By Riku Imaizumi
マジックの祭典、マジックフェストが千葉で開かれている。
メインイベントはグランプリ本戦だが、お祭りというからにはその他のイベントも充実していなければいけないだろう。司会は盛り上げMCでお馴染みの岩Showが勤め、今回もステージでギャラリーを沸かせてくれている。
そんなマジックフェストの一日目、ステージイベントのゲストは行弘 賢選手だ。
MPL(マジック・プロ・リーグ)の一員として活躍するかたわら、積極的に配信も行っている。「マジックはアリーナから始めた」という人でも、もしかしたら知っている人はいるのではないだろうか。
タイムアタック
11時より開始、本日最初のイベントはマジック・アリーナを用いたタイムアタックだ。
これはギャラリー参加型のイベントで、あらかじめ用意されたデッキを使ってBO1(一本先取)のランク戦を行ってもらい、そのタイムを競うというもの。
タイムには対戦相手のプレイ時間も含むので、必ずしも自分のプレイが早くとも記録の更新ができない場合がある点がポイントだ。今回はランク戦なので、オンラインのプレイヤーとランダムにマッチする。なるべく早くプレイする人と当たることを祈るしかない。
なんとこのイベント、プレイヤーは参加するだけでアリーナで使用できる専用コード(基本セット2020が3パックもらえるもの)を入手可能!
そしてタイムを更新した人にはリアルの基本セット2020を1パックプレゼント。可能ならば参加しない理由が少ないこのイベント、もちろんギャラリーはたくさん集まった。
司会の岩Showが集まった観戦者に声をかける。
岩Show「まずはけんちゃん(行弘選手)にやってもらいましょう!」
OKです、と元気よく返事した行弘選手。さあ、マジック・フェストのイベントスタードだ。
一秒でも早く! と言いながらオートパスをクリックする行弘選手。日ごろ使っているものと違うので、マウスが手になじまないようだ。
落ち着いて落ち着いて、と岩Showがなだめる。
赤単で白黒のライフゲインデッキを下した行弘選手。そのタイムは......?
岩Show「2分48秒です! これは早いのかな?」
行弘選手「全く早くない(笑)」
というわけで、最初の記録は2分48秒からスタート。果たしてチャレンジャーはこの記録を破れるのだろうか。
一人目の挑戦者は赤単を選択。早いデッキの代名詞だ。
相手はシミック(青緑)。《楽園のドルイド》のようなマナ・クリーチャーを焼き払い有利に進め、「これはいけるか!?」という期待を寄せられるも......相手のプレイがなんとも遅い!
わずか3ターン目ですでに2分が経過。このままではまずいと《稲妻の一撃》をプレイヤーに投げ込み、一気に勝負を決めに行く!
......が、終わってみれば、タイムは4分超えで更新ならず。
もちろん勝ったものの、やはり実力だけでは記録更新は難しい。
二人目の挑戦者も赤単を選択。
相手はディミーア(青黒)。コントロール・デッキ相手は長引きやすく、3ターンを迎えても相手のライフは20点を割らなかったほどだ。
しかし、《チャンドラの吐火》のパワーを7点にして猛追し、しっかりと勝利!
それでも結果は3分25秒。記録更新ならず。
行弘選手いわく「早くない」2分48秒。実はそんなことはなかったのではないかとギャラリーは思い始める。
しかし、三人目のチャレンジはなんと2分1秒で決着となった。
もちろん使用デッキは赤単だ。
対戦相手は《静寂の神殿》《断崖の避難所》とレアの土地を展開。ブロンズ ティアー4のランクのため、このようにレアが多いデッキと当たるのは珍しい。
展開したクリーチャーを《轟音のクラリオン》《炎の一層》で対処され、《豊潤の声、シャライ》が出てくると......。
もはや赤単に打つ手なし。2分1秒で決着となったのだった。
勝利ではないので、残念ながら記録更新はなしだ。
このあとも六人目までの挑戦者が現れるが、残念ながら一人も更新者は現れなかった。
MPLプレイヤーの実力は遠いようだ。ぜひ参加して、この記録を打ち破って欲しい。
行弘プロのスペルスリンガー
本日二回目のイベントは、行弘選手と直接アリーナで対戦できるスペルスリンガー。
もちろん誰でも参加可能。岩Showいわく、「勝っても負けてもプロと遊ぶのを楽しんでいってほしい」とのことだ。
一人目は仕事中にアリーナをプレイしているというマジック歴10年弱の男性。ボードゲームを作る会社に勤めており、仕事の一種のようだ。
行弘選手は複数のチャンドラをフィーチャーしたチャンドラ・フレンズという青赤のデッキを選択。
挑戦者はティムール(青赤緑)エレメンタルだ。
シミック(青緑)カラーを土地から読み取るなり、いきなり《稲妻の一撃》をプレイヤーへ投げ込む行弘選手。
続けて《踏み鳴らされる地》から《乱道の座、オムナス》をプレイされるも、《稲妻の一撃》や《炎の司祭、チャンドラ》で更地にしていく!
岩Show「けんちゃんプレイが本気なんじゃない?(笑)」
行弘選手「よろしく!」
などなど、軽快な司会でゲームが進む。
と、《覆いを割くもの、ナーセット》の-2能力で《栄光の終焉》を見た瞬間、行弘選手の手が止まった。
行弘選手「ぼく気づいたんですけど」
岩Show「ん?」
行弘選手「このデッキ、ソーサリー入ってないんですよ」
どっ、とギャラリーが沸いた。
というようなハプニングもありながら、このゲームでは挑戦者が勝利を納めたのだった。
岩Show「一人目から勝ってくれると良いですね! 意外と勝てるんやな、みたいに思えるし。ソーサリー入れてないし」
行弘選手は他にもたくさんの人とプレイし、ほのぼのとしたゲームを見せてくれた。
中にはファンだと言い、握手を求めた人も。
行弘プロのドラフトピック講座
こちらのイベントでは、プロプレイヤーの行弘選手が実際に基本セット2020のドラフトをプレイするところを見せてくれる。もちろんピックから全てだ。
質問があれば、岩Showが拾って行弘選手が答えてくれる。プロのプレイを間近で見られるこのイベントには、やはりたくさんのプレイヤーが集まった。
1パック目の一手目は以下の通りだった。
《不屈の巡礼者、ゴロス》
《ヤロクの波壊し》
《グレイブディガー》
《報復のワンド》
《急報》
《不動の哨兵》
《送還》
《アンデッドの召使い》
《不浄な証約》
《群れる猛犬》
《溶岩族の喧嘩屋》
《狂気の一咬み/Rabid Bite》
《枝葉族のドルイド》
《龍火の薬瓶》
《花咲く砂地》
行弘選手「《不屈の巡礼者、ゴロス》《グレイブティガー》《ヤロクの波壊し》など、初手で取っても良いカードが複数ありますね。
普通のドラフトでは、下家(自分のあとにこのパックを受ける人のこと)が何をピックするかを考えます。
例えば、《不屈の巡礼者、ゴロス》をピックしたら《ヤロクの波壊し》をとるかな、のように。
また、このパックが一周した時、自分のところに何が帰ってくるかも考えます。基本的に上から順に強いカードがピックされていくので、この場合は《送還》や《群れる猛犬》とかかな」
と、言いつつ《不屈の巡礼者、ゴロス》をピックする行弘選手。
二手目のカードを目にしたとたん、「あー!」と声をあげる。
行弘選手「これは満面の笑みですよ。カードも笑ってるし」
と、《新米紅蓮術士、チャンドラ》をピックする。一手目のパックが返ってきたとき、赤いカードをとれそうなことも《新米紅蓮術士、チャンドラ》をとる理由を後押ししている。
三手目は白に強いカードが多いパックだ。
行弘選手「白の強いカードは良いんですが、赤と組み合わせることになるのが問題です。
この環境では回避能力(飛行のようなブロックされにくくなる能力)を持ちにくいデッキはやりたくないですね。
三手目としては少し弱めですが、《霜のオオヤマネコ》をピックします。エレメンタルシナジーも期待してね。」
四手目は一転して白の薄いパックとなる。
行弘選手「白、上がやってくれていたら嬉しいですね。
《丸焼き》がありますが、これは良いサイドカードなのでとっておいても良いと思います。手堅くいくなら《焦がし吐き》《ケルドの略奪者》、あるいは《金縛り》というところです」
と言いつつ、行弘選手は色を固めたくないという理由で《ケルドの略奪者》を選んだ。
五手目では《チャンドラの火炎猫》《霜のオオヤマネコ》との比較で、単体の強さを評価して後者を選び、
六手目では軽いカードがないことを理由に《フェアリーの悪党》をピックした。「早めにとっておくと点数も上がります」とのことだ。
7パック目も順調にピックを進める。
一周した1パック目では、なんと《溶岩族の喧嘩屋》と《群れる猛犬》のどちらもが返ってくる。ただし、《送還》はとられていた。
強力なエレメンタルシナジーを持つ《溶岩族の喧嘩屋》を取りたいところだったが、2マナ以下が少ないため《群れる猛犬》を優先した。
以降、《心臓貫きの弓》や《炎の精霊》を取り、1パック目は終了。
2パック目の一手目は《北方の精霊》。飛行を持つ強力なクリーチャーでありながら、エレメンタルシナジーも期待できる優れものだ。
二手目では《心臓貫きの弓心臓貫きの弓》を強く使える《名高い武器職人》。
三手目では白が強いパックが流れてくるも、ここで白に参入しても弱いと《灰と化す》。
その他、青赤というデッキ特性から、《短剣帆の飛空士》《送還》などをピックする。
行弘選手「やっぱり飛行がものをいうかな。青赤なら《送還》も強い。(九手目以降はあまり強いカードがなかったため)下家と色が被っているかも」
3パック目に入った行弘選手、一手目を見た瞬間「なんもない!(笑)」と一言。
青赤のカードがほとんどない。「リアルなら《夜の騎兵》でもとっとくんですけどね」と、仕方なく《反逆の行動》を選んだ。
二手目ではスペル(インスタントやソーサリー)が少ないので、《チャンドラの火炎猫》に優先して《放たれた怒り》を。
三手目では《小走り犬》を選んだ。
行弘選手「《小走り犬》は強いです。5マナ域が多いときのマナ・クリーチャーとしてはもちろん、色対策カード(《丸焼き》のような特定の色にクリティカルに効くもの)をかわすことができるんです」
四手目は《名高い武器職人》と噛みあう《龍火の薬瓶》を。
五手目では《大都市のスプライト》とデッキを完成させていく。
やはりスペルが少ないことが気になり、「《心臓貫きの弓》デッキにしちゃうのもありかな」とコメント。
また、相手のクリーチャーを《小走り犬》で白にすることで《解き放たれた狂戦士》のプロテクションを利用する戦法も起用し、デッキを作り上げた。
岩Show「点数はどのくらい?」
行弘選手「......55点くらい(笑)」
岩Show「赤点ではない、っていうところかな」
行弘選手「スペルが少ないので《心臓貫きの弓》を2枚も入れた分、それが効かないデッキに弱くなってしまった。相性差が出ちゃうデッキになってますね。
《ショック》や《チャンドラの憤慨》みたいなカードがあるともっと点数が上がります。
あと、《不屈の巡礼者、ゴロス》と《プリズマイト》が揃うと、2色のデッキでも能力を使える可能性があるので覚えておくと良いですね。長期戦を挑んでくるデッキに対してサイドボードから入れるのもありかな」
と、本人曰く「55点」のデッキでいざゲームに挑むと、なんと《プリズマイト》の群れを呼び出す白単に遭遇!
事前に話していた「相性差」で圧勝......と思いきや、お互いにライフが肉薄するインファイトに。
《解き放たれた狂戦士》を《放たれた怒り》で強化した行弘選手が辛くも勝利を納めるも、「危なかった」と一言漏れました。
岩Show「これ、島、山、島、島、島、島、山と、やたら島を優先して置いてるの意味あるん?」
行弘さん「とくにないっす(笑)」
MPLプレイヤー、行弘 賢選手を交えてほがらかに、しかし有意義に進んだステージイベント。
明日 土曜日のステージイベントでは、行弘さんさんに加えて女流棋士・香川 愛生さんも登壇してくれる。
まだまだお祭りの盛り上がりはこれからだ。
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