【マジックフェスト・京都2019】土曜ミシックチャンピオンシップ『バルセロナ』予選 決勝戦:柴田 健史 (東京都) vs. Chang Cheng Yu (台湾)
By Riku Imaizumi
スゥルタイミッドレンジが環境を席巻している。
今大会抜群の使用率。2割を超えるプレイヤーが選択し、トップ8の5割はこのデッキに埋められた。
《ハイドロイド混成体》をきっかけに、《人質取り》や各種のカウンターを獲得したこのデッキ、ミッドレンジのデッキタイプにふさわしいパワー・デッキと呼べるだろう。
柴田 健史はこれを片手に、決勝戦まで勝ち上がってきた。
序盤のプレッシャーはさほど強くないが、中後半戦において抜群の伸びを見せるミッドレンジ。
しかし、最も得意とする中後半戦において、それすら上回るデッキが古来から存在する。
青のカウンター、黒の除去、白のフィニッシャー。古くから続くコントロール・デッキの系譜は今も息づいている。
エスパーコントロールは根強い人気を誇り、今大会でも13人の使い手が集まった。Changもその一人。
ミシックチャンピオンシップへの出場権を求めて、集まったプレイヤーは175人。
わずか一枚の切符は、その頂点に握られるのを待っている。
ゲーム1
オープニングハンドを見る二人の目に力が入る。
最後の1戦。全力を尽くして勝ちに臨む姿勢がビリビリと伝わってきた。
スイスラウンドの順位で上をいくChang。先手、7枚でキープを宣言。
柴田はマリガン、ゆっくりと考えたうえで―― 一気に手札を4枚まで減らした。
言うまでもないことだが、マルチマリガンのリスクは軽視できるものではない。その判断はリスクとリターンの計測によるものだが、それは見た目よりもはるかに難しい。
相手のデッキへの理解度、自分のゲームプランの理解度。いくつかの要素によって"正しい"マリガンの判断を下せることは、一朝一夕でできることではない。一見無難そう7枚手より、厳選した4枚のほうが本当の意味で強いことなど往々にしてある。
ミシックチャンピオンシップ予選、ここまで勝ち上がってきた柴田の眼に狂いはないだろう。
占術は上。カード一枚が重要になったこの戦い、あらゆる判断が勝敗をわけることになりそうだ。
Changの初動は《湿った墓》。
柴田は《草むした墓》から《ラノワールのエルフ》。いつもならば最高のスタートのはずが、柴田の手札はすでに3枚だ。
そんな柴田に突き刺さる、Changの《思考消去》。公開された手札は《ハイドロイド混成体》、《繁殖池》、《人質取り》。《ハイドロイド混成体》は出番を失った。
3ターン目に動きのない柴田の手をさらに減らすべく、《ラノワールのエルフ》には《喪心》。徹底してカードカウントを奪っていく算段だ。
しかしChangこのターンに土地を置くことができなかった。
後半戦に力を発揮するコントロールにおいて致命的なマナスクリュー。柴田のデッキはこのチャンスを見逃さなかった。
《草生した墓》にライフを提供。4マナを揃えた柴田は《ハイドロイド混成体》X=2。
これには《屈辱》が飛ばされるが、マリガンで失ったカードカウントを取り戻す堅実な第一歩だ。
まだ土地が置けないChangに、柴田は攻勢を崩さない。《人質取り》を追加する。
これにリアクションを求められたChang、柴田の手札枚数を確認し、《吸収》で耐え忍ぶ。土地が3枚しか並んでいないエスパーコントロールにとって、今現在は"序盤"と言える。
一方の柴田は5枚の土地を並べているが、手札は1枚しかない。
土地以外に盤面に置かれているものはなく、勝負はまだまだこれからだ、というところ。
Changは待望の4枚目、柴田は6枚目の土地をおいてターンを投げ合う。
《思考消去》を撃ち、《水没した地下墓地》が残っていることを確認すると、Changは5枚目の土地を置く。《吸収》や《屈辱》が見え隠れする構え、エスパーコントロールが重い腰を上げ始めた。
一方、柴田は《クロールの銛撃ち》を引いて攻めの体勢に。
6枚目の土地を引いたChangに、ついに《クロールの銛撃ち》がダメージを与え始めた。
7枚目まで土地は伸びない。Changはドローだけでターンを終えた。
この状況、土地を置かなかったということは引かなかったということに等しく、代わりに呪文を引いたということになる。
だが、《クロールの銛撃ち》が止まらない。2回目の攻撃だ。
柴田は《ラノワールのエルフ》を追加する。このまま攻めきれるだろうか。
と、Changは待ち構えていたように《肉儀場の叫び》。《クロールの銛撃ち》も《エルフ》も巻き込まれてしまい、柴田の攻勢が止まった。
しかし、それは1ターンだけのことだった。《マーフォークの枝渡り》を出すと、"探検"能力で《ビビアン・リード》を公開するパワフルプレイ。
Changは仕方ないかとばかりに2枚目の《肉儀場の叫び》、続けてプレイされた《ビビアン・リード》には《否認》を刺す。
その次のターン、Changの場に《ドミナリアの英雄、テフェリー》が登場。ゲームを終わりに向かわせる"ヒーロー"となり得るか。
一方の柴田も2枚目の《ビビアン・リード》をプレイ! 能力で《翡翠光のレインジャー》を手に入れると、そのまま呼び出した。"探検"で《湿った墓》を入手しつつ2枚目の《翡翠光のレインジャー》をめくると、じっくりと考えたうえで、デッキトップにキープした。
いつしか土地9枚に加えて《ビビアン・リード》と《翡翠光のレインジャー》という脅威十分な盤面になった柴田。これが3枚のハンデを背負った選手の戦場というのだから驚きだ。
しかしChangの手札は色濃い。《ドミナリアの英雄、テフェリー》のマイナス能力で《翡翠光のレインジャー》をどかすと、《最古再誕》。《ビビアン・リード》の命は短かった。
段々とシーソーゲームの様相を呈し始めていた。
柴田は《翡翠光のレインジャー》を呼び出し、もはや不要な《野茂み歩き》を弾く。
Changの手札は大量の手札を《薬術師の眼識》でさらに補充すると、《ケイヤの怒り》。
アタッカーを失った柴田は《人質取り》を補充。少々頼りないが、クロックであることに変わりはない。頼りなかろうが、今は必要だった。
ここで《最古再誕》の最終章が解決に入り、Changは《ビビアン・リード》を呼び出す。エスパーコントロールにおいてはほとんどクリーチャーをもたらさないものの、土地を安定して供給する。
Changは二枚目の《薬術師の眼識》。まだ足りないとばかりにそのまま再活。さらに《アズカンタの探索》。ここまで大ぶりなアクションを見る限り、完全にゲームを決める気でいた。
《人質取り》がひとりぼっちの盤面、柴田はアタック......に合わせて《渇望の時》が飛んでくる。死亡することもないが、プレインズウォーカーへのダメージもない。
しかし、柴田の狙いはそこにはなかった。《採取》から《ハイドロイド混成体》を2枚回収!!
これほどの行動回数を採ったChangにカウンター用のマナは残されていなかった。Changのタップアウトを狙っていたように見事なタイミング、そのままX=4で戦場へ送り出す。土地を置き、《マーフォークの枝渡り》。マナを使い切り、先行するChangに追いつくべく全力をつくす。
残った《ハイドロイド》を《思考消去》で落とすと、それぞれのプレインズウォーカーの能力を使った。テフェリーでドロー。ビビアンでプラス。
このアップキープ、早くも《アズカンタの探索》は変身していた。《ケイヤの怒り》にたどり着かれる前に、ハイドラたちで十分なダメージを与えられれば......という柴田の願いは届かないまま、《ケイヤの怒り》が放たれる。続けて《ウルザの後継、カーン》、マイナス能力で構築物を生成。取り返しては取られるイニシアチブ、しかしChangに手放す気は微塵も感じられなかった。
手札のない柴田、ここでは11枚目の土地を引くだけにとどまる。
Changは《アズカンタの探索》で《吸収》を手札に加え、柴田の行動を抑えにいく。柴田は表情を崩さないが、その心の内で細い勝機を見つけようとしているのだろう。
続くターン、Changは《ウルザの後継、カーン》で構築物を追加した。有効牌を引かれる前に殴り切ることができるか。柴田がゲームを諦めない以上、Changの手が緩むことはない。ターンを終了する。
柴田は引いた。考えた。プレイした。
《ハイドロイド混成体》X=8!
そのまま解決され、柴田に4枚の手札がもたらされる。
土地を置き、2マナ構えた状態でChangへターンを返す。ターン終了時、《水没遺跡、アズカンタ》で《喪心》を入手したChangはそれを使ってハイドラを除去する。
パワーカードと名高い《ハイドロイド混成体》。
しかし、少しばかり遅かった。Changはすでに柴田を仕留める算段を終えていた。
ターンに入ると《ビビアン・リード》のマイナス8能力で構築物たちを強化した。さらに、《ドミナリアの英雄、テフェリー》のマイナス2能力で自分の《ウルザの後継、カーン》をデッキに戻すと、《水没遺跡、アズカンタ》でもう一度手札に呼び込んだ。受け身のはずのエスパーコントロール、そんなプレイもあったのか。
超短期間のリフレッシュ休暇を終えた《ウルザの後継、カーン》は3体目の構築物を呼びだし、もはや柴田に押し返す術はないという判断を強制した。
柴田 0-1 Chang
ゲーム2
大量のマリガンに見舞われた柴田だが、あくまでそれは彼の判断だ。
事実、彼が手札を見て一瞬でマリガンを判断したときはなかった。土地がなかったり、オールランドの手札であれば、マリガンを迷う余地はなかっただろう。そう考えると、さきほどの4回のマリガンは全てスゥルタイのゲームプランを遂行することができなかっただけの手札だったと推測される。
事実、彼は3枚落ちながらもChangと見事なゲームを繰り広げた。
デッキが最適化されるゲーム2。万全の状態でその判断力を見せてほしい。
サイドボード中、負けたにもかかわらずChangに積極的に話しかける柴田。
Changも思わず笑みがこぼれる。両者、使い慣れた言語の共有はしていないが、マジックを通じてコミュニケーションをとっている。
注目するべきは、ミシックチャンピオンシップという大舞台のかかった試合で、一本目を不運で落とした柴田からこのコミュニケーションが始まったということだ。
理不尽な負けでも気分を落とさないこのメンタル、あらゆるマジックプレイヤーの模範となるような素晴らしい姿勢である。
柴田は今回7枚でキープ。さあ、ゲームを取り返すことができるだろうか。
今度はChangが判断を迫られる番だ。ゆっくり、ゆっくりと考える。キープを宣言。
ゲームは1ターン目から、柴田の《強迫》で幕を開ける。Changの手札がオープン。
《薬術師の眼識》
《ヴラスカの侮辱》×2
《正気泥棒》
《人質取り》
《神聖なる泉》
《水没した地下墓地》
《ヴラスカの侮辱》を狙った柴田。一方のChangは同様のカードがまだ一枚あるため、ゲームプランの変更はないだろう。願わくば速やかに《正気泥棒》でマッチを奪ってしまいたい。
柴田の2ターン目は《湿った墓》。
Changも《強迫》で見せていない《湿った墓》を置いた。相手への情報を絞るよりライフをとった。
3ターン目、柴田は《翡翠光のレインジャー》で《ハイドロイド混成体》をめくる。当然デッキトップにキープだ。3/2の《翡翠光のレインジャー》がChangへ対処を迫る。
一方のChangは《翡翠光のレインジャー》には目もくれず《正気泥棒》。殴り合いをするならば、情報よりもライフが欲しいわけだ。
《翡翠光のレインジャー》で攻撃した柴田は、《クロールの銛撃ち》で《正気泥棒》に対処する。《強迫》を使った時点で決めていたような動きと見える。
このまま3/2で殴り切ることができれば良いが、そう甘くはない。
4マナを揃えたChang。見えている手札から《人質取り》を出すかと思いきや、見せていない手札から《ウルザの後継、カーン》。そのままプラス能力で《アズカンタの探索》《湿った墓》をめくった。
少しばかり予想の外れた柴田、しかしここは冷静に考える。
柴田にとって情報のない手札は1枚。《水没遺跡、アズカンタ》のアドバンテージは恐ろしいが、しかしその1枚が土地でないならば?
柴田の結論は《アズカンタの探索》の進呈だ。
《カーン》を見据える《翡翠光のレインジャー》。一息入れてから、プレインズウォーカーにダメージを加える。
《繁殖池》をおいてターンを返す柴田。追加のプレッシャーを持たないのか、それともChangにカードを使わせたいのか。いずれにせよ、《ヴラスカの侮辱》を撃つのであれば格好の状況だ。
そんな柴田の目論見を見透かすように、Changは《思考消去》を。《湿った墓》、《草むした墓》、《軽蔑的な一撃》、《ハイドロイド混成体》が公開され、柴田は苦笑い。クラゲは生れる前に死んでしまった。
適当に《人質取り》を唱えようものならば《軽蔑的な一撃》でかわして《ハイドロイド混成体》に繋げたかった柴田、残念ながらプランは崩壊した。
しかし、柴田の判断も正しかった。
諜報の判断に時間をかけてキープの結論を下すと、《カーン》のマイナス能力で先ほどの《湿った墓》を入手するChang。やはり土地は不足していた。
そして、見えていなかった最後の一枚、《屈辱》を《翡翠光のレインジャー》に撃ち込む。
お互いにお互いの手札の情報を持ちながら、盤面はイーブン。ゲームはここからだ。
ここで柴田のトップデッキが光った。
今度の苦笑いはChangから漏れた。最高のタイミングと言える。
対処手段を持たないChang、自分のデッキにそれを求めるしかない。
《ウルザの後継、カーン》のプラス能力で《島》を手札に。
《アズカンタ》をプレイするとターンを終えた。墓地の枚数は5枚。しかし《薬術師の眼識》が手札にあるため、その気になれば次のターンに変身可能だ。
柴田に見えていないのは今引いた一枚のみだ。アズカンタがプレイされる。墓地はまだ5枚。しかし、4マナ残っているので《薬術師の眼識》を使って変身できそうだ。《最古再誕》や《ケイヤの怒り》を探しに行けるか。
柴田のデッキトップは再び《翡翠光のレインジャー》。森をオープンし、手札に加える。
お互いオープンハンドのインファイト。《暴君》が《カーン》を退場させる。
《カーン》が食い殺されているうちに、とChangは《薬術師の眼識》でドローを進める。続くターン、《アズカンタの探索》は《予知覚》を捨てながら変身した。《水没遺跡、アズカンタ》だ。Changはセットランドも合わせて8枚の土地を並べている。
ここにきて出番を得た《人質取り》。《翡翠光のレインジャー》を奪おうとする。
いかにもカウンターをつり出そうとするプレイだが、柴田は真っ向からぶつかった。《軽蔑的な一撃》だ。
当然、Changにも二の矢があった。二枚目の《人質取り》だ。
《翡翠光のレインジャー》を持っていかれた柴田はすかさず《殺戮の暴君》で攻撃。さらにフルタップの隙に、《ビビアン・リード》を戦列に加えた。
ブロッカーのいないこの局面、思わず《人質取り》で戦闘に行きたくなるが、代償に《殺戮の暴君》に噛み殺される覚悟はないだろう。
《ビビアン・リード》の能力で《クロールの銛打ち》を手札に加えた柴田。《黎明をもたらす者ライラ》は、《正気泥棒》は。Changへの貴重な対処札の一枚だが、柴田の判断は《クロール》も戦列に加える、だ。森を置いた柴田の手札は尽きた。さあ、あとは殴るだけ。
Changは4/3となった《翡翠光のレインジャー》で盤面を強化。不要な《思考消去》を弾くと、その下には《ドミナリアの英雄、テフェリー》が。難しいところだが、デッキトップにキープ。1ターン目から公開されていた《ヴラスカの侮辱》が《ビビアン・リード》に放たれると、Changの手札に公開情報はなくなった。
以外にもあっさりと《殺戮の暴君》は《人質取り》《レインジャー》と相打った。しかし、柴田は《愚蒙の記念像》を置く。まだまだ恐竜の脅威は去っていない。
しかし、Changは《ドミナリアの英雄、テフェリー》をプレイして《クロール》をデッキに戻すと、《正気泥棒》で攻めに行く姿勢を見せた。わずかに見せた柴田の隙に、このままChangが主導権を取り戻すか。
柴田のデッキトップ《強迫》で再びオープンされた2枚の手札は《ケイヤの怒り》《ドミナリアの英雄、テフェリー》。《ケイヤの怒り》を選択。
攻め手を出せない柴田に対し、ついに《水没遺跡、アズカンタ》が動き出す。エンドフェイズにまずは《喪心》が手札に加わった。
正気泥棒でアタック。《クロールの銛打ち》を奪い取り、そのままプレイした。これで一気にカードカウントが2枚も増えた計算になる。ゲームの流れは徐々にChangが掴み始めていた。
柴田は《愚蒙の記念像》で《殺戮の暴君》を回収し、キャスト。頼みの綱の恐竜は......Changの手札に《水没遺跡、アズカンタ》の能力で《ケイヤの怒り》が加わり、生れた瞬間に余命宣告をもらうことになった。
《正気泥棒》でアタック、カードを奪うと、第2メインで《ケイヤの怒り》。盤面、残るは《ドミナリアの英雄、テフェリー》のみ。その上、Changの手札にはもう一枚の《テフェリー》が控えている。
さらに《水没遺跡、アズカンタ》を起動すると《吸収》が手札に加わった。
行動に先手を撃たれた柴田。手札2枚から《草むした墓》をプレイすると、残りは1枚に。
《ドミナリアの英雄、テフェリー》に《水没遺跡、アズカンタ》、おまけに《吸収》。もはや盤石に見えるこの場に、奪い取った《ハイドロイド混成体》がX=6で追加される。当然カウンターのためのマナを残した状態で。
それでも柴田はあきらめない。Changの《ハイドロイド混成体》が戦闘にする。さらに《水没遺跡、アズカンタ》を起動すると2枚目の《吸収》が手札に入った。
まだだ。柴田は解決の糸口を探す。目を細め、両手を頭にやり、クロックを計算。
最後の望みを託して唱えた。《ハイドロイド混成体》X=8!
Changの《ハイドロイド混成体》を超えるサイズだが、これは《喪心》で対処される。見えていたカードのため両者淡々と処理をする。
さらに《水没遺跡、アズカンタ》を起動すると、《思考消去》を手札に加えた。
柴田の望みを打ち砕くようだ。
このハンド・デストラクションで公開されたのは、《マーフォークの枝渡り》2枚、《喪心》、土地。
もはや小粒な"探検"クリーチャーなどどうでも良い。《喪心》を落として《ハイドロイド混成体》でアタックすると、柴田のライフは4になった。
ターンに入った柴田、ドローし、ゆっくりと盤面を見た。
そして。
再びの《ハイドロイド混成体》。
先ほどを上回る、X=10の化け物が誕生した。
しかし、リソースで大幅に勝るChangは慌てずに《水没遺跡、アズカンタ》を起動、またしても《思考消去》だ。それにより公開されたのは《ヴラスカの侮辱》、《喪心》、《喪心》、《殺戮の暴君》、《湿った墓》、《マーフォークの枝渡り》2枚。どう落としても除去が残る手札だが、それ以上にChangは《吸収》を2枚も持ったままだ。
ラストターン。柴田はデッキに手をかけた。
ドローすると、そのまま右手を差し出した。
柴田 0-2 Chang
こうして、ミシックチャンピオンシップの参加権を得たプレイヤーが決定した。
全ての人が参加できるわけではない舞台。そこまでの道のりは各自で異なるものだろう。
Changは台湾のプレイヤーだが、競技マジックを始めて2年になる。ミシックチャンピオンシップでもその実力を知らしめることになるだろう。「Youtubeで見た舞台に上がって勝ちたい」と言う。
今度は、彼が舞台に上がる番だ。バルセロナの地でその勇姿を思う存分見せてほしい。
一方の柴田は、高校の頃にマジックを始め、休止期間を挟んで"ゼンディカー"で復帰している。
優勝こそ叶わなかったものの、今大会、3枚のハンデを背負いながらChangに追いすがる、見事な実力を発揮した。
現在はグランプリに精力的に参加してくれているようで、今後も各地でその姿を見せてれるだろう。
自分を下した相手に「Congratulations」と声をかける、清々しいスポーツマンシップとともに。
マジックフェスト・京都2019 サイドイベントカバレージページ