はじめに
こんにちは!「BIGs」&「MTG通販Nageya」 の斉田です。
唐突ですが皆さん、リミテッドは得意ですか?
僕は大の苦手です。リミテッドのグランプリでは2日目に残るほうが珍しいくらいの実力です。そのため少しでも良い成績を残すためにはどうすればいいのか考え、今回のグランプリ千葉に向けては今までと少し違う練習方法を試した結果、本戦で12勝3敗という望外の成績を残すことができました。
まだまだ根本的な実力は足りていないので「基本セット2019」の環境について何か極意のようなものを述べることはできませんが、今回の記事では僕と同様にリミテッドが中々上達せずに悩んでいる方に「純粋にプレイする」ということ以外にできるリミテッドの練習方法についてお話しさせていただければと思います。
必ずしもこの練習方法が正しいというものではありません。人それぞれ自分に合った練習方法があると思いますが、「練習したのに成果が出ない」「今の練習に疑問がある」 という方は是非目を通して頂ければと思います。
1.ドラフトについて
おそらくリミテッドが苦手という方の多くはシールドよりもドラフトに苦戦していることと思います。なぜならドラフトという競技は 「実力がとても重要であるにも関わらず、検討や反省がしにくいフォーマット」だからです。
シールドであれば勝っても負けても検討はしやすいです。特に負けたときは自分のデッキを組み直したり、友人と相談しながら検討する方も多いかと思いますし、それは有効な練習方法と言えるでしょう。
しかしドラフトは違います。負けた場合は往々にしてピックの段階で失敗しており、だとするのであれば分岐はどこで何をするべきだったのかが重要ですが、基本的にはそれを振り返ることができません。また、勝った場合も往々にしてピックの段階で成功しているのですが、ではなぜ成功したのか。もし偶然他と色が被らなかっただけであれば、それは実力ではなくただのラッキーなので次に繋がるものがありません。
このように負けた理由はおろか、勝った理由さえも分からないのは問題がある__ドラフトをしているとき、そう感じたことがありました。
ちなみに回数をこなすことに意味はないのかと聞かれたら答えは「No」。おそらくドラフトに精通している人であれば回数をこなすだけでも、これまでの経験・知識という「土台」をもとに感覚を調整し、その回数を新たな経験値として蓄えることが可能でしょう。しかし僕のようなドラフトにおいてその「土台」ができていない人間に新たな経験値を上からバラバラとこぼしても、積み重なっていないという実感があったのです。
さて、前置きが長くなりましたが、では具体的に僕がどのようにして今回ドラフトを練習したのかをお伝えします。練習方法は「ドラフト終了後、パックを復元してピックの検討会をする」というものです。やり方を説明します。
【必要なもの】
・このドラフトに協力してくれる8人(自分含)
・少し広めのスペース
・スマートフォン
手順1
まずは普通にドラフトを始めます。1パック目が終了した時点で、ピックした15枚のカードを順番を変えずに写真に収めましょう。2パック目、3パック目も同様。
手順2
対戦が全て終了したら、各自写真を見ながら1パック目からピックした順番で束を作り直します。ここから作業に入りますが、あると非常に便利な道具をご紹介します。
一見なにか分からないと思いますが、カードの大きさの枠が印刷されたA4用紙を貼り合わせて作った大きな1枚の紙です。ポイントは斜めに見ていくと枠が同じ色になっている点。 プレイヤーAが左上からピックした順に斜めにカードを置いていきます。右端までいったら左端に戻ってきます。
そしてその隣にプレイヤーAの上家にあたるプレイヤーBが同様に斜めに置いていく具合で、全員分を繰り返すと
このような状態になります。(スペースの都合で10ピック目以降は省略していますが、可能なら並べた方がいいです)
これで何がわかるかというと、
列を縦に見る(赤い部分)ことでプレイヤーAが開封したパックの内容がわかります。斜めに見る(青い部分)ことでプレイヤーAのピックが追えます。
このピックがそもそも正しいかどうか、というのは一旦忘れてください。 重要なのはなぜその選択を行ったのか、ピック中の思考を言語化して共有・検討できるということです。
プレイヤーA「開封したパックからこの3枚が強いと判断。飛行クリーチャーも魅力的でしたが、青白アーティファクトという明確なアーキタイプを目指せる《霊気盾の工匠》をピックしました。」
「その後、予定通り青白を目指してピックするも5ピック目で分岐点。青赤スペルに舵を切るか、-6/-0エンチャントで青だけ絞り続けるか。
画像内の緑のマルの部分を見てみると、序盤に赤の強いカードを下家に流しているので、青赤に行くともしかしたら下と赤が被ってしまうかも。でもここまで青いカードを取り続け、下はおそらく青をできていない。つまり青赤2色とも被る可能性は低く、むしろここで《奇怪なドレイク》を流してしまうと先ほど流した《どぶ潜み》と合わせて青赤に参入されるかも。
白いカードの流れが悪いこともあり、ここで目指す色を変更。」
といった具合に、ピックを振り返りながらドラフト中の思考を言語化しましょう。 8人も寄れば文殊の知恵。ここまで来ると自然と「ここのピックは怪しくない?」「このレア流れてるのは評価の誤認ありそう」「0-3した人は何が悪かったのかピックを追って振り返ろう」など話したいことが山のように出てくるはずです。
ちなみにこの方法は自分で考えたわけではありません。一緒にドラフト練習をする友人から「昔rizer(石村信太朗)さんとドラフトをしたときにパック内容を復元する方法を教えてもらった」と聞いて、試してみることにした次第です。
成果は上々。「3-0した人の理由」「自分がミスした部分」「どうすれば回避できたか」など知りたかった情報が得られるようになりました。検討には非常に時間がかかりますが、小さな「土台」を作れたことが何より大きかったです。
そしてもう一つ。私が練習に取り入れたのはドラフトコールです。プロツアーやグランプリでお馴染みの「残り14枚40秒です」というやつですね。これをスマホのボイスメモを使って作りました。このコールをつけてやる場合は、決められた時間以外ではこれまでのピックを確認できない競技ルールもきちんと適用します。
練習とは本番を想定して行うものです。全ての練習を本番と同様の条件でやる必要はありませんが、スポーツであれば練習試合、舞台であればゲネプロという通し稽古があるように 「これは本番と同じ条件でやる」というフェーズが必要だと考えています。
緊張は「普段と違う状況」で発生します。たくさん練習したのに本番で力を発揮できないのは「本番」という状況に緊張しているからです。これについては場慣れでしか解決できませんが、それ以外の要素を本番に近づけることで幾分か緩和することができます。ドラフトコールはそのひとつです。
また、僕は短時間だと少量でも記憶するのが非常に苦手で、4ピック目を選んでるときに2ピック目に何を取ったか忘れるなんてことが結構あります。気楽にドラフトする場合は、全然覚えていられないのでよく自分のピックしたカードを確認してしまいます。
練習をしても急に記憶力が良くなるわけではありませんが、なんとなく覚えておくコツをつかむだけでも大分違います。僕の場合は序盤は色だけは絶対に覚える(それがヒントになってカードを思い出せることが多い)、パック間の確認ではマナカーブで並べた図を思い浮かべて隙間を覚え、次はそれを埋めるピックを心がけるなどしていました。
・本番に近い環境を作る。本番では「本番」ということ以外全て普段通りが理想。
2.シールドについて
前述の通り、シールドは比較的検討を簡単に行うことができます。しかし、それ以上に効率的な練習方法が今の時代にはあります。それは有名プレイヤーの配信を見ることです。
「プロプレイヤーの頭の中を覗いてみたい」と思ったことはありませんか? そう思ってプロが例題カードプールからシールドを組む記事を見た経験はありませんか?
しかし、膨大な量のカードを使って構築するシールドにおいて、文字と数枚の写真から思考を読み取るのは極めて難しいと言えます。
そこで頼りになるのが動画配信です。ありがたいことに今日もどこかで有名プレイヤーが配信をしている時代です。これを活用しない手はありません。
これに関しては多くの方がそうしたかもしれませんが、僕も例に漏れずrizer(石村信太朗)さんの放送を見ていました。時間的にゲームまで全て見ることはできませんでしたが、シールド構築の部分だけは毎回全部見て勉強させてもらいました。
rizerさんに限らず、有名プレイヤーの配信はそのプレイヤーの思考を多く知ることができるツールです。これでもうシールドは完璧。
ではありません。ここまではあくまでショートカットで、これ以降の道のりは自分の足で歩かないといけません。
配信を見ていると「デッキを組む手順」「環境が速いか遅いか」「このカードはプレイアブルか」などがわかってくると思います。しかし当然ながらシールドプールは毎回違うので、それらを参考にしつつ自分でデッキを組み上げてゲームに勝利する力が必要です。
ここからは普通の練習ですが、先ほどと違いノウハウを得ているので、検討や反省をしつつも回数を重ねる走り込みが有効です。時間効率が良いMOも活用できます。
(余談ですが、MOはシールドについては問題ないですが、ドラフトが現実ルールと違い卓を囲った8人以外ともマッチアップします。僕はどうしてもそれが気になったので 今回MOでのドラフトはあえてほとんどやりませんでした。)
3.グランプリ本番
と、その前に。グランプリが近づくにつれて各所から様々な記事が出ましたが、僕は無料から有料まで目に付いたものは全て読みました。
新しい発見を期待するというより、記事を書くレベルの人と今の自分の認識に大きな相違がないか確認する答え合わせのような感覚です。
もちろん気づいていなかったテクニックなども少なからずあり、記事を読むことも一つの有効な練習方法だと思うのでオススメです。
初日は白黒t青で8-1。プールを見た瞬間は軽いカードが不足していたことに不安を感じるものの、シールドでは許容範囲内の重さでした。相手のデッキが明確に速いと分かるまでは後手を取るかたちです。 冒頭でお話しした通り、リミテッドでは2日目に行ける方が珍しいので、ドラフトができる喜びを噛みしめながら就寝。
練習の成果を出すぞと意気込むも、見るも無残なほぼ均等3色かつ弱いカードの多いとんでもエスパーデッキが誕生。
見苦しいことを承知の上で言い訳をさせていただくと、1パック目の2ピック目に入るところで卓内でトラブルが発生して一度ピックがストップ。それ自体はすぐに解決するも、通常のドラフトコールとズレてしまったので、この卓だけ別途ジャッジの方が対応するかたちでの再スタートになりました。
「さて、気を取り直して...あれ、そういえば1パック目に流したカード何だっけ?」
ピックしたカードが《ペガサスの駿馬》であることは覚えていましたが、流したカードが思い出せず。冷静に振り返ると特にめぼしいものがない弱いパックだったのですが、本番で慌てないように想定して練習したという気持ちが逆に災いして、集中力が欠けた感覚がありました。
流れの良かった青への参入が遅れ、中途半端なかたちに。0-2からなんとか1勝をもぎとって1-2。
今度は練習通りにできました。青から始めてまずは下家に青をやらせないように主張。流れを見て上家は緑をやってなさそうだったので飛び込んで青緑に。
デッキ自体はとても強いというわけではないのですが、卓に出ているカードが全体的に弱いという判断ができていたため途中で焦ることもなく。 初戦を危なげなく勝利し迎えたR14。僕の目の前に座ったのは
Table Number 553
Match Points 30
Opponent Ishimura, Shintaro
なんとrizer(石村信太朗)さんその人でした。
残念ながら3敗ラインだったためフィーチャーに呼んでいただけることはなく、写真はこの1枚だけしかなかったそうです。
もちろんドラフト卓に座ったときから気づいてはいたのですが、本当に対戦までできるとは思っていませんでした。
結果は運に味方されつつ辛勝。対戦後に少しお話しもできて光栄でした。 最終戦のR15も無事勝利して3-0、トータル12勝3敗でリミテッドでは自身初のマネーフィニッシュです。
おわりに
今回は苦手としていたフォーマットで良い成績を残せたので、その練習法を書いてみるという少し珍しい内容の記事でしたが、いかがだったでしょうか。
ご意見・ご感想ありましたら MTG通販Nageya Twitterアカウント へ是非お送りください。
もちろんこの成績だけで満足するわけにはいきません。まだまだリミテッドが下手な自覚もあるので、引き続き邁進していく所存です。
最後になりますが、今回の記事の掲載を快諾してくださったrizerさん、検討ありきのドラフトをしたいというワガママに付き合ってくれたドラフト練習会メンバーのみなさん、本当にありがとうございました。
次も記事が書けるくらいの良い成績が残せるように頑張ります。 それではまた。
斉田逸寛