はじめに
こんにちは、BIGsの簗瀬 要です。
前回までのおさらい:
さて、このシリーズも今日で最終回です。最終回は勝利をつかみ取る道具である「デッキ」について解説していきたいと思います。マジックのデッキはそのデッキに沿ったゲームの仕方(=差のつけ方)を実行しないと、デッキのパワーを十分に出し切ることができません。そのデッキについての正しい差のつけ方を知るということは、そのデッキでの勝ち方を知ることになります。
現代のマジックにおいて、デッキのタイプを表す言葉に「アグロ」「コントロール」「ミッドレンジ」「コンボ」の4つがあります。これらのデッキがどうやって対戦相手に差をつけながら勝つことを目指すデッキなのかについて解説していきたいと思います。
それでは早速行ってみましょう~!
それぞれのデッキの差のつけ方 ‐ メインボード編
まずはそれぞれのデッキのメインボードがどのように差をつけて勝利を目指すのかを解説していきます。
①アグロ
アグロはクリーチャーで素早く対戦相手のライフを0にすることを目指します。そのため、序盤から効率よくマナを使いながら、クリーチャーで差をつけて対戦相手を攻撃し、対戦相手の対処が間に合わないようにゲームを進めます。カードの枚数やマナで差をつけるのはあまり得意ではありません。ただ、息切れ(攻め手が切れた状態)防止として数枚、カードの枚数で差をつけるカードが含まれていることもあります。現在のスタンダードであれば吸血鬼や赤単を想像してもらえばその構成やゲームプランを理解してもらえるかと思います。
クリーチャーと手数で差をつけるための優秀な軽量クリーチャーたち
息切れ防止の役目を担う枚数で差をつけるカードたち
プレイの仕方も基本的にはクリーチャーで差をつけることを第一に考えます。基本的に攻撃することが得意なカードが多く、あまり差を取り返しやすいカードは入っていないので、一度対戦相手に差をつけられると取り返すのが難しい場合が多いです。そのため、対戦相手よりも先に差をつけることを考えながら、常に先手先手でプレイしていくことを心がける必要があります。
②コントロール
コントロールはアグロとまったく逆のアプローチで対戦相手と差をつけて勝利することを目指します。カードの枚数やマナの数で差をつけ、効果の大きい呪文を唱えて対戦相手のやりたいことを封じます。そして勝つときは少量の勝ち手段で対戦相手のライフを0にします。現在のスタンダードであればエスパーコントロールやバントランプを想像してもらえばその構成やゲームプランを理解してもらえるかと思います。
カードの枚数やマナの数で差をつける優秀なカードたち
そのまま、勝ち手段になるものも多くあります
基本的には対戦相手に付けられたクリーチャーの差を取り返しながらゲームを進めていきます。そのため、序盤は少し不利な状況になる場合が多いですが、そこを我慢しながらマナをためて差を取り返すカードを使って、だんだん有利な状況にもって行くようにプレイしていきましょう。
③ミッドレンジ
優秀なカードの塊であるミッドレンジは、とにかくありとあらゆる方面で差をつけてくるのが得意なデッキです。効率よくマナを使い切りながら、カードの枚数、マナの数、クリーチャーのすべてで差をつけようとしてくるので、対戦相手からすればどこを攻めればいいのかわからない状態になります。現在のスタンダードであればエスパーヒーローやスゥルタイミッドレンジを想像してもらえばその構成やゲームプランを理解してもらえるかと思います。
差を付けるのに適した優秀なカードたち
クリーチャーや除去、プレインズウォーカーまでなんでもござれなデッキです
あらゆる方面で差をつけると聞くと最強のデッキに聞こえるかもしれませんが、実際には対戦相手のデッキに合わせた適切な方法で差をつける必要があるので、プレイするには環境やデッキの理解度などの力量が問われるデッキです。プレイの方針としては対アグロにはコントロールのように立ち回り、対コントロールにはアグロのように立ち回るのがよいとされています。
ちょっとコーヒーブレイク
アグロ(=ビートダウン)やコントロールは昔からある言葉なので、こういうデッキがアグロでこういうデッキがコントロールというのは説明しやすいのですが、ミッドレンジという言葉が使われだしたのは比較的最近なので、こういうデッキがミッドレンジという説明は少ししにくいです。マジックにおいては特にこういうデッキだからミッドレンジになる、といった定義があるわけでもありません。そのため、人によっては「これってミッドレンジなの?」とか「なんかあいまいなデッキタイプ~」と思う方もいるかもしれません。
昔話をすれば、僕がミッドレンジという言葉を最初に耳にしたのは『ラヴニカの回帰』のときのジャンドミッドレンジ(《スラーグ牙》や《高原の狩りの達人》が入ったデッキ)が初めてでした。それまでこの手のデッキはどう呼ばれていたかといえば、大体はアグロかコントロールのどちらかに分類されていました。今でこそミッドレンジという言葉があるので、昔のデッキを見返したとき「これはミッドレンジだったんだ!」と気づかされるデッキはいくつもあります。例を挙げれば2001年の世界選手権優勝のマシーンヘッド。このデッキは《暗黒の儀式》や《スキジック》のように素早い攻撃を得意としながらも《火炎舌のカヴー》のようなコントロール要素も強いデッキで、即ち今でいうところのミッドレンジでしたが、当時は「早いコントロール」と呼ばれていました。
④コンボ
コンボデッキはカードとカードを組み合わせることで、いずれかの差が爆発的につくことにより勝利を目指します。今まであった代表的なコンボデッキを見ていきましょう。(デッキを知らない方はお手数ですがお調べください!)
MOMA、プロスブルーム : 爆発的なマナの差をつけることで、それをカードの枚数の差に置き換え、それらのマナと手札を使って最終的には対戦相手のライフを0にするかライブラリーを0にする。
双子、コピーキャット:カード2枚で爆発的なクリーチャーの差をつけることで対戦相手のライフを0にする。
ANT、ストーム : マナの差をつけつつカードの枚数で差をつけ、最終的には特大のストームを持つカードでライフを0にする。
エターナルブルー、ネクサス : 自分のターンを延々行うことで、カードの枚数やマナの数で自然と差をつけ、最終的には少ない勝ち手段で相手のライフを0にする。
リアニメイト、ショーテル 、ターボデプス、霊気池 : 正規のコストを踏み倒すことで圧倒的なクリーチャーの差を作り出し、最終的にライフを0にする。
以上、歴代の凶悪なコンボの数々でした。
最近流行りのスケープシフトは《風景の変容》で爆発的なクリーチャーの差をつけて且つデッキであり、ケシスは《モックス・アンバー》2枚でマナの差をつけつつ最終的に対戦相手のライブラリーを0にするデッキです。
コンボデッキはそのコンボに特化したものもありますが、ミッドレンジやコントロールの1要素としてデッキに組み込まれることもあります。基本的にはコンボパーツを揃えることを目指してプレイしていきますが、他の要素もある場合はそれも考慮しつつプレイすることを心がける必要があります。
それぞれのデッキの差のつけ方 ‐ サイドボード編
メインボードの差をつける方法はご理解いただけたかと思いますが、マジックのデッキはメインボードだけではありません。2本目以降のサイドボードを用いたゲームにおいては、メインとはまったく違う差をつけて勝利を目指すこともあります。もちろんすべてのデッキがそうではないのですが、ここではよくある変化について解説していこうと思います。
①アグロ
メインボードが序盤にクリーチャーの差をつけようとしてくるので、対戦相手もそれに合わせて序盤のクリーチャーの差を取り返すことのできるカード、例えば《ショック》や《肉儀場の叫び》のようなカードをサイドボードから入れてきます。その対策を狙って、そういった除去1枚では倒せないカードやクリーチャー除去では倒せないプレインズウォーカーをサイドボードから投入して、カードの枚数で差をつけて勝利することを目指すことが多くあります。
赤単の定番サイドボード
②コントロール
コントロール同型のサイドボードとして、急に軽いクリーチャーを投入してクリーチャーで差をつけて勝つことを目指すことがあります。これはコントロールのメインボードはクリーチャーがあまり入っておらず、そのため不要に感じられる除去呪文をサイドボード後に抜くことに目をつけて行われるサイドボードです。例としてジェスカイコントロールの《軍勢の戦親分》や奇跡コントロールの《僧院の導師》などが挙げられます。
③ミッドレンジ
ミッドレンジ同型でよく議論される話題の一つにサイドボードをどうするかというものがあります。あらゆる面で差をつけてくるミッドレンジですが、サイド後は複数の差をつけるものをサイドボードから投入し、大きな差をつけるわけではないカードを抜くのが一般的です。例を挙げると、スゥルタイミッドレンジの同型で《野茂み歩き》を抜くのは《人質取り》や《ビビアン・リード》のように複数の差をつけるカードに比べると大きな差をつけるカードではないためです。
④コンボ
「コンボが揃ったら負け」なので、対戦相手ももちろん全力でそのコンボを阻止しに来ます。そんなところに想定外のクリーチャーが戦場に出てきてはたまったもんじゃありません。これもコントロールの同型のときのサイドボードと同じ理屈です。ネクサスのサイドから《変容するケラトプス》が出てきたりするので、コンボと対戦するときのサイドボードは慎重に行う必要があります。
デッキは構築戦だけではない!
アグロ、コントロール、ミッドレンジ、コンボと取り上げてきましたが、これらの概念は構築戦だけのものではありません。リミテッドのデッキにも同じことが言えます。
ドラフトでせっかくアグロデッキを作ったのに差の方向性が違う《次元の浄化》を入れてしまっていると、ギクシャクしてうまく回りません。逆にコントロールデッキを組んだのに《狂った怒り》が入っていたりすると後半トップデッキして自分が怒り狂いそうになります。
ドラフトではどういう差をつけて勝つデッキを作るか、というのをイメージしながらカードをピックしていきましょう。
また、シールドでいつも使う色を間違うという方はいらっしゃいませんか?そういう方は大体「差をつけるカード」がしっかり把握できていない場合が多いです。シールド構築の基本はデッキをミッドレンジに組むことです。単体のカードのパワーの高いもの=対戦相手に差をつけられるカードをしっかり選んで、それの枚数が多いデッキを構築するように心がけましょう。
どれが一番差をつけやすいか見極めよう!
おわりに
さて、3回にわたり「マジックの勝ち方」というものについて解説してきたわけですがいかがだったでしょうか?
基本的なことなので知ってる人には「当たり前じゃん!」と言われてしまうかもしれませんが、基本とはそういうものですし、当たり前のことを当たり前にやるというのはとても難しいことだと思っています。
「勝ち方だけわかれば絶対に勝てる!」というわけではありませんが、上手いマジックプレイヤーはこの勝ち方をしっかり身に着けており、それを間違わずにゲームを行っているのは事実です。この記事を読んでいただいて少しでも勝てるプレイヤーに近づいてもらえれば幸いです。
最後まで読んでいただいた方ありがとうございました。
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それでは次の記事で、バイバイ!