By Riku Imaizumi
「マジックを始めたばかりの人は赤単」。そんな風に言われたことはないでしょうか。
赤単はアグレッシブなため慣れない人が使っても勝ちやすい。さらに低レアリティのカードが多く、組みやすい。これが赤単が初心者におすすめされる理由です。
ですが、赤単に慣れてくると別のデッキを使いたくなるでしょう。
はじめたばかりのころは資産が少なく、高レアリティのカードに手が回りません。それでも別のデッキを使いたい......そんな人のために、この記事では初心者でも組みやすいデッキをご紹介していきます。
ひとくちに組みやすいと言っても、「デッキ作成にかかる金額が少ない」とか、「アリーナにて組みやすい」などの指標があると思いますので、「どのように組みやすいか」は記事ごとに設定していこうと思います。
今回のデッキに必要なレアカードはわずか2枚、しかも代替も可能。アリーナを始めたばかりの人でも組めますよ!
デッキコンセプト:《不吉な海》からタコ現る
今回のキーカードは《不吉な海》。
カードを8回引くことを条件に、8/8のクラーケン・トークンを生み出すエンチャント。キーカードがアンコモンなのは低予算でのデッキ構築において最高にありがたいことです。
マジックには「タコ」というクリーチャー・タイプがありますが、クラーケンもタコ的なものとして表現されることが多いです。スタンダードのクラーケンでも《水底のクラーケン》や《深海の破滅、ジャイルーダ》はけっこうタコっぽい見た目をしていますよね。
スタンダード外のカードでも、《ウーラの寺院の探索》や《圧倒的な波》なんかはタコとクラーケンをひとまとめにしています。
《不吉な海》から現れるトークンはあくまでクラーケンですが、「8/8」「8回カードを引く」と8という数字を使っているあたり、かなりタコを意識していそうですね。
ちなみに「クラーケン」とはもともと「海の怪物」のことで、頭足類(タコやイカ)と定義されているわけではありません。海老・蟹(甲殻類)や海蛇などの姿で描かれることもあります。
そんなわけで、私は《不吉な海》を「タコ壺」と呼んでいます。時間が経てばタコが入るあたりそれっぽい。
デッキリスト:海門のタコ壺
デッキリストインポート用(クリックで展開します)
デッキ
4 不吉な海 (IKO) 61
4 成長のらせん (RNA) 178
4 ギルド会談 (GRN) 41
4 意味の渇望 (THB) 74
4 安堵の再会 (IKO) 110
4 交感の力 (IKO) 180
4 イゼットのギルド門 (GRN) 252
4 グルールのギルド門 (RNA) 250
4 シミックのギルド門 (RNA) 258
4 燃え立つ門 (RNA) 102
2 迂回路 (GRN) 125
2 セレズニアのギルド門 (GRN) 255
2 ディミーアのギルド門 (GRN) 245
4 森 (RTR) 270
4 島 (MIR) 336
4 ボロスのギルド門 (GRN) 243
2 タッサの神託者 (THB) 73
《不吉な海》を使うなら、狙うは大量ドロー!
《交感の力》は手札があればあるほど大量にドローできるカードなのですが、問題はそもそもたくさんの手札がないとドローの枚数が減ってしまうこと。
それを補うのが《ギルド会談》。継続的に手札を増やしてくれるので、X=8で《交感の力》を放つことも夢ではありません。
《ギルド会談》のために門シナジーを取り入れたことで、時間稼ぎとなる《燃え立つ門》の採用も可能になりました。
動き出しの遅いデッキなので、軽く強力な全体除去は必須と言えます。門が8枚以上並ぶとクラーケン・トークンも焼けてしまうので注意しましょう。
どうでもいいですが私は《燃え立つ門》でクラーケン・トークンを焼き殺すのを「タコ焼き」と呼んでいます。焼け残ったら「生焼け」。
《不吉な海》《ギルド会談》とエンチャント8枚を搭載したことにより、《意味の渇望》も噛みあいます。《安堵の再会》も合わせてどんどんタコを水揚げしていきましょう。
最後に、このデッキがたった2枚だけ必要とするレアカードにも触れなければなりません。
それは《タッサの神託者》。
《不吉な海》の能力の性質上、ライブラリーが激しい勢いで吹き飛んでいきます。クラーケン・トークンを何度も除去できるデッキが相手だとライブラリーの枚数が足りなくなりますので、ライブラリーアウトを勝利に変えられるカードは絶対に必要です。
《神秘を操る者、ジェイス》でも構いません。そちらならドロー能力が《不吉な海》と噛みあっていますしね。ただ青マナを3つ用意するのがちょっと大変なのと、実は青への信心も多少用意できることを踏まえて、私は《タッサの神託者》を推します。
ちなみに青赤緑のデッキですので、《セレズニアのギルド門》《ディミーアのギルド門》《ボロスのギルド門》の枠は青赤緑の門であれば基本は構いません。門の枚数を水増しするためだけに入れています。
サイドボード案
サイドボードとはプランに沿って用意するものですが、それよりも前にどうしても対策が欠かせない天敵がいます。
《覆いを割く者、ナーセット》はタコ漁禁止令を敷いてきます。
一応通常ドローならできるので、タコを呼び出そうと頑張ってカウンターを積み上げることは可能です。どうせ《時を解す者、テフェリー》あたりに台無しにされますけどね。
《覆いを割く者、ナーセット》を対策するのなら、おそらく《丸焼き》が良いでしょう。
《焦熱の竜火》のような3点火力も考えられますが、デッキの性質上一切[ -2 ]能力を使ってこないことも考えられますから、しっかり除去できる《丸焼き》にすることをおすすめします。
どうでもいいですが実際のタコの天敵はウツボ。ウツボの丸焼き美味しそうだなァ......。
・サイドボード案1:クリーチャー主体にシフト
メインデッキにほとんどクリーチャーが入っていないことから、相手は除去呪文を減らすサイドボーディングをしてくる可能性があります。
その逆を突いて、クリーチャーをたくさん投入してやりましょう。
《アイレンクラッグの紅蓮術師》はレアなだけあって強力な1枚。相手のデッキとサイドボーディングによっては1枚で完封できるかもしれません。
《門破りの雄羊》もデッキと噛みあっています。コントロール系統のデッキには弱いですが、ちょっと速度の遅いクリーチャー主体のデッキ相手には無類の強さを発揮します。アンコモンなのも構築に負担をかかけない嬉しい点ですね。
クリーチャーを使う=ライフを狙いに行くプランなら、《型破りな協力》や《王家の跡継ぎ》も役に立ちます。
ただ、これらはいずれも《覆いを割く者、ナーセット》に弱いです。天敵を避けるなら《探索する獣》《変容するケラトプス》のように単純に強いクリーチャーを使っても良いでしょう。
どちらも《覆いを割く者、ナーセット》本体にプレッシャーをかけやすいのが利点です。
・サイドボード案2:コントロールにシフト(特に最近の相棒アグロに対して)
直近のスタンダードでは、《獲物貫き、オボシュ》を相棒に据えた高速の奇数アグロ(赤単、赤黒など)、《夢の巣のルールス》を相棒に据えた変則アグロ(白緑オーラなど)のように、中速寄りの速度のデッキは選ばれない傾向にあります。
アグロ対策は全体除去と相場は決まっていますが、直近の相棒アグロはそれだけでは止まりません。《夢の巣のルールス》からのリカバリー、《大釜の使い魔》の復活のように、《肉儀場の叫び》でもなければなかなか決め手にはなりません。
ではどうするのが良いかというと、《樹上の草食獣》が良いのではないかと思います。
全体除去で止まらないなら、こちらもゲームスピードを速めて相手に追いつくのが良いでしょう。ブロッカーとしてもなかなか優秀なので、序盤に出せれば5点分くらいライフを稼ぎつつマナ加速する、くらいの活躍を見込めます。
ちなみにこのカードは門コントロールならメインデッキに積まれることも多いですが、手札消費が激しくなるのでこのデッキのメインには入れていません。
また、マナ加速と噛みあうのが《アーチ道の天使》。
除去しても簡単にリカバリーされるのであれば、自分が死ななくなるようなプランで闘うことをおすすめします。《アーチ道の天使》はまさにプランにぴったりのカード。
ただしメインデッキには白マナの用意が不十分なので、《ディミーアのギルド門》を《オルゾフのギルド門》に変えたり、島や森を一部《アゾリウスのギルド門》や《セレズニアのギルド門》に変える工夫が必要です。
デッキを強化するなら?
このデッキを強化する場合、いくつかの選択肢があります。
・門デッキとして強化する場合
門デッキとして強化するなら、まず検討したいのは《調和の公有地》でしょう。
アグロへの耐性を大きく上げてくれる優秀な土地です。
ただ、門関連のサポートカードはラヴニカ以降出ておらず、強化の幅が低そうです。
・カードパワーを重視する場合
大抵の場合、純粋に強いカードを入れればデッキは強くなります。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《サメ台風》を入れておいて役に立たないということはまずないでしょう。
サンプルとして以下のようなデッキを記載します。
デッキリストインポート用(クリックで展開します)
デッキ
4 不吉な海 (IKO) 61
4 成長のらせん (RNA) 178
4 自然の怒りのタイタン、ウーロ (THB) 229
4 意味の渇望 (THB) 74
4 安堵の再会 (IKO) 110
4 型破りな協力 (ELD) 193
1 ゼイゴスのトライオーム (IKO) 259
4 神秘を操る者、ジェイス (WAR) 54
4 選択 (ELD) 59
4 ケトリアのトライオーム (IKO) 250
4 蒸気孔 (GRN) 257
4 踏み鳴らされる地 (RNA) 259
4 繁殖池 (RNA) 246
2 森 (RTR) 270
1 天啓の神殿 (M20) 253
2 島 (ANA) 57
4 サメ台風 (IKO) 67
1 神秘の神殿 (M20) 255
1 ラウグリンのトライオーム (IKO) 251
サイドボード
4 アイレンクラッグの紅蓮術師 (ELD) 128
4 神秘の論争 (ELD) 58
4 王家の跡継ぎ (ELD) 199
3 丸焼き (M20) 140
ディスカードしつつカードをドローできるので、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は容易に「脱出」しますし、《成長のらせん》と合わせてマナ加速が8枚になったことで《サメ台風》を4ターン目に普通にプレイすることも可能になりました。
トライオームの適正枚数はちょっと判然としないのですが、ドローが重要なデッキである以上弱いはずがないので、もしかしたらもっと入れても良いかもしれません。
・イゼット・フェニックスとのハイブリッド
ドロー呪文が多いことから、イゼット・フェニックスとのハイブリッドも可能です。
デッキリストインポート用(クリックで展開します)
デッキ
デッキ
4 不吉な海 (IKO) 61
4 選択 (ELD) 59
4 意味の渇望 (THB) 74
4 雷猛竜の襲撃 (IKO) 109
4 胸躍る可能性 (ELD) 146
4 安堵の再会 (IKO) 110
4 弧光のフェニックス (GRN) 91
2 約束の終焉 (WAR) 127
4 ゴブリンの電術師 (GRN) 174
4 ショック (M19) 156
2 型破りな協力 (ELD) 193
3 天啓の神殿 (M20) 253
4 蒸気孔 (GRN) 257
3 ケトリアのトライオーム (IKO) 250
4 山 (MIR) 346
6 島 (MIR) 336
サイドボード
4 神秘の論争 (ELD) 58
4 アイレンクラッグの紅蓮術師 (ELD) 128
4 王家の跡継ぎ (ELD) 199
3 厚かましい借り手 (ELD) 39
普通に殴れる《弧光のフェニックス》やプレインズウォーカーに飛ぶ火力の《雷猛竜の襲撃》と、《覆いを割く者、ナーセット》へのプレッシャーを用意できるのは微力ながら利点です。
とはいえ天敵であることに変わりはないですし、《約束の終焉》が入ったことで《時を解す者、テフェリー》にも弱くなってしまっていますが......。
なお、できたら《約束の終焉》で唱えるためにソーサリーを増やしたいところです。
以上、低予算構築 第2回でした。
構築に縛りがある関係上、十分なデッキパワーを持たせるのは難しいのですが、回していて楽しいデッキを紹介していければ良いなと考えています。
それでは、また次回!