はじめまして!BIGsの斉田逸寛です。
これからBIGWEBにて記事を書かせていただくことになりました。至らない点もあるかとは思いますが、精いっぱい頑張りますのでよろしくお願いします!
さて、第1回目となる今回は日本選手権を間近に控えた『スタンダード』を掘り下げていきます。
1、「ティムールエネルギー」がトップに立った理由
現在、スタンダードにてトップメタの地位を確立しつつある「ティムールエネルギー」。
ではなぜ「ティムールエネルギー」が強いのでしょう?それを紐解くために、まずはこれまでのメタゲームの推移を振り返ってみます。
「ティムールエネルギー」が躍進するまでのメタゲームは大きく分けるとじゃんけんのような三竦みでした。
プロツアーを「ラムナプ・レッド」が制し、それに有利な「黒単ゾンビ」が流行。それによって「ラムナプ・レッド」に抑えられていた「青系コントロール」や「赤緑ランプ」等が台頭し、群雄割拠の環境になりました。
デッキの地力があるのは「ラムナプ・レッド」と「黒単ゾンビ」ですが、いかんせんどちらも単色であるため、サイド後に相性差を覆すのが難しいです。
「ラムナプ・レッド」のサイド後土地を増やして《栄光をもたらすもの》や《焼けつく双陽》を採用するプランはまだ良い方で、「黒単ゾンビ」に至っては苦手な相手でもせいぜい《精神背信》を入れる程度しか対抗する術がありません。
赤には《領事の権限》、黒には《領事の旗艦、スカイソブリン》など、色の都合上対処に困る致命的なカードも存在するため、勝率が当たり運や対策カードを引かれたかどうかに左右される傾向がありました。
そこで白羽の矢が立ったのが「ティムールエネルギー」です。
※1.画像をクリックするとMOで使用できるテキストデータをダウンロードできます。
※2.以下の相関図の「ティムールエネルギー」はGPデンバーでTOP4に75枚同じレシピを3つ送り込んだこのBrad Nelsonの構成(以下ブラネル型)の場合、ということを頭の片隅に置きつつご覧ください。
GPデンバーの1つ前のGPミネアポリスで勝ち組だった「黒単ゾンビ」に有利で、「ラムナプ・レッド」にもほぼ五分五分に戦える理想的な立ち位置です。
《逆毛ハイドラ》は「ラムナプ・レッド」のブロック不可や「黒単ゾンビ」の優秀な除去を意に介さず盤面を支えてくれます。《つむじ風の巨匠》も頼もしいブロッカーとなります。
そしてメインから採用された《マグマのしぶき》と《領事の旗艦、スカイソブリン》、サイドボードの全体除去4枚が「黒単ゾンビ」への相性を明確に有利にしています。その分コントロールやランプにはそれらのカードは腐ってしまうので、ある程度は目をつぶっています。
ここまでが「ティムールエネルギー」がグランプリ優勝という最もわかりやすいかたちで、メタゲームの頂点へ立つに至った流れです。ここからは『打倒ティムール』としてメタゲームが動き出すわけですが、これが一筋縄ではいきません。
2、「ティムールエネルギー」がトップを維持する理由
少し大げさな例えになりますが、ブラネル型の「ティムールエネルギー」に採用されているメインの《マグマのしぶき》2枚と《領事の旗艦、スカイソブリン》2枚をサイドに移し、代わりにメインに《否認》を4枚入れたらどうなるでしょう?
コントロールとランプへの微不利は一転、微有利くらいになると思います。
「ティムールエネルギー」は3色という豊富な色の中からカードを選出し、デッキを組み替えることができるため、メタゲームに合わせた柔軟な対応が可能です。
ブラネル型の「ティムールエネルギー」はメタゲームを読んで意図的にゾンビに強い構成にしています。それはつまり構成を変えることで、有利不利のパラメータをある程度なら振り分けられることを意味しており、これがトップメタを維持している理由だと言えるでしょう。
さらに言うなら、一度は群雄割拠となったスタンダード。トップメタといっても全体で見れば30%程度が関の山です。様々なデッキに遭遇する中で、極端な有利不利の少ない「ティムールエネルギー」は確かに良い選択肢の一つです。
3、本題
さて、ここまで「ティムールエネルギー」を褒め称えてきたわけですが、最後まで手をこまねいているわけにはいきません。このデッキを倒す方法を私なりに考えてみました。
まず大事なことは『あなたが出る大会にいる「ティムールエネルギー」は、どこに対してガードを下げているのか』をしっかり把握することです。
日本選手権に焦点を当てるのであれば、幸運なことにその前週(9月2日-3日)のGPワシントン、GPトリノのフォーマットがスタンダードなので、そこでメタゲームの最終確認ができます。
見たこともない革命的な新デッキが誕生してこの記事が無に帰するのもそれはそれで悪くはないですが、環境末期のためあまり期待はしないでおきましょう(笑)
自分のデッキを考えるのと同じくらい「ティムールエネルギー」を観察し、主流はどんな構成で、何を使えば対等以上の戦いができるかを予想します。
例えば《マグマのしぶき》と《否認》が増えたのならそれらが利きづらい「黒緑《巻きつき蛇》」にチャンスはないだろうか。《反逆の先導者、チャンドラ》が増えたなら「マルドゥ機体」が有効ではないか。といった具合です。
また、万能に見える「ティムールエネルギー」にも、カード単体で見れば苦手なものはもちろんいくつか存在するので、代表的なものを紹介します。
・《熱烈の神ハゾレト》
ティムールカラーでは除去することができず、現状の対処策は《慮外な押収》しかありません。「ラムナプ・レッド」はもちろん、先日のRPTQでリュウジさんの使用した「赤黒アグロ」も良さそうです。
「ラムナプ・レッド」を使う場合は間違いなくこのカードが勝負の分かれ目になるため、注意点としてはサイド後ミッドレンジプランに寄せすぎないほうが良いと私は考えます。出来る限り《熱烈の神ハゾレト》が動き出すのを早くするためには、軽いカードが一定数必要です。
・《破滅の刻》《燻蒸》などの全体除去
《否認》があるといえど、基本はクリーチャーデッキなので全体除去はもちろん有効です。特に《破滅の刻》はサイド後増えるであろうプレインズウォーカーも巻き込めるのため、そう簡単にはイニシアチブをとられなくなります。
・《スカラベの神》&《蠍の神》
《熱烈の神ハゾレト》同様に効率の良い対処法がありません。タフネス5は《栄光をもたらすもの》で除去できないため場に定着しやすく、攻守両方での活躍が見込めます。
「ティムールエネルギー」には極端な有利不利がないということは、裏を返すとどんなデッキを使ってもしっかり対策を練ればこちらも戦えるということです。相手の構成や弱点をしっかり把握すれば十分に勝機はあると言えるでしょう。
4、避けて通れないこと
「ティムールエネルギー」同系についてです。倒す側ではなく使う側の人もたくさんいるでしょう。個人的に同系はプレイングよりもサイドボーディングが難しいと思っているので、そこについて見解を述べます。
前提となるリストは先にも紹介したブラネル型とします。私の考えるインアウトは以下の通りです。
先手
IN
2《慮外な押収》、2《反逆の先導者、チャンドラ》、2《不屈の追跡者》
OUT
2《マグマのしぶき》、2《つむじ風の巨匠》、1《逆毛ハイドラ》、1《削剥》
後手
IN
2《慮外な押収》、2《反逆の先導者、チャンドラ》、1《削剥》
OUT
2《マグマのしぶき》、2《つむじ風の巨匠》、1《導路の召使い》
サイドアウトするもの
・《マグマのしぶき》
綺麗にあたるのが《導路の召使い》しかいないのでサイドアウト筆頭...なのですが、後手の場合は残すプランもあるようです。後述します。
・《つむじ風の巨匠》
速いデッキに対するブロッカーとしては優秀ですが、カードパワーだけで見るとそこまで高くありません。必ず引きたいようなマッチアップでなければ、重複した時弱いリスクを軽減するため枚数を減らします。
全て抜くとエネルギーを使う先が無くなることや、プレインズウォーカーを巡る攻防で不利になるため2枚以上は残すようにしています。
・《逆毛ハイドラ》
基本的には1体いると盤面が膠着し、先手で複数引いてもあまり強くないので減らしています。後手の場合は最初の1体を出せるかどうかで盤面の持ちが全く違うので減らさないようにしています。
・《削剥》と《導路の召使い》
先手は盤面にクリーチャーを置く方が強く、後手はそれを除去することが大事なので先手後手で入れ替えます。《領事の旗艦、スカイソブリン》に対して《削剥》を減らした分は《慮外な押収》で補えると考えています。
サイドインするもの
・《慮外な押収》
同系の焦点の一つが「強力な5マナ域の存在」なので、それを奪えるカードは重宝します。しかしある程度盤面に依存するため、3枚以上は採用しない方がいいように思います。
・《反逆の先導者、チャンドラ》
《逆毛ハイドラ》や《つむじ風の巨匠》で定着できない可能性もありますが、こちらにも同様に守るカードが多くあります。マナ加速で手数差をつけたり、《栄光をもたらすもの》を除去できるなど役割が多いのでサイドインします。
・《不屈の追跡者》
一昔前はよく一方的に定着して勝つことがありましたが、《栄光をもたらすもの》《領事の旗艦、スカイソブリン》が増えた現在ではそこまで長く場に残ることは稀です。先手であれば攻めている分余裕があるのでアドバンテージ要員としてサイドインしますが、後手は綺麗に除去されることが多いのであまり入れたくないと思っています。
しかし私はこのサイドボーディングがきっと100点でないと思っています。なぜならGPデンバーの決勝動画を見たところ、BBDは《炎呼び、チャンドラ》をサイドインしていましたし、Brad Nelsonはサイド後の後手番で《マグマのしぶき》を残しているのを確認したためです。
《マグマのしぶき》に関しては先手後手をひっくり返す要素として納得できますが、《炎呼び、チャンドラ》は-3で盤面を取れることはほぼ無いので懐疑的です。ですが、このあたりはまだ私自身も試行錯誤をしている段階なので、あくまで参考程度に受け取っていただければと思います。
5、終わりに
いかがでしたでしょうか。みなさんが今後出るスタンダードの大会、また参加予定の方は日本選手権に向けて何か少しでもプラスになる情報が提供できていれば幸いです。
もちろん私もBIGsとして日本選手権に参加しますので、会場でお会いできるのを楽しみにしています。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。それでは!