By Riku Imaizumi
りゅうじ道場へようこそ! ここではマジック:ザ・ギャザリングの腕を磨きたい人に向け、幅広くプレイに関する情報を発信していきます。
指南をしてくださるのは、BIG MAGICが誇るゴールドレベル・プレイヤーの村栄 龍司(むらえ りゅうじ)師範!
プロツアーでの10位入賞や、MOCS (Magic Online Championship Series) の参戦経験など、華々しい成績を記録しています。
今回の記事はドラフトのコツについて。
MTGアリーナのリリースに伴い、カードを集めるためにドラフトをプレイする機会が増えました。しかし、ふだん構築環境しかプレイしない人や、アリーナからマジックを始めた人にとって、ドラフトの基礎はわかりにくいと思います。
ドラフトの基礎中の基礎を理由付きで解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
記事の後半では、実際にりゅうじ師範が日本選手権2019で組み上げたサンプルデッキも紹介しています。
ドラフトで勝てない理由は、デッキの基本形ができていないから
ドラフトでさっぱり勝てないという方は、デッキの基本的な形が作れていない可能性が高いです。
例を挙げてみましょう。『基本セット2020』のリミテッド環境の凶悪レアカード、《凶暴な見張り、ガーゴス》を思い出してください。
強力なので、初手に来たらピックしますよね。
でも、(あり得ないことですが)《凶暴な見張り、ガーゴス》23枚と《森》17枚のデッキを組んでアリーナのランク戦を戦ったら勝てると思いますか?
おそらく、大敗を喫することになるでしょう。プレイする前に、あるいはプレイしても相手のクリーチャーにライフを削り切られてしまうと思います。
「例が極端すぎて参考にならない」? いえ、実は意外と似たようなケースは頻発します。
《北方の精霊》。強いですよね。《吠える巨人》。強力。《血に染まった祭壇》。これで負けたという人も多いでしょう。
でも、これらばかりデッキに入れたとしても、対戦相手の《ゴブリンの鳥掴み》のような軽いクリーチャーに先にライフを削り切られてしまいます。つまり、《凶暴な見張り、ガーゴス》23枚+《森》17枚のデッキと全く同じ問題を抱えているのです。
「強いカードが手札にいっぱいあるのに、プレイすらできずに負けてしまった」という経験を持つ人は、《凶暴な見張り、ガーゴス》23枚+《森》17枚のデッキと事実上同様のデッキを組んだ経験をしているのです。
一方で、《山》と《ゴブリンの鳥掴み》しか入っていないデッキももちろん強いはずがありません。
重要なのはデッキの基本的な形。これさえ守れば、何もできずに敗北してしまうことは大きく減るでしょう。
ドラフトのコツ1:ドラフト・デッキの基本的な形を覚えよう。
では、もう《凶暴な見張り、ガーゴス》23枚+《森》17枚のデッキを組まずに済むよう、ドラフト・デッキの基本的な形を覚えていきましょう。
呪文23枚+土地17枚。そのうち、クリーチャー呪文は15~17枚程度です。
上記はあくまで基本形です。場合によって理想とするデッキの構造は異なります。
ただし、ドラフトに慣れないうちはこの枚数を目安に組んでもらえれば大きく間違うことはないでしょう。
土地が17枚である理由
40枚中の17枚は土地にするのが良いとされています。比率にして42.5パーセント。これはアリーナでも推奨されている最もオーソドックスな枚数です。
「スタンダードで使っている赤単の土地比率は33パーセント(60枚中20枚)だけど?」と思うかもしれませんが、スタンダードで使っているデッキとリミテッド環境で使うデッキの平均的なマナコストを比べると理由がわかります。
赤単のように軽いカードばかりで構成できるスタンダードと異なり、リミテッドではどうしても5マナ以上の重いカードを複数使用する必要があるのです。
また、土地はゲーム中の活躍の印象が非常に薄く、つい「1枚くらい減らしても......」と思ってしまいがちなカードですが、はっきりとした自信がないうちは土地の枚数を変更するのはやめておきましょう。
土地を入れるのは「呪文を唱えるため」。呪文を唱えられないままでは、《凶暴な見張り、ガーゴス》23枚+《森》17枚のデッキと同様の負け方をしてしまいます。
重い呪文を安定して唱えられるよう、土地17枚の構成をしっかりと守ることがドラフトで勝つための第一歩です。
なお、ダブルシンボル(《ケルドの略奪者》のように、同じ色マナをふたつ必要とするもの)やトリプルシンボル(《次元の浄化》のように同じ色マナを三つ必要とするもの)のカードを使用する場合、その色を生み出せる土地を多めに構成しておくとデッキの事故率が下がります。
特にシンボルの数に偏りがない場合は、軽いカードが多い方の色を9枚、そうでない方の色を8枚にしておくと良いでしょう。
クリーチャーが15~17枚である(ソーサリーやインスタントより多い)理由
それは、クリーチャーのほうがゲームにおける貢献度が高いためです。
スタンダードのエスパー・コントロールのようなデッキを組めれば話は別なのですが、そのようなコントロールデッキに必要なのはクリーチャーから身を守る除去呪文。
基本的にリミテッド環境では除去呪文の絶対数が少ないので、スタンダードのように除去呪文でデッキを固めることはできません。
例えば、『基本セット2020』の除去呪文は全280枚中30枚程度です。ここからさらに色を絞ったりマナ域を厳選していくことを考えると、非クリーチャー呪文中心のコントロール系デッキを組むことは基本的にできないと思ってもらったほうが良いでしょう。
一方、クリーチャー呪文はそれぞれの色に20~30枚以上、つまり280枚中100枚を超える数があるので、必然的にピックの機会もプレイの機会も増えることになります。
除去呪文がない以上、相手がクリーチャーをたくさん使ってくるのなら、こっちもクリーチャーで立ち向かわなければなりません。
また、《立腹》のようなクリーチャーを強化する呪文を使うことを考えても、ある程度の枚数を確保する必要がありますね。
ドラフトの主役はクリーチャーです。ピックの際、同じくらいの強さのカードで迷ったら、慣れないうちはクリーチャーを優先して確保しておくと良いでしょう。
ちなみに、除去呪文以外の非クリーチャー呪文を中心にデッキを組んでしまったら、対戦相手のクリーチャーに抵抗できなくなってすぐにライフがなくなってしまいます。
そのような負けを減らしていくことも、ドラフトの勝利に繋がります。
マナ域ごとの枚数について
クリーチャー15~17枚の内訳としておすすめするのは以下の通りです。
1マナのクリーチャーが0枚なのは、カードの質で劣る場合が多いからです。
例えば《焦がし吐き》は2マナのあらゆるクリーチャーに打ち負けてしまうので、相手がブロッカーを並べた瞬間に何もできないカードになってしまう可能性が高いです。
一方、2マナには《大都市のスプライト》や《群れる猛犬》のように後半も役に立つカードも多いので、そのようなクリーチャーを4枚以上集められれば序盤から終盤まで活躍してくれるでしょう。3マナ域のクリーチャーも同様です。
そのほかのマナ域、特に5マナ以上のクリーチャーにはゲームを決める力を持ったカードも珍しくありません。
ただし、入れすぎるとプレイできないまま負ける可能性が高くなるので、上記マナ域別内訳は守るようにしましょう。
注意点! 1マナのクリーチャーは採用してはいけないのか?
上記では1マナのクリーチャーを0枚としていますが、必ずしもそうしなければいけないわけではありません。
例えば、『基本セット2020』環境を見てみても、《フェアリーの悪党》や《療養所の骸骨》のように、1マナでも優秀なクリーチャーは存在します。
ただし、《焦がし吐き》や《林間の癒し手》《魂癒し人》のように、単体で役に立たないクリーチャーが多いのも事実です。これらのクリーチャーもシナジー(相互作用)を見込めるデッキでは採用することもできるのですが、そうした細かい特性を把握するまでは、なるべく手を出さないようにするのが無難でしょう。
ドラフトのコツ2:色は2色までに抑えよう
まれに、以下のようなデッキを組んでいる方を見かけます。
2マナ域:《死体騎士》《ムーアランドの審問官》《牙の魔術師》
3マナ域:《血に飢えた曲芸師》《網投げ蜘蛛》《生命力の天使》
5マナ域:《シルバーバックの巫師》2枚
6マナ域:《次元の浄化》
そんな方に土地の組み方を聞いてみると、《平地》5枚+《森》5枚+《沼》6枚+《ジャングルのうろ穴》という構成だったりします。
このようなデッキの組み方では、カードを望むタイミングでプレイできなくて負けてしまうことが頻発します。
2~3マナ域のカードは初手をキープする時の基準になることが多いです。つまり、それらをプレイするための土地も初手に必要になってきます。
上記のデッキでは、2マナ域のプレイに必要なのは白マナと黒マナです。しかし、《平地》は5枚、《沼》は6枚しかデッキに入っていません。
初手に必要な白マナと黒マナですが、この枚数ではなかなか揃いません。
デッキの枚数は基本的に40枚です。その中の《平地》5枚を引く確率は、単純計算で8分の1ということになります。
しかし、初手は8枚もありません。7枚です。
また、《沼》は6枚(に加えて《ジャングルのうろ穴》も)入っており、黒マナが占める割合は7分の1を超えていますが、それでも《平地》や低マナのクリーチャーと同時に引かなければいけないことを考えると、少し心許ない数字ですね。
さらに、初手を白か黒のクリーチャーでキープすることを考えると、《森》は初手にあっても嬉しくなく、マリガンでデッキに帰っていく可能性も高いです。
そうすると、5マナ域とはいえ緑マナが2つ必要な《シルバーバックの巫師》も唱えづらいことがわかります。また、《平地》5枚しか白マナ源がないのであれば、白マナを3つ必要とする《次元の浄化》のプレイも少々難しいでしょう。
土地構成の項目でも軽くお伝えしましたが、マナシンボルをたくさん必要とするカードを使う場合、その色の土地を多めに採用しておくのがおすすめです。
《次元の浄化》や《茨の騎兵》くらいシンボルの強いカードを使うなら、なるべく10枚分、しっかり確保したいところですね。
一方で、基本形である「土地17枚かつ2色デッキ」を守ると、基本地形が8枚+9枚で2種類入ることになります。(マナシンボルが強いカードを特に使わない前提)
8枚を超えるとデッキ40枚中の5分の1を占める枚数になるので、十分に心強い数字と言えるでしょう。特殊地形があるとさらに安定感が増します。
ちゃんと呪文を唱えられなければ負けてしまうことは先ほどからお話ししている通りです。慣れないうちは、色は2色に抑えましょう。
お手本に、りゅうじ師範が組んだデッキを公開!
ここまでご説明してきたことを踏まえ、実際に参考となるデッキリストを見てみましょう。
こちらは、2019年9月7日~8日に実施された日本選手権2019にて、りゅうじ師範が実際に組み上げたドラフト・デッキです。
写真には写っていませんが、土地は山9枚、島7枚です。1-1の《炎の大口、ドラクセス》から基本に沿ってカードをピックできたと思います。
《無法の猛竜》はタフネス2が多いデッキに全くあっていなかったので毎回抜いてました(りゅうじ)
基本構成は、クリーチャー15枚、非クリーチャー呪文8枚、土地17枚。クリーチャーのマナ域ごとの枚数も、記事で説明している内容とほぼ同じ数に収まっています。(3マナ域のみ1枚少ない)
カードのマナシンボルを見ていくと、赤色が比較的強めです。《燃えさし運び》、《ケルドの略奪者》、《チャンドラの憤慨》、《炎の精霊》×2、《炎の大口、ドラクセス》。
それに対し、青のダブルシンボルは《大気の精霊》1枚のみ。そのため、赤マナを出せる山のほうが島の数より多くなっています。
このように、基本的な構成はこの記事でお話ししている通りです。実際にりゅうじ師範は、このデッキを使用したラウンドで全勝という最高の成績を納めました。
日本選手権はプロ・プレイヤーも多数集まる規模の大きな大会です。その中で全勝を納めるあたり、基本構成をしっかる守ることが重要ということがわかりますね。(もちろん師範の腕前もありますが)
なお、このデッキが強い理由は基本構成を守っているからというだけではないのですが......それについては少し細かいお話になるので、別の記事でお話しできたらと思います。
以上、りゅうじ道場・ドラフト初級編でした。
重要なのは2点です。
・呪文23枚+土地17枚の構成を守る。
・デッキの色は2色に抑える。
これはあくまでドラフトの基礎です。ドラフトするブースターパックによっては重要度が少し下がる場合もありますが、ほとんどの場合は通用する「ドラフトのコツ」であると言えるでしょう。
ドラフトで勝てない、けれども理由もわからないという場合、上記を守ってみてください。ある程度勝率は変わると思います。
今回の記事はあくまで基礎の基礎ですが、組み方がわからない人の参考になればいいなと思います。
まずは奇をてらわず基本に忠実に遊んでみてください(りゅうじ)