0.開始フェイズ
こんにちは、BIGsの簗瀬 要です。
秋はマジックプレイヤーにとって出会いと別れの季節、年に1度のスタンダードローテーションがやってきました!先日カードリストが公開された『エルドレインの王権』が発売されると同時に『イクサラン』~『基本セット2019』までのカードがスタンダードで使用できなくなります。
今回のCheck it out!はローテーションが与える影響と、ローテーション後のデッキを紹介していきたいと思います!
それでは早速行ってみましょう~!
1.ローテーションの影響
①ローテーションで使えなくなるもの
まずは、ローテーションで使えなくなるカードやデッキからチェックしていきたいと思います。
■チェックランド
今回のローテーションで最も影響を与えそうなのは10種類のチェックランドの退場です。我々は裕福な土地基盤に慣れすぎてしまいました。チェックランドとギルドランドの組み合わせはアンタップインしやすく、簡単に3色以上のデッキを作ることが可能でした。その顕著な例が序盤から強烈な色マナを要求しながらも環境のベストデッキと言われた4色ケシスです。
しかし、それはもう過去のこと、これからの多色デッキはギルドランドと『基本セット2020』の敵対色の占術ランド、ギルド門やゲインランド、そして『エルドレインの王権』で追加される《寓話の小道》でデッキを組む必要があります。残念ながらこれらの土地では4色ケシスのような多種の色マナを要求するデッキは作ることができないので、ローテーション後は1~2色のデッキ、2色タッチ1色のデッキがほとんどになるでしょう。
今回唯一追加された多色(?)ランド
■《ゴブリンの鎖回し》
ついにと言うか、やっとと言うか、『ドミナリア』が発売されてから振り回されていた鎖が止まるときがやってきました。今まで何体のタフネス1が犠牲になったことか!これにより、今まで活躍を制限されていたタフネス1のクリーチャー、例えば《楽園のドルイド》などは再評価されそうです。
また、《ゴブリンの鎖回し》が主に使われていた赤単アグロに関して言えば、《稲妻の一撃》をはじめその多くのカードがローテーション後に使えなくなります。さかのぼれば、《熱烈の神ハゾレト》が使えたころからずっとメタゲームの上位にいたデッキがついに終わり...に、なるのかな?
詳しくはまた後で。
スタンダードのみならず、モダンでも活躍しているこのプレインズウォーカーもついにご退場です。青白系のコントロールには必ずと言っていいほど彼が使われていましたね。最近は《時を解す者、テフェリー》の活躍のほうが目につきますが、空っぽの戦場にこれをプレイされた時の絶望感は環境終盤でも健在でした。1枚のカードでカードアドバンテージの確保、パーマネント除去、フィニッシャーのすべてをこなす万能カードだっただけに、なかなか同じようなカードを探すのは難しそうです。青白系のコントロールの直近の課題としてはこのカードの代わりを見つけることになるでしょう。
■コンボデッキ
ローテーション前のスタンダードは、スタンダードというフォーマットにしては珍しくコンボデッキの多い環境でした。どのコンボデッキもメインから対策するのは難しく、かなり厄介なデッキでした。これらコンボデッキもキーカードが退場するので、コンボデッキ自体は一旦は消滅しそうです。
残ってるカードが悪さしなければいいけどね...
②ローテーションしても依然として強力なもの
次にローテーションしても相変わらず強そうなカードです。
■《時を解す者、テフェリー》
スタンダードで遊ぶプレイヤーの方は、彼とはもう1年お付き合いすることになるでしょう。ローテーション後のスタンダードは、まずこのプレインズウォーカーに負けないデッキを作ることが1つポイントになりそうです。幸い、このカードに強そうなカードは『エルドレインの王権』にいくつか収録されています。
《時を解す者、テフェリー》許すまじ!
『エルドレインの王権』にはいつにも増して速攻を持つクリーチャーが多く採用されています。このプレインズウォーカーのようにトークンを生成しないものであれば、これらの速攻クリーチャーで比較的簡単に対処できます。これらのカードを使用して《時を解す者、テフェリー》を効率よく倒していきましょう。
■その他『灯争大戦』のプレインズウォーカー
《時を解す者、テフェリー》を「悪の枢軸」のようにやり玉に挙げましたが、彼のみならず他のプレインズウォーカーも相変わらず強力なのは間違いありません。『灯争大戦』の影響でいつもよりプレインズウォーカーの数が多く、且つアグロデッキ用のカードが軒並み使えなくなるので、対策を怠ると《時を解す者、テフェリー》以外のプレインズウォーカーにも簡単に盤面を支配されてしまうことになるかもしれません。ミッドレンジやコントロールデッキを作る場合は特に意識したいですね。
ローテーションで使えなくなるもの、依然として強いものを見てきましたが、一言で言えば、「マナ基盤は弱体化、《時を解す者、テフェリー》うぜー」です(笑)
これを踏まえながら、ローテーション後のデッキをいくつか作ったので、次から紹介していきます。
2.ローテーション後のデッキ
①赤単アグロ
むかしむかし、《怒り狂うゴブリン》というカードがありました。
この速攻しか持たないゴブリンに2018年世界王者のハビエル・ドミンゲス似の魔法使いが魔法をかけると...
こんなに能力が付いた立派な騎士になりました!
さて、前項でもお伝えした通り、ローテーションにより赤単アグロは多くのカードを失うことになってしまいました。しかし、その失った量に匹敵するくらいのカードを『エルドレインの王権』で得ることができました。《熱烈な勇者》もその中の一枚です。
ローテーション前と同様に《遁走する蒸気族》と《実験の狂乱》で展開力重視の赤単アグロです。《熱烈な勇者》、《義賊》、《砕骨の巨人》、《殺戮の火》、《朱地洞の族長、トーブラン》、《エンバレス城》と新しいカードがたくさん使っていますが、その中でも一押しの《義賊》と《朱地洞の族長、トーブラン》を紹介します。
《義賊》は赤い《正気泥棒》のようなカードで、手札を使い切りやすい赤単アグロにとってはカードを奪う条件を満たすのがそんなに難しくありません。2マナのクリーチャーでカードアドバンテージを取れる破格のクリーチャーです。
《朱地洞の族長、トーブラン》は実質自分のクリーチャーのパワーを+2するクリーチャーで、これにより《熱烈な勇者》は実質3/1の先制攻撃クリーチャーになり、《焦がし吐き》は攻撃が通ると計6点のダメージを与えるクリーチャーになります。同じマナ域に《実験の狂乱》があり、伝説のクリーチャーであるため、あまり多く入れることはできませんが、これからの赤単アグロの新たな脅威として活躍してくれることでしょう。
環境初期の速度を定義するために活躍することが多い赤単アグロですが、とりあえずこのデッキからローテーション後のスタンダードをスタートしてみてもいいかもしれませんね。
②青緑フラッシュ
むかしむかし、《リシャーダの飛行船》というカードがありました。
悪い魔女が《分散》と一緒に《リシャーダの飛行船》を大釜でぐつぐつ煮込むと...
なぜか瞬速までついてしまいましたね!巷では新しい《ヴェンディリオン三人衆》と言われてますが、飛行クリーチャーしかブロックできないので少し使い勝手が違うように見えます。地上クリーチャーをブロックできないので守るデッキで使うよりは攻めるデッキで使ったほうがいいでしょう。ということで、瞬速を活かしてローテーション前の環境にあった青緑フラッシュに入れてみました。
今までは2マナ域と3マナ域のクリーチャーが弱かったのですが、《僻境生まれの保護者》と《厚かましい借り手》で厚みが増しました。
《僻境生まれの保護者》は軽い瞬速クリーチャーと組み合わせることで簡単にサイズの大きなクリーチャーにすることができる青緑フラッシュ期待のカードです。これがブロッカーになる状態で正しい戦闘を行うのは困難を極めます。
青緑フラッシュの最大の弱点はなんといっても《時を解す者、テフェリー》です!着地してしまうとほとんどのカードが機能不全になってしまいますからね。そのためサイドボードに《探索する獣》を採用して《時を解す者、テフェリー》が戦場に出てしまってもすぐに除去できるようにしています。
また、青緑フラッシュのようなクロックパーミッションはクリーチャーがあまり大きくないため赤の火力に弱いのですが、赤いデッキ対策として《霊気の疾風》、《紺碧のドレイク》を多めに採用しています。
自分のターンにマナを使わず、対戦相手のターンに動くのが好き!という方は強化された青緑フラッシュを使ってみるのはいかがでしょうか?前の環境で青単テンポが好きだった人に特におすすめのデッキです。
③アブザン伝説ミッドレンジ
むかしむかし、あるところに《隠された手、ケシス》と《精励する発掘者》がおりました。伝説の呪文を唱えるたびに発掘者が墓地にどんどんカードを落とすのでケシスが困り果ててると、墓地の中から《湖に潜む者、エムリー》が出てきてケシスに尋ねました。
エムリー「あなたが落としたのはこの《Mox Sapphire》ですか?それとも《Mox Jet》?」
ケシスは答えました。
ケシス「2枚の《モックス・アンバー》です」
正直者のケシスに感心したエムリーは、ケシスに墓地からすべての伝説のカードを与えましたとさ、めでたしめでたし。
ローテーション前に突如として現れたケシスコンボ、僕もだいぶお世話になりました。ただ、あまりにも柔軟で強いコンボだったので、『基本セット2020』からローテーションまでの3か月という限定的な環境でなければもしかしたら禁止カードを生み出していたかもしれませんね。
さて、そんな凶悪なコンボパーツの片棒を担がされた《隠された手、ケシス》ですが、ローテーション後も使うことはできないのか?3/4というサイズも対アグロには優秀で、ゲームの後半は伝説のカードを墓地から唱えることでカードアドバンテージを稼げるためミッドレンジやコントロールにも強い、何とかしてこれを活かしたいとカードリストを見ていると...、
お!これは!
3色のミッドレンジ故、カードの選び方が無数にありますが、今回は対アグロに強くなるように組んでみました。《隠された手、ケシス》→《狼の友、トルシミール》→《呪われた狩人、ガラク》を食らってはアグロデッキはひとたまりもないでしょう。そのほかにも《ケイヤの誓い》や《軍団の最期》を入れて序盤の攻撃をしのぐことに重点を置いています。
《寓話の小道》はこのような1ターン目に動かないけど4ターン目以降はアンタップインしてほしいデッキによくマッチした土地です。
ミッドレンジなので環境初期はメインの細部やサイドボードを適切に作るのは難しいですが、強いクリーチャーやプレインズウォーカー、除去呪文を叩きつけたい!という方はこれを基にベストなミッドレンジを作るのにチャレンジしてみてもいいのではないでしょうか。
④食物ランプ
むかしむかし、《火炎舌のカヴー》というカードがありました。
余りにも強力な除去能力だったので、周りの天使を次から次へと環境から追い出してしまったとか...。
追い出された天使たち
さて、『エルドレインの王権』にもこの《火炎舌のカヴー》の生まれ変わりみたいなクリーチャーがいます。
戦場に出た時、格闘で3点...。
こう書くと弱く聞こえますが、大事なのはその下の能力です。この狼に食べ物を与えると+1/+1カウンターと破壊不能を得ることができます。つまり、食物トークンがたくさんあれば大きいサイズのクリーチャーも一方的に打ち取れるわけです。こう書くと途端に《火炎舌のカヴー》並みに強く見えます。
2種類のドルイドからマナブーストして《世界を揺るがす者、ニッサ》につなげるランプデッキに食物の要素を入れてみました。
食物トークンを生成するのは《金のガチョウ》、《王冠泥棒、オーコ》、 《貪るトロールの王》の3種類。《王冠泥棒、オーコ》は少し癖のあるプレインズウォーカーですが、クリーチャーを3/3にする能力が意外と強く、後半引いてきた《金のガチョウ》や《楽園のドルイド》を立派な戦力に変えることもできます。《貪るトロールの王》は緑が手に入れた新しいフィニッシャーで、墓地から戻ってくる能力はかなり強力です。
食物トークンはその見た目から『イニストラードを覆う影』の手がかりトークンに近い印象を受けますが、実際には他の能力のコストとして生け贄に捧げられることが多いため、どちらかといえば『カラデシュ』のエネルギーカウンターに近いものであると考えています。今回はランプデッキに組み込んでみましたが、もしかしたら食物に寄せたデッキを作ることができるかもしれないですね。
3.終了フェイズ
さて、今回は昔話付きでデッキを紹介しましたがいかがだったでしょうか?ちなみに今回は採用したデッキはありませんでしたが《むかしむかし》もぜひ使ってみたいカードの1枚です。
『エルドレインの王権』のカードは一徹の能力や特殊土地の能力を見てもらうとわかるように単色デッキで使うほうが使いやすいカードが多くあり、多色のラヴニカと上手に合わせるのがとても難しかったです。ただ、難しいほうがいろいろ組み合わせを考えることができるのでデッキを作るのが楽しいかもしれませんね。今回の記事が少しでも皆さんの作るデッキの参考になれば幸いです。
それではまた、バイバイ!
このカードで勝ってみたいね
簗瀬 要