By Riku Imaizumi
りゅうじ道場へようこそ! ここではマジック:ザ・ギャザリングの腕を磨きたい人に向け、幅広くプレイに関する情報を発信していきます。
指南をしてくださるのは、BIG MAGICが誇る村栄 龍司(むらえ りゅうじ)師範!
プロツアーでの10位入賞や、MOCS (Magic Online Championship Series) の参戦経験など、華々しい成績を記録しています。
今回はりゅうじ師範の代名詞とも言えるデッキ、親和の解説です。12月10日の配信時の内容をまとめつつ、追加の説明をお伝えしていきます。
お話する内容は大きく分けて以下の通り。
・デッキの概要
・最新デッキリストと解説
・現在のモダン環境の考察
・配信時に視聴者から募集した親和Q&A
・サイドボーディング
全体的に、「これから親和を使ってみよう」という人や、「親和はある程度使ったけど、あまり勝てていない」という人にとって参考になるはずです。
理解度を上げれば、練習効率が上がります。それはやがて勝率に反映されるでしょう。
【デッキの概要】親和=アーティファクトを利用したオールインアグロ
親和とは、アーティファクトを多数利用したオールインアグロ・デッキです。
0マナから3マナまでの軽量なアーティファクト・クリーチャーを合計で30枚近く採用し、それらをいくつかの呪文でバックアップしながら闘います。
固定パーツは多く、ほぼ全ての親和デッキに以下のカードが複数枚採用されています。
《オパールのモックス》
《バネ葉の太鼓》
《羽ばたき飛行機械》
《信号の邪魔者》
《大霊堂のスカージ》
《電結の荒廃者》
《頭蓋囲い》
《ちらつき蛾の生息地》
《墨蛾の生息地》
《ダークスティールの城塞》
《産業の塔》or《空僻地》
余談ですが、親和というデッキ名は『ミラディン』がスタンダードにあった頃のキーワード能力である「親和」に由来しています。
親和の強み1:5色のカードを採用可能
親和はアーティファクト・デッキでありながら、5色の呪文を採用できます。
5色の呪文を使えるということはなんでもできるということ。手札破壊も打消しも火力呪文も使えます。マジックというゲームのシステム上、すべての色を使えること自体は大きなアドバンテージになります。
色マナを供給するのは、先述した《オパールのモックス》、《バネ葉の太鼓》の8枚と、《産業の塔》4枚、そして基本地形2枚の合計14枚です。
2枚の基本地形からプレイできるカードを優先的にサイドボードに用意するケースもあります。
親和の強み2:多角的な攻撃ができ、ダメージを刻みやすい
親和が採用しているクリーチャーのほとんどは回避能力持ち。そのため相手のブロッカーに対して強いです。
もちろん除去呪文には無力ですが、1マナ以下で展開できるクリーチャーに除去呪文を使われてもテンポで上回れるため不利になるほどではありません。
加えて、そもそも除去呪文に強いカードも多数採用されています。
ブロッカー、除去呪文に耐性を持ち、継続的なダメージを刻むことは得意。
もちろんこれだけでは自分よりも早くゲームを決める相手に負けてしまいますが、強烈な打点をたたき出せるカードにより、速度勝負を挑めます。
《頭蓋囲い》も《きらきらするすべて》も使用すれば簡単にパワー7前後を作り上げるので、上手く行けば2、3回のアタックでゲームを終わらせることができるでしょう。
一方、《オパールのモックス》や《バネ葉の太鼓》、《メムナイト》といった単体で役に立ちにくいカードを多く抱えているのが弱点ですが、これらは《頭蓋囲い》《電結の荒廃者》などの打点向上にも使用可能。無駄になるカードが少ないため、後半戦も闘えます。
親和の強み3:多数の軽量カードとマナ加速による、アグロ・デッキ最高峰の速度
親和の最大の強みと言えるのが、モダンのアグロ・デッキでも最高峰とも呼べるその速度。
最速3ターンキルも可能なスピードを実現する要素のひとつはデッキ全体の軽さです。
デッキの平均マナコストはなんと1以下。モダン環境全体を見てもここまで軽量なデッキはなかなか見られません。仮に手札が土地と1マナ以下のカードしかない場合、単純計算で3ターン目には手札を全て使いきれることになります。
もうひとつ、速度に関わる重要なポイントはマナ加速呪文の存在。
パワー9の半数を占める「モックス」シリーズの後継、《オパールのモックス》。このカードのおかげで1ターン目に2マナ生み出すのも簡単です。先手をとられたとしても1ターン目に2マナ分使えれば攻勢に回りやすくなります。
もう一枚、親和の速度を支えているのが《バネ葉の太鼓》。《オパールのモックス》と違いプレイに1マナが必要ですが、《はばたき飛行機械》など0マナクリーチャーが多数投入されているため、マナ加速の条件は非常に緩いです。
実は《オパールのモックス》や《バネ葉の太鼓》ほど軽量かつ安定してマナを増やせるカードは広いモダン環境でも稀。これらマナ加速を8枚も採用できることは、親和を語る上で外せません。
※マナ加速が強い理由は、後手の不利を覆せるため
マナ加速は、そもそもマジックにおける強力なアクションの一つ。平均マナコストの低さに由来する行動回数の多さも相まって、親和は「後手の不利を覆す」ことに長けています。
特にモダンは先手の有利が他の環境に比して顕著。3ターンもあればゲームに勝てるデッキが多数存在するにも拘わらず、《意思の力》や《不毛の大地》レベルの強力な妨害カードは少数。その結果、相手の妨害を優先するよりも、相手より先に勝てるデッキを使用することが良しとされる環境になっています。
相手の3ターン目の勝利を防ぐ方法として妨害カードを使うことも可能ですが、それ以上に有効なのは相手が妨害せざるを得ない状況を作ること。
マジックは使えるマナおよび行動回数が多い先手のほうが有利とされています。単純な話、全く同じ行動をとっていけば勝利するのは先手になるからです。
そのため後手のプレイヤーはどこかで後手の不利を覆す必要があり、多くは妨害カード(除去呪文やカウンター)に頼ることになります。
一方、マナ加速が簡単にできる親和は妨害カードに頼らずとも後手の不利を覆せます。
同じアグロ・デッキに分類される、赤単果敢との対戦を例を挙げてみます。
先手の赤単果敢が《山》から《僧院の速槍》とプレイしたとしましょう。速攻で1点ダメージが入り、続くターンにも最低1点分のクロックが確保されます。
親和ならば、後手であっても《ダークスティールの城塞》《羽ばたき飛行機械》《オパールのモックス》《きらきらするすべて》と展開できます。これなら次のターンのダメージは最低でも4点。おそらく6点程度にはなるでしょう。
1点対4点の構図となった以上、妨害がないと仮定すれば、後手であるはずの親和が先に勝利することになります。これが俗にいう「先手と後手を入れ替える」と呼ばれる行為。
このように行動回数を上回られた時点で、赤単果敢は手札の火力呪文を《羽ばたき飛行機械》に使って妨害しなければいけなくなります。そのまま本体火力として使っていれば3~4ターン目に勝てていたかもしれませんが、それより先に負けてしまうのですから仕方ないですね。
また、わかりやすいよう2マナの《きらきらするすべて》でクロックを上げる例を上げましたが、単純に1マナの呪文を2回唱えることでも優位がとれます。
《羽ばたき飛行機械》《オパールのモックス》《ダークスティールの城塞》から、《信号の邪魔者》《感電破》とプレイできる場合を考えてみてください。
こちらの場には《羽ばたき飛行機械》《信号の邪魔者》という2体のクリーチャーと1点分のクロックが残るのに対し、相手の場には《山》のみになります。(《僧院の速槍》は《感電破》で除去)
相手は返しのターンで再びクリーチャーを展開したり、こちらのクリーチャーを除去するしかありません。こちらは残ったクリーチャーでダメージを刻み、新たにクリーチャーを出していけばOK。この場合も後手だった親和が「攻める側」に回っており、「先手と後手が入れ代わる」状況が成立しています。
相手が1マナの呪文を一回しか唱えられないのに対し、こちらは1マナの呪文を二回唱えるようにする。このように行動回数で上回るのも後手の不利を覆す手段のひとつです。
例としてわかりやすいアグロ・デッキ同士のマッチを挙げましたが、こういった現象はコンボ・デッキ相手でも起こります。
3ターン目に勝つデッキ同士がぶつかり合った場合、単純な話、勝利するのは先手をとったプレイヤー。理由は簡単で、先に3ターン目に到達するため。
親和はマナ加速を行うことで、2ターン目に3マナを出す、つまり疑似的に3ターン目への到達を早くすることができるのです。(あくまで疑似的に、です)
最新デッキリストと解説
以下が、放送でりゅうじ師範が使用したデッキリストです。
『エルドレインの王権』で獲得した新戦力
・《きらきらするすべて》
りゅうじ師範「今の親和のキーカード。《アーティファクトの魂込め》とちがって純粋なオーラですが、5/5程度では済まないサイズになります。
このカードのおかげで速度が一段上がったので、感染やトロンなどとの速度勝負ができるようになりました。タフネスが上がるため、火力呪文で妨害してくる相手(バーンやヴァラクートなど)相手にとても強くなりました。
ただし、メインボードから白・青・赤の3色が必要になった関係上、色マナを要求される場面が多くなりました」
・《ジンジャーブルート》
「特殊な回避能力持ち。《頭蓋囲い》と《きらきらするすべて》の付け先に最適です。ブロックされることがあるのは《ゴブリンの先達》《僧院の速槍》《復讐蔦》《血編み髪のエルフ》くらいでしょう。以前より《氷牙のコアトル》をはじめとした飛行クリーチャーを見かけるようになってきたので、飛行以上に信頼のおける回避能力です。
速攻を持っているので、《大霊堂のスカージ》や《信号の邪魔者》より優先して出す必要はありません。後出しでバチンといこう!」
・《湖に潜む者、エムリー》
「1マナでプレイできるにも関わらず《爆発域》や《仕組まれた爆薬》に巻き込まれにくいので、リカバリー役として優れています。お試しで採用していますが感触はなかなか良いですね。墓地のアーティファクト全てから選べる能力なので、細かい動きができるのも評価点。
ちなみに、この枠にもともと入っていたのは《光り物集めの鶴》。《湖に潜む者、エムリー》と比べると、即効性があって飛行持ちのアタッカーである点で勝ります」
サイドボードの選択理由
サイドボードには、現在13種類のカードが採用されています。詳しいサイドボーディングガイドは後述しますが、これには役割が被るカードを複数入れることにより対処できるデッキを広げる目的があります。
・《沈黙/Silence》
「土地コンボに強いよって言われたのでたまに採用しているカード。《召喚士の契約》や《炎の中の過去》なんかにも合わせて使いましょう。
1ターン差で勝負が決まるゲーム自体は結構あるのでなんやかんや優秀かもしれない」
「《電結の荒廃者》の接合は誘発しなくなりますが、墓地対策は追放できるものにした方が良いです。"《墓掘りの檻》を置いて安心していたら《突然の衰微》で壊されて《恐血鬼》たちが戻ってきた"なんてことになります」
・《儀礼的拒否/Ceremonious Rejection》
「エルドラージ・トロンなどの無色デッキへの対抗策。《大いなる創造者、カーン》が致命的なデッキなので2枚にしてもOK」
・《アーティファクトの魂込め/Ensoul Artifact》
「追加のオーラ。より速度を求めたい相手に」
「サイドボード後に除去が2枚のままでは《溜め込み屋のアウフ》に対処できないケースが増えるでしょう。枚数が必要です」
「取り回しの軽さ、汎用性の高さを買って1枚。狙いたいのは《王冠泥棒、オーコ》《飛行機械の鋳造所》《爆発域》あたり。流行りのウルザ・フードに対して有効です」
※サイドボードのカード選択に迷うより、とにかく練習が大事!
「サイドボードの細かいカード選択は正直なところなんでもいいです。1枚のカード選択がもたらす勝利よりも、練習不足が招く敗北のほうがずっと多い。そのためサイドボードの決定より練習に時間をかけるほうが有意義です。
デッキの理解度が上がって適切なプレイができるようになれば最後に欲しいカードは自然と浮かんできます」
現在のモダン環境の考察
『モダンホライゾン』『灯争大戦』『エルドレインの王権』とモダン環境を大きく変えるセットが大量に発売された結果、2019年12月現在もモダン環境には様々なデッキが存在していますが、新セットの恩恵を存分に受けたウルザ・フードやバント・コントロールが新デッキとして台頭してきました。
どちらも《王冠泥棒、オーコ》を使用した中速デッキですが、これらのデッキに真っ向から速度勝負を挑めるのが感染や赤単果敢。これら高速アグロ・デッキは緑系のトロンに有利がつくのも利点でしょう。
しかしながら、これらのデッキは1マナのカードが多く、無色系のエルドラージ・トロンが使う《虚空の杯》に弱いという欠点を抱えています。
そんな中、親和は《虚空の杯》にある程度の耐性を持ちながら速度勝負を挑むことができる高速デッキです。
天敵とも呼べる《大いなる創造者、カーン》を出されたとしても《きらきらするすべて》で殴り切れるパターンが残るため、『エルドレインの王権』参入により強化されたと言えるでしょう。
りゅうじ師範「《きらきらするすべて》のおかげで苦手だった《歩行バリスタ》に耐性ができました。そのためエルドラージ・トロンに対してもゲームになるという印象を持ってはいますが、僕が親和を使うのが上手いだけの可能性は大いにあります」
Q&A(視聴者からの質問とその回答)
Q. 親和のサイドボードには大量の種類のカードが採用されているのをよく見かけます。なぜこのようなサイドボードが構築されているんですか?
A. 「僕は長期戦を挑む相手以外には多数のサイドインを行いません。特定のカードが複数枚必要なケースが少ないため、様々なデッキ相手に少しずつサイドボードを選べるようにしています」
Q. 《きらきらするすべて》で強くなった理由はなんですか? 《アーティファクトの魂込め》とは何が違うんですか?
A. 「サイズが全然違います。使ってみるとわかりますがサイズの修正が+5程度では済まないので、スピードがだいぶ上がりました。重ね張りして効果があるのもいいですね。」
Q. 《鋼の監視者》はもうスピード不足ですか?
A. 「《きらきらするすべて》が入って速度を上げる方向にシフトしたため、2マナ以降で出た時に何もしないカードを減らしたいと考えました。
そもそも相手によって強弱がはっきりしていますので、他のカード以上に一定のパフォーマンスが発揮できないカードです。正直無くてもいいくらいと考えています」
Q. 《幽霊街》は何を抜いて入れましたか? 採用の意図は?
A. 「《ダークスティールの城塞》の代わりに入れました。トロンのウルザ・ランドや《爆発域》への対抗策です。
あと、《ダークスティールの城塞》は《大いなる創造者、カーン》で止まりますが、《幽霊街》なら問題ないという理由もあります」
Q.(配信時のプレイに対し)《大霊堂のスカージ》ではなく《電結の荒廃者》に《頭蓋囲い》を装備する選択肢はナシですか?
A.「配信時、以下のような状況が訪れました」
「緑系トロンとの対戦で、+1/+1カウンターがひとつ乗った《歩行バリスタ》に対し、こちらのクリーチャーはいずれも1/1の《大霊堂のスカージ》《電結の荒廃者》という盤面。事前にプレイした《思考囲い》のおかげで、相手の手札3枚中2枚は判明していました。(《解放された者、カーン》2枚)
そんな中、デッキトップから《頭蓋囲い》を引くことに。これを装備して戦闘を行うのですが、この時僕は《大霊堂のスカージ》に装備しました。
結果として、対戦相手は《歩行バリスタ》の能力を《大霊堂のスカージ》に起動してきたので、《電結の荒廃者》を犠牲に《大霊堂のスカージ》に+1/+1カウンターを乗せ、《歩行バリスタ》のダメージを躱しました。
確かに《電結の荒廃者》に装備すれば、《歩行バリスタ》のダメージを簡単に躱せます。クロックの維持という意味ではその方が良いでしょう。
ですが、この時に優先するべきことは別にありました。それは①対戦相手のライフをとにかく速く削ることと、②《歩行バリスタ》に退場してもらうことです。このどちらも実現可能な選択肢が《大霊堂のスカージ》への装備でした。
①対戦相手のライフをとにかく速く削ることについて。緑系トロンとのマッチアップは、相手がウルザ・ランドおよび高マナ域の切り札を揃える時間との戦いです。加えてこの時は相手の手札の大半も把握できていたので、何よりも早く勝負を決めることが優先されていました。
《電結の荒廃者》に《頭蓋囲い》を装備しても、《歩行バリスタ》のブロックでダメージ一回分が通らなくなります。一方《大霊堂のスカージ》なら確実に一回分のダメージを通せる上、相手の手札(《解放された者、カーン》2枚+不明なカード1枚)から妨害される可能性が低く、継続的なダメージが見込めます。
対戦相手のライフを削るという目的に置いて、装備先には《大霊堂のスカージ》が適していました。
②《歩行バリスタ》に退場してもらうことについて
この局面において最も望ましいのは対戦相手がウルザ・ランドを揃える前に勝負を決めることですが、仮に次のターンに揃えられてしまったケースを考えてみましょう。
その場合、手札の《解放された者、カーン》をプレイされてしまうようになりますが、それだけではなく《歩行バリスタ》の能力によりこちらのクリーチャー陣が壊滅することが予想されます。せめて《歩行バリスタ》へ撃ち込める除去があればマシですが、手札にはありません。
ウルザ・ランドが揃った時のことを考えると、この段階で《歩行バリスタ》には退場しておいてもらいたい。最もそれを実現できそうなシナリオが「《大霊堂のスカージ》に《頭蓋囲い》装備 → スタックで《歩行バリスタ》の能力を起動してもらう = 退場」でした。
最悪なのが《電結の荒廃者》に装備、および攻撃まで全てスルーされて《歩行バリスタ》が生き残るシナリオ。事実次のターンにはウルザ・ランドが揃っていましたので、そうしていたら勝つのは難しかったでしょう。
よしんば《頭蓋囲い》を装備した《電結の荒廃者》がブロックされたとしても、クロックの維持のためにはアーティファクトをひとつ生贄にしなければならず、あまり嬉しい展開ではありません。能力スタックで《電結の荒廃者》を対象に《歩行バリスタ》の能力を起動されると更にやっかいなことになります。
そのため、《頭蓋囲い》の装備先は《大霊堂のスカージ》が最適だったんです。ちなみに、実際のゲーム中はこれらを全て考えているわけではなく2秒くらい考えて経験則でプレイしています。」
サイドボーディングガイド ~実はイン・アウト自体は重要ではない~
サイドボーディングは基本的に以下の4つのゲームプランに従って入れ替えを行います。
1. とにかく最高速度で倒す
2. 《刻まれた勇者》で勝利
3. 長期戦を耐え忍ぶ
4. その他
各種のデッキタイプに対し、イン・アウトの枚数はお伝えします。しかし、実際のところイン・アウト自体はそこまで重要ではありません。本当に重要なのは上記のゲームプランです。
対戦する相手のデッキタイプごとに、目指す「勝ち方(=ゲームプラン)」は変わります。サイドボーディングはあくまでその「勝ち方」を実現するためのものに過ぎません。
りゅうじ師範も、イン・アウトは時と場合によって細かく変えています。入れ替えだけ覚えても無意味。勝ち方と負け方を意識しましょう。
りゅうじ師範「サイドボーディングはラウンド中にコロコロ変わります。そういうものだと考えて、柔軟な対応をするのが大事です。
先日のミシックチャンピオンシップでも、チームで事前に決めたイン・アウトから大会中に変わっていきました。一人の時は尚更その時の雰囲気でやってます。ちなみに今回は使い始めたばかりということもあり、《きらきらするすべて》をあまりサイドアウトしない方向でインアウトを作成しました。」
※時と場合とか雰囲気ってなんだよ! という方へ
時と場合とは、「対戦相手による」ということだと考えてください。
例えば、グリクシス・死の影との対戦。このマッチアップは《刻まれた勇者》で勝利を目指すゲームプランをとります。そのため大量にアドバンテージをとる《実験の狂乱》やアドバンテージ損をしやすい《きらきらするすべて》は不要です。
しかし、相手が3枚もの《コジレックの帰還》を採用していたとしたらどうでしょう。
《刻まれた勇者》ではゲームを決められなくなるので、カード枚数を確保できる《実験の狂乱》や追加のフィニッシャーとなる《きらきらするすべて》が必要になってくるかもしれません。
わかりやすくするため極端な例を挙げましたが、これ以外にも「対戦相手が想定よりたくさんエンチャントやアーティファクトを入れていた」とか、「3本目が始まる前に対戦相手が10枚以上サイドインした(ため、2本目までとは全然違うゲームになりそう)」など、サイドボーディングに影響を与える要素は多数存在します。自分の目で見て、自分で判断し、自分のゲームプランを遂行できるようにプレイしましょう。
【ゲームプランごとのサイドボーディング】1. とにかく最高速度で倒す
このゲームプランは、主に長引くと負ける相手や、ダメージレースが発生する相手にとります。
■エルドラージトロン
・in
1《儀礼的拒否》
1《古えの遺恨》
1《摩耗/損耗》
1《思考囲い》
1《沈黙》
1《アーティファクトの魂込め》
・out
2《刻まれた勇者》
2《メムナイト》
1《鋼の監視者》
1《ジンジャーブルート》
・想定される相手のサイドボード
《次元の歪曲》
「ゲームを長引かせたところで相手のゲームレンジに入るだけですし、《大いなる創造者、カーン》が生き残る時間を与えるだけです。止まりにくい飛行クリーチャーを使って最速で殴り切りましょう。
エルドラージ・トロンの除去は《次元の歪曲》や《爆発域》など限られており、意識していれば大きな被害を受けることは少ないです」
■感染
・in
1《呪文貫き》
2《思考囲い》
1《ギラプールの霊気格子》
1《感電破》
1《古えの遺恨》
・out
1《鋼の監視者》(先手なら残してもOK)
1《溶接の壺》
2《刻まれた勇者》
2《信号の邪魔者》
・想定される相手のサイドボード
《儀礼的拒否》《自然の要求》《王冠泥棒、オーコ》《呪文滑り》
「《荒廃の工作員》さえ出なければこっちの方が速い印象を受けます。
サイドボード後は相手を妨害しつつ、こちらが先に殴り切ることを意識しましょう。《呪文滑り》には注意。」
■バーン
・in
1《呪文貫き》
1《感電破》
1《アーティファクトの魂込め》
1《刻まれた勇者》
・out
4《信号の邪魔者》
・想定される相手のサイドボード
《粉々》《灼熱の血》《石のような静寂》《摩耗/損耗》《跳ね返す掌》
「《きらきらするすべて》の登場でメインは特に有利。何につけても勝ちます。
相手がやられて一番嫌なのがダメージレースなのでそれを意識してプレイしましょう。守るより攻めるほうが良いことも多いです。
《ジンジャーブルート》は食物であることを覚えておくと役に立ちます」
■トロン
・in
1《摩耗/損耗》
1《沈黙》
2《思考囲い》
1《呪文貫き》
1《古えの遺恨》
1《アーティファクトの魂込め》
・out
1《鋼の監視者》
1《湖に潜む者、エムリー》
2《刻まれた勇者》
1《メムナイト》
1《電結の荒廃者》
1《感電破》
・想定される相手のサイドボード
《四肢切断》《自然の要求》
「1ターン差のゲームになりやすい。兎にも角にも相手のライフを意識しましょう」
■ウルザ・フード
・in
1《真髄の針》
2《思考囲い》
1《呪文貫き》
1《摩耗/損耗》
1《古えの遺恨》
・out
2《刻まれた勇者》
2《メムナイト》
1《信号の邪魔者》
1《溶接の壺》
・想定される相手のサイドボード
《暗殺者の戦利品》《致命的な一押し》
「長引くと《最高工匠卿、ウルザ》や《飛行機械の鋳造所》コンボ、《王冠泥棒、オーコ》率いる大量の鹿に負けます。速度勝負です。まだあまり当たれていなくて練習不足なので、このマッチのゲームプランは自信ないです」
【ゲームプランごとのサイドボーディング】2. 《刻まれた勇者》で勝利
このカテゴリの相手はプロテクション(全色)を持つ《刻まれた勇者》に触れるのが難しいデッキタイプ。対処手段を《思考囲い》で落としたり、《感電破》で動きを妨害しつつ《刻まれた勇者》で詰みに持っていくことを意識してみてください。
■グリクシス・死の影
・in
1《刻まれた勇者》
2《思考囲い》
1《呪文貫き》
1《アーティファクトの魂込め》
・out
1《鋼の監視者》
2《きらきらするすべて》
2《メムナイト》
・想定される相手のサイドボード
《コラガンの命令》《仕組まれた爆薬》《疫病を仕組むもの》
「《刻まれた勇者》が効果的なマッチですが、大振りなアクションは通りにくいのと手札破壊で《刻まれた勇者》を落とされたりするので基本は小さいクリーチャーでコツコツライフを削りましょう。他に意識するべきは《頑固な否認》をケアした《頭蓋囲い》のプレイ。
なお、《ティムールの激闘》による致死量ダメージは仕方ないので割り切りってください。昔のモダンを知っている人は《欠片の双子》デッキと戦うような感じで闘いましょう」
■人間
・in
1《刻まれた勇者》
1《感電破》
1《ギラプールの霊気格子》
1《実験の狂乱》先手
1《思考囲い》後手
・out
1《溶接の壺》
1《メムナイト》
1《信号の邪魔者》
1《きらきらするすべて》
・想定される相手のサイドボード
《秋の騎士》《溜め込み屋のアウフ》《疫病を仕組むもの》《拘留代理人》《四肢切断》
「《刻まれた勇者》にはほぼ触れられません。
サイド後は《溜め込み屋のアウフ》のために除去を温存してプレイするのが大事です。」
【ゲームプランごとのサイドボーディング】3. 長期戦を耐え忍ぶ
ミッドレンジ~コントロール系統に属する、除去やカウンターが大量に入ったデッキタイプへのゲームプラン。
《刻まれた勇者》の対処手段も用意されてしまっているので、特定のカードに頼らずにどっしり長期戦に備えましょう。
■青白コントロール
・in
2《思考囲い》
1《刻まれた勇者》
1《呪文貫き》
1《摩耗/損耗》
1《ギラプールの霊気格子》
1《アーティファクトの魂込め》
1《真髄の針》
1《実験の狂乱》
・out
4《電結の荒廃者》
2《羽ばたき飛行機械》
2《信号の邪魔者》
1《きらきらするすべて》
・想定される相手のサイドボード
《石のような静寂》《機を見た援軍》《黎明をもたらす者ライラ》
「ポイントは相手の《廃墟の地》をいかにスカらせるか。
《墨蛾の生息地》《ちらつき蛾の生息地》を対象に《廃墟の地》を使ってくれたら、クリーチャー化して《感電破》。これにより相手は《廃墟の地》でサーチするはずだった土地を失います。
こちらもカード2枚を失いますが、持ってこれる基本土地は2枚しかないので追加の《廃墟の地》や《流刑への道》で結局探してくることになるうえ、必要なマナ数はこちらの方が圧倒的に少ないです。コントロール・デッキの土地を奪いつつ3マナ分のアクションをさせたことになり、以後の展開で有利をとれます。基本のテクニックです。また、全体除去以外では対処され辛いため、うっかり通った《刻まれた勇者》だけでコツコツ殴りきるパターンも結構あります」
■ジャンド
・in
1《刻まれた勇者》
1《実験の狂乱》
1《感電破》
2《思考囲い》
・out
1《鋼の監視者》
2《信号の邪魔者》
2《メムナイト》
・想定される相手のサイドボード
《疫病を仕組むもの》《溜め込み屋のアウフ》《大爆発の魔道士》
「ひたすら除去を撃たれるので噛み合いによる部分が大きいことは否めません。
オーラは使い捨て感覚で使ってしまってOKです」
【ゲームプランごとのサイドボーディング】4. その他
その他に分類される相手は、ゲームの焦点が通常のゲームプランとあまりに違うデッキタイプ。基本的に非常に不利なデッキですので、勝つためには特殊なゲームプランが求められます。
■ドレッジ
・in
2《安らかなる眠り》
1《呪文貫き》
1《刻まれた勇者》
1《アーティファクトの魂込め》
・out
4《信号の邪魔者》
1《メムナイト》
・想定される相手のサイドボード
《古えの遺恨》《突然の衰微》《暗殺者の戦利品》《暗黒破》《自然の要求》
「勝ち筋は《刻まれた勇者》に《頭蓋囲い》か、《ジンジャーブルート》に《きらきらするすべて》程度。
サイド後はこれらか《安らかなる眠り》が来ない限りマリガンしましょう。中途半端に戦える手札をキープしたところで、ドレッジ相手には意味がありません」
以上、りゅうじ道場・親和編でした。
モダン環境屈指の速度を誇る親和デッキ。使いこなすのは難しいですが、少しでも助けになれば幸いです。
デッキごとのゲームプランを理解して、練習に臨みましょう。