はじめに
こんにちは!「BIGs」&「MTG通販Nageya」 の斉田です。
先日行われたエターナル・ウィークエンド レガシー選手権にて、望外の準優勝という成績を収めることができました。
私はグランプリなどの大型イベントがあるとき以外では普段レガシーをプレイしておらず、かつ今回使用したデッキでの練習は、なかなか時間が取れずMOでの1リーグ5マッチだけでした。
これまで「50マッチ」という記事を書かせていただいているとおり、下手な部分を練習量で補っている私にとってはあまりにも頼りない数ですが、それでもここまで勝てたのには明確な理由があります。
運が良かったのも間違いないですが、それよりも大きな勝因となったのが元リスト75枚を完全コピーした「デッキ選択」です。
経験不足の私を準優勝まで導いてくれたそのデッキは、今大会において間違いなくベストな選択だったと言えます。今回はそれに行きついた経緯をお伝えしていきますので、よろしくお願いします。
1.禁止改定後のメタゲーム
《死儀礼のシャーマン》と《ギタクシア派の調査》が禁止となり、非常に注目が集まったマジック25周年記念プロツアー。優勝チームのレガシー担当は『デス&タックス』でしたが、一大旋風を巻き起こしたのは
【25周年プロツアー:デッキタイプ】最終成績10勝4敗以上のチームのデッキタイプです。
(※チーム成績のため必ずしも個人で好成績を残しているわけではありませんが、ご参考までにご覧ください) pic.twitter.com/TZfybwIndy
-- MTG通販 Nageya (@mtgnage) 2018年8月5日
ChannelFireballの開発した『青黒・死の影』でした。
この表を作るにあたって上位15位までのリストに目を通しましたが、「これだ」と特別に惹かれるものなどは無く。基本的にはそのフォーマットのトップメタを使いたい性分なので、まずはこの『青黒・死の影』から試してみることにしました。
しかし結果は...
MOリーグ:0勝3敗
店舗大会:2勝3敗
全く勝てず。
モダンで使ったときにも感じたのですが、残念ながら《死の影》というカードがあまり好みではありません。「ライフを減らすことがメリットになる」という通常のルールと正反対の行為がどうしても肌に合いませんでした。
デッキとして頭一つ抜けて強いなら別なのですが、プロツアー後の各地の結果を見ていると特に目覚ましい活躍は無く。デッキが知られたことが影響したのか、ChannelFireballメンバーのプレイスキルが高すぎたのかは分かりませんが、ひとまず『青黒・死の影』の使用はここで断念。
そうこうしているうちに禁止改定後のメタゲームも徐々に見えてきて
Tier1
『グリクシスコントロール』
『奇跡』
Tier2
『青黒・死の影』
『デス&タックス』
『ティムールデルバー』
『スニークショー』
といった具合になりました。
トップメタを使いたいのであれば次に試すべきは『グリクシスコントロール』か『奇跡』なのですが、私はこれらのデッキの内容を見てどちらも試しませんでした。
理由は勝つまでのターンが長すぎること。レガシーは軽くて強力なスペルが多いため、毎ターン膨大な選択肢から最適解を探すことを迫られます。
勝つまでにターン数がかかるということは、その分選択肢は枝分かれに増えていきます。要するにミスをする機会が増えてしまう。加えてエターナル・ウィークエンドは参加者600名越えのスイスラウンド10回戦の長丁場が確定しており、となるととてもレガシーに不慣れな自分が扱える代物ではありません。
さて、改めてデッキ選択の理由をこうして書いてみると論理的というより「肌に合わないから」「難しすぎるから」といった感情的な理由が多い気もしますが、兎にも角にもデッキが決まらずいよいよ残り1週間を切った頃、とあるデッキリストが目に止まります。
2.『グリクシスデルバー』
エターナル・ウィークエンド前で最後の情報源と思われる8月12日のMO Legacy Challengeの結果に目を通しているときのこと。
※画像をクリックすると、MOで使用できるテキストデータをダウンロードできます。
この2位に入賞していた『グリクシスデルバー』。構成がメインに《コジレックの審問》4枚と《苦花》2枚。はて、どこかで見たような...
それはプロツアーで7位入賞チームが使用していたリストに酷似していました。最初見た時は「禁止改定で2種類のカードを失って弱体化を余儀なくされた『グリクシスデルバー』は今こんなかたちになってるのかー」くらいにしか思っていませんでしたが、どれくらい勝っているのか調べようと『グリクシスデルバー』でデッキを検索したところ
《コジレックの審問》と《苦花》が入っているのは非常に少数派であることが判明しました。
『グリクシスデルバー』というデッキ自体は一定数存在していましたが、やはり禁止の煽りを受けて下火になっています。リストも《若き紅蓮術士》を採用しているかたちが一般的ですが、《ボーマットの急使》や《思考掃き》を試しているものや、ハンデス枠に2枚ほどの《思考囲い》など試行錯誤されている模様。
そんな中でこの《コジレックの審問》と《苦花》という特殊な構成が2度結果を残したという事実は見逃せません。もしかしたらデッキが強いのでは?と思いリーグに参加してみると、なんと一発で5-0。
具体的なデッキの強さは後述しますが、これなら構成が広く知られていないというメリットも期待できます。相手が自分よりレガシー巧者であるなら、おそらく75枚認識している『青黒・死の影』で挑むよりも、詳細が不明な『グリクシスデルバー』を使う方が分があるだろうというのも選択理由の1つです。
(冒頭に「練習は5マッチだけ」と大袈裟に書いてしまいましたが、一応《死儀礼のシャーマン》が禁止になる前の『グリクシスデルバー』は少し使っていたので、その経験はある程度生きていたかもしれません)
3.エターナル・ウィークエンド本番
参加者626名のスイスラウンド10回戦+翌日TOP8によるシングル3回戦。byeも無いので初日はグランプリよりも過酷なトーナメントです。
スイスラウンド10回戦
R1 赤単プリズン×○○
R2 奇跡 ○○
R3 奇跡 ×○○
R4 青黒リアニ ○○
R5 死の影 ○○
R6 マーフォーク ×○○
R7 サルベイジャー ×○○
R8 エンチャントレス ×○×
R9 グリクシスコントロール ○○
R10 青赤デルバー ×○○
参加人数が多くIDも許されませんでしたが、なんと9勝1敗のスイスラウンド1位抜けでTOP8へ。
シングルエリミネーション3回戦
QF 奇跡 ○○
SF 青赤デルバー ○×○
FN ANT ××
最後の最後で経験の浅さが出て負けてしまいましたが、終始デッキの強さに助けられました。
まずは《苦花》について。
前述の通りTier1が『グリクシスコントロール』と『奇跡』と考えたとき、《苦花》はその2つに明確に強いためデッキを選択する1番の理由だったと言えます。現に本番でも合計で4回対戦していますが、4回とも2本のうちの1本は《苦花》で勝利しました。
特に『グリクシスコントロール』には着地するとほぼ対処されず、相手の《悪意の大梟》も《瞬唱の魔道士》も驚異ではなくなります。『奇跡』には《解呪》系で対処されますが、《若き紅蓮術士》と違って《終末》では根本的な解決にならないのが魅力です。
また《解呪》系で対処されると言っても、もちろんそれは《秘密を掘り下げる者》や《グルマグのアンコウ》には効かないので、攻め方が多角的になり対処が難しくなるという利点もあります。
そしてそれを加速させるのが《コジレックの審問》です。
純粋なハンデスとしてコンボに強いのはもちろん、こちらのクロックに対して有効な牌を落として他を腐らせることが可能です。相手からすると次にこちらが出すクロックが不明なため様々なカードを抱えておかないと対処ができなくなりますが、こちらは相手の手札にひっかかるものは《渦まく知識》や《思案》で積極的に避けていくことで有利にゲームを進められます。
ちなみに《コジレックの審問》は《思考囲い》でも良さそうに見えますが、もともと《目くらまし》や《不毛の大地》で重いカードには強く、デルバー同系の場合に《思考囲い》だと2点が痛すぎるので《コジレックの審問》のほうが優秀かと思います。
これら2種類に加えて《グルマグのアンコウ》と《真の名の宿敵》をおそらく限界ギリギリと思われる3枚ずつの採用をしている点も非常に素晴らしい構築でした。
従来『デルバー』というデッキは「鋭いものを、より鋭く」というイメージでしたが、このデッキは純粋に強いカードが多く「太く、どっしり戦う」ことが可能です。そういう意味ではレガシーに不慣れでも扱いやすく、勝ちやすいデッキだったかもしれません。
以上がデッキ選択の理由と使用感です。あまりにも強かったので、今後『グリクシスデルバー』はこのかたちが一般的になってもおかしくないと、個人的には思っています。
4.簡易サイドボーディング
あくまで参考までに。
『グリクシスコントロール』
OUT
2《致命的な一押し》
3《稲妻》
1《意志の力》
IN
2《最後の望み、リリアナ》
2《紅蓮破》
1《狼狽の嵐》
1《瞬唱の魔道士》
『奇跡』
OUT
2《致命的な一押し》
1《稲妻》
1《意志の力》
1《不毛の大地》
IN
2《紅蓮破》
1《狼狽の嵐》
1《瞬唱の魔道士》
1《外科的摘出》
『青黒・死の影』
OUT
4《意志の力》
2《苦花》
IN
2《紅蓮破》
2《悪魔の布告》
1《瞬唱の魔道士》
1《狼狽の嵐》
『デス&タックス』
OUT
4《意志の力》
2《呪文貫き》
2《苦花》
1《定業》
IN
2《最後の望み、リリアナ》
2《削剥》
2《悪魔の布告》
1《湿地での被災》
1《電謀》
1《瞬唱の魔道士》
『スニークショー』
OUT
2《致命的な一押し》
3《稲妻》
2《苦花》
IN
2《紅蓮破》
2《削剥》
2《悪魔の布告》
1《狼狽の嵐》
おわりに
いかがでしたでしょうか。ご意見・ご感想ありましたら MTG通販Nageya Twitterアカウント へ是非お送りください。
「準優勝が一番悔しい」という有名なセリフがありますが、今回に限っては練習量も少なく、ここまで勝てるとは思っていなかったので「準優勝だから2番目に嬉しい」というのが正直なところです。(笑)
しかし次のイベントとなる日本選手権は禁止改定も変更がなかったため成熟した環境での勝負になります。ドラフト練習はもちろん、スタンダードも今回のように「デッキ選択」で勝つことは不可能と思われるため練習が欠かせません。
負けた時は悔しさが先立つくらいの準備をして、 次も良い結果が残せるように頑張りたいと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。それではまた。
斉田逸寛