1の日曜競技ヴィンテージにて見事優勝を果たした藤平 康平。なんと競技ヴィンテージでの優勝は2回目、TOP8の入賞は6回目だという。
そんな彼に、今回の使用デッキの解説について伺った。
彼の使用デッキは4色の墓荒らし。通常は青黒緑の3色で組まれることが多いデッキタイプだが、何を思って4色目を加えたのか、その真意を見ていこう。
なお、藤平に同時にインタビューした「ヴィンテージに新規参入したい方へ」というコンセプトの記事はこちらをご覧いただきたい。
デッキについて
デッキ名:四レガヴィンテージ部 in 関西
(「四日市レガシー」の意味があるとのこと)
土地
3《Tropical Island》
2《Underground Sea》
2《Badlsnds》
2《不毛の大地/Wasteland》
1《露天鉱床/Strip Mine》
3《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
2《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
2《汚染された三角州/Polluted Delta》
1《Mox Emerald》
1《Mox Jet》
1《Mox Ruby》
1《Mox Sapphire》
1《Black Lotus》
クリーチャー
1《厚かましい借り手/Brazen Borrower》
1《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》
2《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
1《トレストの使者、レオヴォルド/Leovold, Emissary of Trest》
1《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》
4《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
スペル
1《ダク・フェイデン/Dack Fayden》
2《レンと六番/Wrenn and Six》
2《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》
1《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》
1《王家の跡継ぎ/The Royal Scions》
4《意志の力/Force of Will》
3《暗殺者の戦利品/Assassin's Trophy》
1《精神的つまづき/Mentalmisstep》
1《Ancestral Recall》
1《悪魔の教示者/Demonic Tutor》
1《湖での水難/Drown in the Loch》
1《狼狽の嵐/Flusterstorm》
1《致命的な一押し/Fatal Push》
1《突然の衰微/Abrupt Decay》
1《渦まく知識/Brainstorm》
1《宝船の巡航/Treasure Cruise》
1《時を越えた探索/Dig Through Time》
1《思案/Ponder》
1《Time Walk》
1《活性の力/Force of Vigor》
1《紅蓮破/Pyroblast》
サイドボード
2《貪欲な罠/Ravenous Trap》
1《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage》
1《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
1《溜め込み屋のアウフ/Collector Ouphe》
2《外科的摘出/Surgical Extraction》
1《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》
1《マナ喰らいのハイドラ/Managorger Hydra》
1《夏の帳/Veil of Summer》
1《紅蓮破/Pyroblast》
2《活性の力/Force of Vigor》
1《夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render》
1《否定の力/Force of Negation》
デッキ概要
「墓荒らしはグッドスタッフのデッキです。打ち消し、除去、クリーチャー。それぞれ優秀なものを揃えています。
1対1交換を繰り返して相手が消耗したところを、《死儀礼のシャーマン》《タルモゴイフ》のような優秀なクリーチャーで倒しに行く、というコンセプトです。
相手を阻害するカードが非常に多く入っていて、
《溜め込み屋のアウフ》で各種のMOXやMUDのアーティファクトを止めに行ったり、
青が好きな日本人に良く効く《トレストの使者、レオヴォルド》、《覆いを割く者、ナーセット》や、
(それらを引く)ドローソースとして《ダク・フェイデン》が入っています」
――《トレストの使者、レオヴォルド》は1枚なんですね。
「はい。通常の青黒緑の墓荒らしには2~3枚入っているんですが、その枠が赤を入れる理由のひとつ、《レンと六番》になっています。
これ以外に赤を入れるメリットは《ダク・フェイデン》、そして《レンと六番》で使いまわせる《露天鉱床》《不毛の大地》です。
また、《レンと六番》は土地の使いまわし以外にも大マイナスを狙うことも可能です。対処する手段が限られているデッキが多いんですよね。そうすると《Time Walk》や《Ansestral Recall》を何度も使用できます」
――最近のカードが2枚入っていますね。
「《厚かましい借り手》と《王家の跡継ぎ》は人によって使うカードが別れる枠で、僕自身もお試し枠として使用しています。
《王家の跡継ぎ》の枠は、もともと《ダク・フェイデン》でした。
同型戦であったり、早く勝負を決めたい時に強化能力で押し切れるかなと思っての採用です。
忠誠度が高く堅いので、大マイナスまで届けばアドバンテージを取れる点に注目しました。《ダク・フェイデン》ではカードを引き増すことはできないので。
《厚かましい借り手》に一番期待していたのは、MUDやティンカーの《荒廃鋼の巨像》のバウンスでした。
他にも相手の大きなアクションをバウンスしてテンポをとることも期待していたんですが......今回はあまりできなくて、《意志の力》のコストになっていましたね(笑)
それから、《石とぐろの海蛇》に触れるようにしたかったという意図もあります。除去呪文の多くが多色なので。
実は《石とぐろの海蛇》を意識しているカードは他にもあって、《致命的な一押し》もそうです。あとはメイン・サイド合わせて3枚入った《活性の力》ですね」
――クリーチャーよりもインスタント・ソーサリーの強いヴィンテージだと、《厚かましい借り手》は少し相手を選ぶ印象がありますね。
「ヴィンテージ全体としては押し付けるほうが強いので、《厚かましい借り手》よりは基本的に《死儀礼のシャーマン》からの《トレストの使者、レオヴォルド》みたいな動きのほうが強いですね(笑)」
有利なデッキ
「同型、パラドックスストームに対しては有利だと考えています。
同型に対しては《紅蓮破》、それから《レンと六番》が優位な点です。
よく《不毛の大地》でつぶし合うようなことを同型戦ではやっていくんですけど、その上で《レンと六番》があればこちらが一方的に有利になりますからね。
もちろん《不毛の大地》で的確に色マナを潰されると不利になるんですが、順当にマナを使うことさえできればこちらが有利になる感じです。
パラドックスストームに対してはアーティファクト対策のカードがたくさん入っているので、その点で有利と判断しています」
不利なデッキ
「やはり初速でオールインしてくるようなコンボデッキです。《意志の力》を初手で撃てないことがあるからです。
青黒緑のデッキを組むと頻発するのですが、青いカードのカウントがギリギリなんですよね」
――21枚ですか
「その枠を確保する目的もあって、《王家の跡継ぎ》《厚かましい借り手》の枠はフリースロットではあるものの、青くないといけないんですよ。
さらに今は《活性の力》も入れているので、緑のカード枚数も確保しないといけないんですよね」
――先ほど仰られていたパラドックスストームは、最速のコンボデッキではないということですね。
「パラドックスストームはアーティファクトをばらまくのに初速を使うので、最速というほどではありません。特に早いのはDPS(《闇の誓願》を使うANT)で、このマッチアップが厳しいです。
1ターン目から3ターン目に殺しに来るデッキなので《意志の力》を頼りにしなければいけないのですが、先ほどお話ししたように初手で撃てないこともありますから。
あとは......ドレッジも苦手です。頑張れるけど、当たりたくはない(笑)
展開されたものをさばいてから勝つデッキなんで、受け返せれば勝てるんですけど、受け切れずに押しつぶされると負けちゃいます。
それからもう一個、MUDも同様です。
1ターン目に《Mishra's Workshop》から《三なる宝球》《抵抗の宝球》《アメジストのとげ》を出してくるにも拘わらず、こちらには対抗手段が《意志の力》しかありません。これらが場に出たままゲームをするとこちらだけ呪文が重くなり、《不毛の大地》で土地を割られるから受け返せない。そういう負けパターンです」
――受け切るための呪文を使えず、押しつぶされるわけですね。
「今日も、相手がダブマリの状況でそんなことが起こりました。
こっちの初手には《死儀礼のシャーマン》や《Mox Emerald》などがあって、ターンが返って来れば十分に動ける手札だったんですけど、いきなり《魔力の墓所》《Mishra's Workshop》って動かれて。
1ターン目にして、5マナから《抵抗の宝球》《アメジストのとげ》って置かれたので、動けないから土地置いてターンを終えましたよ。そしたらそれに《不毛の大地》が飛んできて。しかも《三なる宝球》まで出てきました(笑)」
――すごいゲームですね。
「カードパワーが高いので、勝つも負けるもダイナミックなのがヴィンテージの楽しいところです」
サイドボーディング
「サイドボードは、わかりやすく言うと、墓地対策、アーティファクト対策、コントロール対策に分かれています」
・墓地対策
《トーモッドの墓所》1枚
《外科的摘出》2枚
《貪欲な罠》2枚
《墓掘りの檻》1枚
《漁る軟泥》1枚
《夢を引き裂く者、アショク》1枚
――墓地対策は8枚も入れているんですね。
「ドレッジのような墓地を使う相手だと、1、2枚は必ず初手に欲しいです。そして、1枚や2枚をサイドインしてもそんなに引けないのが理由です。
相手はマリガンして必ず初動を確保してくるので、1ターン目と2ターン目にないと困るんですよ。しかも相手側にピッチスペルのカウンターもあるので、複数枚引けるように6~8枚は欲しいです。
《死儀礼のシャーマン》でも良いんですけど......ちょっと遅いです(笑)」
・アーティファクト対策
《活性の力》2枚
《溜め込み屋のアウフ》1枚
「パラドックスストームなどへの対策です。
また、(墓地対策枠でもある)《漁る軟泥》は、MUD相手には大きめのクリーチャーとしての役割も持ちます。(《活性の力》などで)相手のアーティファクトクリーチャーを破壊しつつ、《漁る軟泥》が育ってブロッカーになったりします」
・コントロール対策
《夏の帳》1枚
《紅蓮破》1枚
《否定の力》1枚
《マナ喰らいのハイドラ》1枚
「《マナ喰らいのハイドラ》は同型やコントロールに対して活躍するカードで、青いデッキに対しては有用です。
白が入っていないデッキ相手ならなかなか死にません。すぐに《稲妻》の射程圏外まで育ちます。《致命的な一押し》もあまり使われていませんしね」
競技ヴィンテージ6回連続TOP8入賞、そして2回優勝。その実力は疑いようもない。
ヴィンテージの強豪・藤平謹製の4色墓荒らし。ヴィンテージプレイの参考になれば幸いだ。
なお、新規にヴィンテージを始めたい人には、ぜひとも藤平の進めてくれたコミュニティの利用をおすすめしたい。
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