はじめに
お久しぶりです!BIGsの簗瀬 要です。
紙のMTGが恋しい今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
僕は東京在住なので、緊急事態宣言の中、悶々とテレワーク&MTGアリーナの生活を送っております。
さて、今回はそんな中行われた日本選手権2021 season2のレポートになります。デッキの選択の過程や大会中の出来事について書いていきたいと思いますので、よろしければ最後までお付き合いください。
それでは行ってみましょう!
日本選手権の三週間前
日本選手権の三週間前、実はとても困っていました。
というのも、日本選手権の開催時期が『フォーゴトン・レルム探訪』のMTGアリーナリリースから約2週間後、且つ日本選手権までスタンダードの大きな大会はほとんどないという状況だったので、デッキの情報が全く無いからです。いつもなら直前ニ週間の大会結果を参考にするのですが、今回はこの方法が全く使えません。
とりあえず、『フォーゴトン・レルム探訪』がリリースされた後にランクマッチをやってみたのですが、「このデッキが強い!」といった手ごたえがありません。というのも、新セットリリース後といえば自分も含めみんな新しいデッキを作ったり、既存のデッキに新しいカードを入れて試したりする時期です。そのため、必ずしも強いデッキにあたるわけでもなく、自分のデッキが本当にいいデッキかを判断するのが非常に難しいのです。
環境初期にランクマッチで使用したグルールアドベンチャー。
前環境のデッキに新ミシュラランドを入れただけで《レンジャー・クラス》が入っていませんでした。
日本選手権の一週間前
「一人でやってもよくわからない」
そんな状況を打開すべく、一緒に日本選手権に出る友人に声をかけることにしました。それが、今回一緒に調整したBIGs斉田君と中道君です。
BIGs猫派の二人。草の根大会のPWCに参加していたときからの友人です。
日本選手権一週間前の土曜日、Discord上で三人で集まりとりあえず話してみたところ、出てくる話は僕が思っていた事と大体同じでした。
・情報がない!
・スゥルタイ根本原理は何をメタればいいか?
・前環境後期はサイクリングが強かったが、今環境も強いのか?
三人集まれば何かいい考えでも出るかと思いきや、特に何も出ず...
このまま何もせずに終わっても仕方ないので、とりあえず新しいデッキは何かないかという話になった時に、斉田君が面白いデッキがあると言って出してきました。それがこれ↓
1ターン目、《よろめく怪異》⇒2ターン目、《よろめく怪異》を生け贄にして《命取りの論争》で宝物2個⇒3ターン目、5マナから《黄金架のドラゴン》でアタック!宝物を大量に生け贄にして《フェイに呪われた王、コルヴォルド》で大量ドロー!というのが売り文句の4色宝物ドラゴンです。
なんだか怪しい、本当にそう都合よく行くのかと半信半疑で回してみたところ、これが都合よくいってしまったのです。3ターン目に走る《黄金架のドラゴン》!ガンガンカードが引ける《フェイに呪われた王、コルヴォルド》!使ってみるととても楽しい!これはいけるのでは?
その後、スゥルタイ根本原理に速度が足りないからカウンターを足そうとか、サイクリングの1/1飛行トークンが突破できないから《悪意に満ちた者、ケアヴェク》を入れよう等いろいろな意見が出て、とりあえずこのデッキを調整するという方針でその日は終了しました。
日本選手権の6日前
「自分たちは最強のデッキを作ってしまった」
そんな気持ちでした。
自分たちが作ったオリジナルデッキで大会を優勝したいと夢見るのはカードゲーマーの性。
「3人ともTOP8に残り、決勝はミラーマッチ!」
カードゲーマーであれば1度はそんなことを夢見たことがあるかもしれません。
しかし、その夢は一瞬で覚めることになります。翌日ランクマッチで回してみると、デッキが全然回らないのです...
昨日はあんなに良く回っていたのに、なぜこんなにも回らないのか?理由は2つ。
1つ目は《オーブ・オヴ・ドラゴンカインド》が弱いこと。ドラゴンにしか使えないマナを生み出すこのカードを2ターン目に出しても、次のターンにそのマナを使えるのは《ガラゼス・プリズマリ》しかなく、2ターン目に出した割には恩恵が少ない。そのため、出したターンと次のターンがパスになることも多く、その隙にアグロに押し込まれることが多く、それが負けに直結していました。
2つ目は結局のところ重いクリーチャーを出すだけのデッキであったということ。このデッキに自身のクリーチャーを守る手段は入っておらず、せっかく宝物を使ってドラゴンを出してもそれが簡単に除去されてしまうと途端に勝つのが難しくなります。
現在のスタンダードに強いクリーチャーを倒す手段はたくさんあります。
ということで、このデッキはあっという間に没になりました。
しかしながら、どうしても《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を使うことを諦められない男が一人...
宝物でマナブーストするのがダメならサクリファイスの中に《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を入れて運用しようと中道君が言い出し、出来上がったデッキがこれ↓
《よろめく怪異》が4枚に加え、《初子さらい》と《アクロス戦争》がメインとサイドに合わせて4枚ずつ入ったジャンドサクリファイス。アグロには滅法強く、中道君曰くランクマッチでは対アグロに全勝したとのこと。ただ、アグロ以外のデッキにはあまり勝率が上がらず、天敵のスゥルタイ根本原理には《乱動する渦》4枚《スカイクレイブの影》4枚をサイドから投入しても勝てないということで、このデッキも没になってしまいました。
日本選手権の5日前
ちょうどジャンドサクリファイスの調整をしている頃に、Magic Onlineのスタンダードチャレンジの結果が出てきました。結果を見ると、スゥルタイ根本原理が大勝し、緑単アグロの優勝。この結果を受けてなのか、この頃から緑単が強いのではないかという意見がTwitter上で散見されるようになりました。自分でも回してみたところ、その強さに驚いたのを覚えています。我々三人もこの頃から優勝した緑単アグロと大勝したスゥルタイ根本原理は日本選手権の使用者数の上位に来るだろうと予想し始めました。
ミシックランク1位の常連Rumtiさんが使っていた緑単アグロ。
《レンジャー・クラス》と《群れ率いの人狼》を得てかなりパワーアップしました。
日本選手権の4日前
「仮想敵は分かった、ではそれに強いデッキは何か?」
まず思い付いたのがイゼットドラゴンでした。前環境もスゥルタイ根本原理に強いといわれていたこのデッキが、『フォーゴトン・レルム探訪』で手に入れたカードがこちら↓
このカードが入ったらイゼットドラゴンも緑単に強くなるのではないか?そういう考えのもとイゼットドラゴンを回してみることにしました。
回しはじめはメインデッキに3枚《バーニング・ハンズ》を入れていたのですが、これは明らかにやりすぎだと反省し、途中で《本質の散乱》に変更しています。使ってみた感想はスゥルタイ根本原理には《長老ガーガロス》や《星界の大蛇、コーマ》をこれ1枚で対処できるようになったため、より強くなった印象でした。
では、肝心の緑単アグロには強くなったのかというと、まったくそんなことはありませんでした。というのも、イゼットドラゴン側が緑単アグロのクリーチャーを適切に処理しなければいけないのですが、これがなかなか難しいのです。例えば、《群れ率いの人狼》と《恋煩いの野獣》を倒そうとすれば、《群れ率いの人狼》には《霜噛み》で3点、《恋煩いの野獣》には《バーニング・ハンズ》と的確に対処する必要があるのですが、このような的確なドローをするのは現実的には難しいものです。そのため、イゼットドラゴン側が対処できなかった何かしらのクリーチャーが場に残り、結果的にそれで負けてしまうということがよく発生しました。また、緑単アグロ側の《蛇皮のヴェール》がイゼットドラゴンからしてみると大変鬱陶しいカードで、貴重な《バーニング・ハンズ》をこれで弾かれてしまうと、どうしようもなくなってしまいます。
日本選手権の3日前
ということで、イゼットドラゴンも没になってしまい、他の候補を模索します。
次に考えたのはグルールアドベンチャー。ちょうどこのころライバルズ・リーグ所属の原根さんが配信で使って注目を集めたデッキです。
自分が環境初期に使ったものと比べると《リムロックの騎士》の代わりに《レンジャー・クラス》が入り、後手でもゲームがしやすくなっています。しかし、二日ほどランクマッチで回してみたのですが我々はいい勝率が出せませんでした。スゥルタイ根本原理に対しては新ミシュラランドのおかげで勝ちやすくなっているのですが、対アグロにて《厚顔の無法者、マグダ》が思うよう活躍せず、勝率がなかなか上がりません。結果、このデッキも使うのをやめようということになりました。
日本選手権の前日
さて、このグルールアドベンチャーと別れを告げたのは日本選手権前日の夕方。仮想敵への対抗馬がことごとく失敗に終わると、いよいよ緑単アグロかスゥルタイ根本原理のどちらかを使うのがいいのではないかという話になってきます。個人的にはアグロよりコントロールが好きなので、「スゥルタイ根本原理を使うかなぁ」といった話をしながらオリンピックの開会式を眺めていました。
一応、斉田君が日本選手権当日の朝に結果がわかる SCG satellite #2 を見て決めるとのこと。その結果も参考にしようということでその日はお開きになりました。
大会前日に準備したスゥルタイ根本原理。
メインはアグロ対策用のカード多めで、サイドは同型対策用のカードが多め。
日本選手権の当日の朝
翌日、朝の7時にLINEで起こされます。見るとSCG satellite #2 でスゥルタイ根本原理が大敗し、緑単アグロが大勝したとのこと。そしてそれを受けて、斉田君と中道君は緑単アグロを使うと連絡してきました。
デッキ提出の締め切りは8時...僕が下した決断は...!
スゥルタイ根本原理の勝率が5割を切っているのを見て、さすがに諦めました。この緑単アグロのリストは「どのリストがいい?」とカジュアルに質問したところ、斉田くんからポン出てきたものです。斉田君曰く、《グレートヘンジ》が無い方が回しやすかったとのこと。サイドボードも自信があるとのことだったので、それを信じて75枚同じものを使うことにしました。
日本選手権本戦
土壇場で握った緑単の結果は如何に!?
初日
Round1 BYE
Round2 ジェスカイ変容 ○○
Round3 ティムールアドベンチャー ××
Round4 スゥルタイ根本原理 ○○
Round5 緑単アグロ(中道君) ×○○
Round6 ジェスカイ変容 ○××
Round7 青黒コントロール ○○
5‐2で初日通過
二日目
Round8 赤単アグロ ○×○
Round9 白単アグロ ×○○
Round10 スゥルタイネスト ○○ (フィーチャーマッチ)
Round11 アゾリウスアーティファクト ○○ (フィーチャーマッチ)
Round12 ID
9-2-1でスイスラウンド8位通過!
TOP8
準々決勝 スゥルタイ根本原理(晴れる屋Hopesの佐藤啓輔さん) ○××(フィーチャーマッチ)
一没!
一緒に調整した二人の成績は
中道君 7-5
斉田君 3-3 ドロップ
中道君は、一緒に調整した二人に当たって両方負けてしまうという不運、斉田君はフィーチャーマッチで負けてしまいそこから連敗という結果に。
準々決勝を振り返る
準々決勝のゲームですが、個人的にはかなり酷いゲームをしてしまったと後悔しています。酷いゲームをしてしまった訳(言い訳)を少しだけ書かせてください。
1ゲーム目の途中までは比較的落ち着いてプレイできていたのですが、途中で対戦相手のカードをきちんと把握できていなかった事に気が付き、その焦りからミスを連発してしまいました。
そのときの画面がこちら。
この時、《魂の粉砕》が対戦相手のデッキに入っていることを失念していました。《不詳の安息地》で攻撃したら予想外のカードが出てきてものすごく動揺したのを覚えています。
そしてここからその動揺がプレイに出てきます。
それがこの場面。
解説の八十岡さんが「イチ!?」と驚いているのが印象的な場面
《恋煩いの野獣》と《空を放浪するもの、ヨーリオン》を《原初の力》で格闘するところですが、選んだXの値は「1」。これでは《恋煩いの野獣》がアタックしても2/2の狼トークンと相打ちになっていまいます。直前に引いた《石とぐろの海蛇》をなるべく大きく出すことに気を取られてしまったため起きたミスでした。
この後、幸運にも対戦相手に何も引かれず勝てたのですが、3ゲーム目に勝敗に直結するミスを犯してしまいます。それがこちら↓
この前のターン、実は《カザンドゥのマンモス》を土地として置くつもりでした。しかし、《解き放たれた者、ガラク》の忠誠能力をどうするかを考えているうちにそれをすっかり忘れてしまいました...
そしてそれに気が付いたのが次のターンに《探索する獣》を引いたときで、頭の中はミスをしたことによる動揺でいっぱいになり、僕の目の前から対戦相手のライフが見えなくなりました...
こうなってしまうと、正しい判断ができません。この時考えていたのは、何とか目の前のパーマネントを守ることのみです。そのため、《ガラクの先触れ》を《長老ガーガロス》でブロックされても大丈夫なように《解き放たれた者、ガラク》で+3/+3してアタックします。(手札に《蛇皮のヴェール》があるのでブロックされても一方的に打ち取れます)
しかし、それがブロックされず7点のダメージが入り、対戦相手は残りライフ3...
ここで《探索する獣》を出してアタックすれば《長老ガーガロス》はマストブロックであったことに気が付きます。
返しのターンで《探索する獣》を失うと《解き放たれた者、ガラク》も失うことにもここで気が付きました...
そして次のターン、その予想は的中し《探索する獣》と《解き放たれた者、ガラク》を失い、最終的には攻め手をすべて失って負けてしまいました...
思い返してみると一人で勝手に負けていった感じです。
傍目から見ると「なんでそんなことになるの?」という感じですが、「そんなこと」が起きてしまうのがTOP8の恐ろしいところです。大会が終わった後、「小さな動揺が原因で負けてしまうなんて、まだまだ場数が足りないなぁ」と一人反省していました。
後日談
と、最終戦はいろいろありましたが結果的にはTOP8に残ることができ、三人で情報共有しながら準備を進めたことは成功に終わったのかなと思っています。二人とも話を聞くと、情報共有しながらできたことには満足しているとのこと。特に使うデッキの取捨選択が早かったのがよかったとのことでした。確かに一人でこれだけのデッキを回すのは難しいですよね。
一週間前に突拍子もなくお願いしたにもかかわらず、快く引き受けてくれた二人に心から感謝しています。また機会があればぜひ一緒にやりたいですね。
グルールアドベンチャーが優勝したことについて
最後に少しだけ優勝したデッキについてです。優勝したのは直前に手放したグルールアドベンチャーでした。TOP8の廣澤さんのゲームを見てみたのですが、非常に繊細な戦闘を重ねて対戦相手の盤面を崩し、勝利していたのが印象的でした。自分でグルールアドベンチャーを回していたときにアグロに勝てなかったのはこれが上手くできていなかったのが原因だったのかなと思っています。大会結果をみると最終的な勝率は緑単アグロよりも高く、手放すという決断をしてしまったことは少し残念だったと反省しています。
追加の2マナ域として《リムロックの騎士》が採用されていて軽く動くことができ、戦闘もしやすそうです。
おわりに
日本選手権2021 season2のレポートは以上です!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
それではまたお会いしましょう(できれば紙の大会で!)バイバイ!