0.はじめに
お久しぶりです。あるいは初めまして。
BIGsの松本友樹です。
今回は『基本セット2021』ドラフトの攻略記事を書きました。
「今回の基本セットドラフト、あんまり勝てないな~」という方へのヒントになればと思って作成しましたので、ぜひ読んでみてください。
本記事は以下の通りに構成されています。
1.『基本セット2021』環境ってどんな感じ?
2.各アーキタイプ紹介
3.各アーキタイプ解説
4.おわりに
毎度のことなのですが、今回も全体を通して長々と書いてしまいました。
手っ取り早くふんわりと理解したい方は
・1.『基本セット2021』環境ってどんな感じ?
・2.各アーキタイプ紹介
この2つの項目だけ見て頂ければと思います。
それでは、『基本セット2021』ドラフト環境についてお話していきます。
1.『基本セット2021』環境ってどんな感じ?
スタンダードにメタゲームがあるように、ブースタードラフトにおいてもエキスパンション毎にメタゲームが存在します。
例えば『ドミナリア』は低速環境と言われ、《予言》をはじめとしたアドバンテージを得られるカードの価値が高く、序盤から攻め立てるカードの価値が低い環境でした。
対してこの『基本セット2021』は高速環境であると言えます。
守りより攻めが強い環境で、重い除去を唱えるより軽量クリーチャーで攻め立てる方がより高い勝率を得られます。
特に重い除去を僅か2マナでかわしてしまう《抵抗の妙技》や、《賽銭ガニ》のような突破困難なブロッカーをやすやすと乗り越える《確実な一撃》といった優秀なコンバット・トリックが存在しているため、相手の攻撃を受けきることが非常に難しくなっています。
総じてコストの軽いカードの価値が高く、コストの重いカードの価値が低い環境と言えるでしょう。
また、単色推奨だった『エルドレインの王権』や3色が基本だった『タルキール覇王譚』とも異なり、2色を軸にしたベーシックな環境です。
「基本セットらしい」ともいわれる、2色ビートダウンが強い環境がこの『基本セット2021』です。
さて、それでは実際にどんなアーキタイプがあるのかを次項目で紹介していきます。
2.各アーキタイプ紹介
今回、アーキタイプは2色の組み合わせ10個に加え、「祭殿」を用いた特殊な多色が存在するため全11種類存在しています。
この11種類について、簡単な説明に加えてデッキの作りやすさ・強さを3段階で記載しています。
この項目ではざっくりとした紹介だけに留めています。
各アーキタイプ解説の項目で、それぞれサンプルデッキやピック方針、戦略などについて解説していますので、興味がある方はそちらもご覧ください。
作りやすさ:主にレアリティの要求度。コモンだけでも組めるなら☆3、特定のレア無くして完成しないなら☆1といった形。
強さ:アーキタイプ毎の強さ。作りやすさを無視して完成形が作れた場合にどのくらい強いか。☆3つなら『基本セット2021』最強クラス、☆2は普通、☆1は弱め。
デッキの強さをイメージする参考にしてみてください。
白青
作りやすさ ☆☆
強さ ☆☆
白青のテーマは「飛行」。
飛行クリーチャーで攻撃しつつ《霜のブレス》で時間を稼いだり、《高尚な否定》で強力なクリーチャーを打ち消したりでダメージレースを制するアーキタイプです。
全体的にサイズは控えめなので、自分よりも速い上に《ショック》等で妨害してくる白赤ビートダウンが苦手。
白黒
作りやすさ ☆
強さ ☆☆
白黒のテーマは「ライフ回復」。
《活力回復》などでライフを回復することで、《グリフィンの高楼》や《天界の語り部》のように厳しい条件を持つ代わりに強力な能力を持つカードで勝利するアーキタイプです。
アーキタイプの中核をなすカードがすべてアンコモン以上で、かつ複数枚デッキに入っていないと成立しないアーキタイプ。
その為めったに作ることはできません。
その分中核以外は10手目でも取れるような専用カードばかりなので、流れにさえ乗ってしまえば完成形までまっしぐらです。
白緑
作りやすさ ☆
強さ ☆☆
白緑のテーマは「+1/+1カウンター」。
《議事会の導師》が中核。+1/+1カウンター関連のカードは《誇り猫》《バスリの侍祭》など、標準~それ以上のスペックを持つカードが豊富で、2ターン目に《議事会の導師》をプレイできたときの爆発力は圧倒的。
ただし相手に干渉するカードがどうしても重くなってしまいがちで、青白や青赤がちょっと苦手。
白赤
作りやすさ ☆☆☆
強さ ☆☆☆
白赤のテーマは特になし。強いて言えば低マナのクリーチャーで殴る。
殴り方の違いにより2つのパターンがあります。
一つは《堅牢な盾仲間》《選定された聖歌員》《協約のペガサス》あたりを《叙爵》や《噛み傷への興奮》で強化して殴るオーラ型。
もう一つが《ショック》《焦熱の竜火》《抵抗の妙技》《確実な一撃》という低コストのスペルで場の優位を抑えつつ殴り続けるスペル型。
どちらも強いので好みや流れで選びましょう。
ただし中途半端に混ざると失敗しやすいので注意が必要。
同じ色・同じ戦略の中に異なるタイプがあることで、卓内に複数の白赤が出来ても共存しやすいのが魅力です。
青赤
作りやすさ ☆☆
強さ ☆☆☆
青赤のテーマは「果敢》。
《ショック》《焦熱の竜火》《突破》《選択》《高尚な否定》《大慌ての棚卸し》。今回の呪文は強い!
その上果敢を持っているクリーチャー達も過去最高クラスのものばかりで、名実共に環境最強カラーです。
果敢クリーチャーとそのためのスペル、どちらも沢山用意されているため、卓内の許容人数も割と多めなのも〇
半面、皆が入りやす過ぎて許容人数をオーバーして共倒れにもなり易いのが弱点と言えます。
青黒
作りやすさ ☆☆☆
強さ ☆
青黒のテーマは「墓地活用」。
《憂鬱蒔き》や《有刺メガロドン》を《再命》で5ターン目に出そう!
除去やカウンターが強い環境なので、ただ重量級クリーチャーを早めに出すくらいでは勝てないところに注意が必要です。
特定のカードが必要なので卓内の許容人数は少ないものの、逆に専用カードが流れてくれば空いていることが一目瞭然でわかります。
コモンだけでもきれいに組めるためデッキとしては綺麗な見た目になり易いのですが、実際のところ強力なレアが無いとパワーは劣ります。
またコンボチックなデッキになるため、安定性に若干の難あり。
青緑
作りやすさ ☆
強さ ☆
青緑のテーマは「2ドロー」。
そのターン中に2枚目のカードを引いたときに誘発する効果を持っています。
色の組み合わせの問題で、相手に干渉するカードを4マナの《捕獲球》と《狩人の刃》しか持たないのが最大の問題点。
展開しながらカードを引ける《ラノワールの幻想家》など強力なクリーチャーを持ってはいますが、基本的にただ強カードな為取り合いになってしまいます。
総じて青緑になる動機が薄く、なって成功する事もあまりない不遇色。
《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》などのレアから行きましょう。
黒赤
作りやすさ ☆
強さ ☆☆
黒赤のテーマは「生け贄」。
自分のクリーチャーを生け贄に捧げる事で効果を発揮するカードを多数持ちます。
しかし生け贄に捧げたいクリーチャーが殆どいないのがこのアーキタイプの最大の問題。
《死花のサリッド》が唯一1枚で2枚分の働きをしてくれますが、死亡する前がそもそも強いのでわざわざ生け贄に捧げたくないのが問題。
生け贄に捧げることのできるカード自体は山ほどあるのですが・・・。
ただし、このカラーは除去の強さはピカ一。
赤と黒の優秀な除去を自由に使うことができるので、生け贄シナジーにこだわることなく、コストパフォーマンスが高いクリーチャーと除去を詰め込んだノンシナジーデッキが一番強力だと考えています。
黒緑
作りやすさ ☆
強さ ☆
黒緑のテーマは「自分のターンの死亡参照」。
クリーチャーが死亡した場合、自分の終了ステップに効果を発揮します。
このアーキタイプも黒赤と同じように、シナジーを意識しない強いカードの詰め合わせ構造になり易い傾向にあります。
緑の強力なクリーチャーを黒の除去でバックアップする形が理想ですね。
ただし、重いクリーチャーが相対的に弱めな環境という事もあり、やりたいことが環境にかみ合っていないところが一番の問題。
やるなら強力なレアを用意してから目指したいですね。
赤緑
作りやすさ ☆
強さ ☆☆
赤緑のテーマは「パワー4」。
《うたた寝するティラノドン》《オナッケのオーガ》など、見た目にもわかりやすい専用カード多数。
・・・と思いきや、実は大体のカードが他のアーキタイプでも強く取り合いになります。
《ショック》《焦熱の竜火》が欲しいのも変わらず、ほぼすべてのパーツが他アーキと被ってしまうのが難点。
ただし取り合いになるだけあって、カードは優秀なものばかり。
上手い事ポジショニングが成功すれば強力なものができやすいのが魅力です。
祭殿
作りやすさ ☆
強さ ☆☆
各色アンコモンに用意されている祭殿を軸に据えたアーキタイプ。
1枚1枚は正直弱いと言わざるを得ませんが、2枚並んだ状態からそこそこ強くなり、3枚揃ったあたりからもうゲームじゃなくなります。
ピックにおいて、何より重要なのが《石の牙の聖域》。
他の祭殿は無くても問題ありませんが、これだけはマスト。
祭殿デッキは《万物の聖域》からではなく《石の牙の聖域》から向かうことにしましょう。
祭殿カードは基本的に単品では弱く、パックから出さえすれば流れてきて手に入りやすいです。
《石の牙の聖域》だけは1枚で完結しているので中々手に入りませんが、ここからスタートしたのなら、ドラフトで使用される24パック全てを使ってデッキを構築できます。
そういう意味では、実は流れに乗ってしまえば完成しやすいデッキと言えるでしょう。
3.各アーキタイプ解説
ドラフトにおいて重要なのはピック段階で完成形を意識しながらピックすることです。
低コストの除去はどのくらい欲しいのか、重いカードはどのくらい入るのか。
完成形のイメージを持ってピックを行えると強いデッキを作りやすくなるはずです。
この項目ではその完成形をイメージする手助けになるよう、参考デッキ画像と簡単な解説を記載しています。
宜しければ参考にしてみて下さい。
白青
【概要】
白青で大事なのは一貫性を持ってライフを攻めることです。
「飛行クリーチャーで攻撃する」というのはあくまでもその一手段であり、例えば《夜明けの突撃獣》のような攻撃的なクリーチャーも積極的にピックする必要があります。
逆に《ルーンの壁》《賽銭ガニ》といった壁の働きしかできないカードは積極的にピックしたくはありません。
勿論全く入らないという事も無いのですが、ピック中に《ルーンの壁》《賽銭ガニ》《高山の番犬》の択が発生したならば、攻撃したり相打ちしたりできる《高山の番犬》を優先するくらい、と考えて頂ければ問題ないかと思います。
従来のリミテッドにおける白青飛行デッキの基本は「地上で止めて飛行で殴る」というものでした。
一方『基本セット2021』における白青飛行デッキの目指すところは、「地上と飛行で殴って呪文でずらす」です。
【デッキ構築】
デッキの構造で目指すのは「白を基軸に」「青の優秀なスペル/飛行クリーチャーを添える」形です。
白のクリーチャーは全色を見渡してもかなり優秀で、軸に据えるのに全く文句なしの品質です。
そこに万能にして最強のカウンター《高尚な否定》と全コモン中最強のクリーチャー《うろつく光霊》を加え、ゲームの決め手となる《霜のブレス》を添える形が理想形。
【ピック方針】
ピックにおいては白いカードを中心に取っている中で、《高尚な否定》や《天球の見張り》が流れてきたのを見て青にも参入するような流れが理想的です。
逆に青メインから白に入るパターンだと、デッキが呪文に寄りがちになり易いので注意が必要です。
例えば《謎変化》は《高尚な否定》とも相性が良く、強力な飛行クロックです。
しかし呪文が引けず攻撃できなかったり、逆に《謎変化》を引いていない時に呪文だらけになって打点を稼げなかったりと、デッキとしてブレる原因になります。
そのパターンでも一概に悪いとは言えませんが、クリーチャーの数は最低限13~4枚は確保するようにしたいところです。
優先度が高いコモン
《うろつく光霊》《素早い反応》《高尚な否定》
優先度が高いアンコモン
《エイヴンの鳥群使い》《天球の見張り》《歴戦の神聖刃》
枚数や状況にもよりますが、
《エイヴンの鳥群使い》>《天球の見張り》>《歴戦の神聖刃》>《うろつく光霊》>《素早い反応》>《高尚な否定》
ぐらいの感覚でとらえています。
《信仰の足枷》《潮掬い》は正直評価が定まっていません。
《うろつく光霊》と同時にあった場合どちらを取るか難しい・・・ぐらいの感覚です。
白黒
白黒は非常に難しいアーキタイプです。
ライフゲインがアーキタイプのテーマなのですが、ライフゲイン戦略の中核をなすのはほぼ白の部分のみ。
その為、大きく分けて2パターンの白黒が存在します。
まず一つが白単軸の「白黒ライフゲイン」
【概要】
基本的にはビートダウンとして振る舞いますが、最終的にはコンボデッキとして振る舞う事を目指します。
ライフを得る手段は《活力回復》「絆魂で殴る」のどちらかですし、ライフを得ることはダメージレースを優位に傾けることにもつながるため、そこそこ殴ります。
ただし基本サイズが小さかったり半端に回復するだけのカードがあったりと、それだけで勝てる構成ではありません。
たまにそのまま殴り勝つこともありますが、大体はそうならないのでアンコモン以上のアーキタイプカード、《天界の語り部》か《グリフィンの高楼》を動かすことを目指します。
【デッキ構築】
《天界の語り部》と《グリフィンの高楼》が最も重要。
これらを生かす為に、絆魂能力を持ったクリーチャーと《活力回復》が必要不可欠です。
・・・ちなみに《活力回復》はテンポを失ってライフを得るという意味不明なカード(テンポを失うことは多くの場合ライフを失うことを意味する)なのですが、このデッキにおいては重要な役割を持っています。
絆魂を持ったクリーチャーが場にいると、相手は攻撃し辛くなります。
下手に殴って殴り返されたら損ですからね。
そこで盤面が膠着するのですが、膠着すると絆魂能力を持ったクリーチャーも攻撃できないため、ライフを得ることができなくなります。
そうなると《天界の語り部》と《グリフィンの高楼》も機能しなくなってしまいます。
そこで活躍するのが、『基本セット2021』において数少ない無条件でライフを回復できる《活力回復》というわけです。
このカードを活かしてライフを高めるためにも、場を膠着させる必要があります。
場さえ膠着してしまえばライフをどんどん伸ばしてグリフィンや天使を生み続けたりして勝てますからね。
その為に重要なのはとにかく場をクリーチャーで埋め尽くすこと。
出来るだけタフネスが高いクリーチャーか場持ちが良いものが望ましく、相手の飛行を止める為にも自軍にも飛行クリーチャーが不可欠です。
特に《協約のペガサス》は他のアーキタイプで弱いわりに白黒ライフゲインにおいては最上級のクリーチャーです。
壁役を務めてくれる上に、誰もが見向きもせず1周間違いなしの《約束の光》との組み合わせで簡単にゲームに勝たせてくれますから。
それから除去。
この場合、除去の質は問いません。
強ければ強いほどいいのは間違いありませんが、とにかく場を突破し得る強力なクリーチャー(あるいはエンチャントやプレインズウォーカー)を対処できれば何でもいいのです。
理想は回復がデッキと噛み合う《信仰の足枷》ですが、大体の場合は安くて集めやすい《現場保存》で代用できます。
《軍団の裁き》がちょっと入っても大丈夫。
最後にいかにもアーキタイプカードですって顔をしている《血なまぐさい耽溺》について。
このカードは要不要がはっきりしていて、デッキ内のフィニッシャーが《天界の語り部》なら1枚必須です。
《グリフィンの高楼》が2枚くらいとれていて、こっちで勝つつもりなら不要です(サイドボードには欲しいですが)。
【ピック方針】
基本的に、《天界の語り部》をピックしたところからこのデッキはスタートします。
正直《天界の語り部》ぐらいのカードが無いと全体的に高いレアリティを要求するこのアーキタイプに参入するメリットが薄いのです。
その代わり、《天界の語り部》を1-1付近でピック出来れば大体一直線に向かうことができます。
白黒専用カードが沢山あるので、初手付近・・・1~3手目くらいでは《バスリの侍祭》のような競合する強カードを優先的にピックし、一周した《活力回復》や《約束の光》でデッキを強化していきましょう。
そして2つ目が「白黒除去」
こちらは主に黒の除去カードをピックしている中、《バスリの侍祭》のようなただ強カードをとりあえずピックするか《耽溺する貴族階級》が流れてきたときになり易いです。
黒の除去・白のクリーチャーは非常に人気が高く、どちらも安くて揃うという事はあまりない為、こちらも非常にレアなアーキタイプです。
これになったら強いカードを順番にピックすれば強いデッキになるためあまり注意すべき点もありませんね。
強いて言えば《天界の語り部》のような強烈なカードから入らない分、ライフゲインに寄せすぎると逆にデッキが弱くなりがちなところだけ注意が必要です。
除去沢山のミッドレンジとして振る舞いつつ、たまにライフゲインシナジーが機能すればラッキーくらいの心構えでいるのが良さそうですね。
白緑
【概要】
主に+1/+1カウンターを用いて自軍を強化し、《誇り猫》でトランプルを付けて押し切るか大きくなったクリーチャーを相手が受け止めきれずに勝つ・・・といったゲーム展開を目指します。
白緑で大事なのは何よりも《議事会の導師》です。
ほとんどの場合、このカードがあるから白緑になります。
+1/+1カウンターを乗せたり増やしたりするカードはアンコモン以上のものばかりなので、実はこのデッキもレア寄りです。
クリーチャーを育てるという行動は、実はこの『基本セット2021』環境においては弱い行動です。
・低コストの除去が優秀なのでシステムクリーチャーや育成の種となるクリーチャーが対処されやすい
・4マナ以降から確定除去もバンバン飛んでくる
・《うろつく光霊》でバウンスされる
・クリーチャーが育っても《剛力化》《確実な一撃》《錬金術師の贈り物》のせいでブロックし辛い
と苦しい点が目立ちます。
それを補うためには、それに見合うリターンか確定除去を間に合わさせない速さが必要です。
つまり《議事会の導師》。
強い白緑デッキと《議事会の導師》の存在は強く結びつくのです。
【デッキ構築】
2ターン目に《議事会の導師》を出して生きて帰ってくるなら大体勝ち・・・と言えるデッキを目指す必要があります。
+1/+1カウンター関連のカードはどれもスペックが高く、白緑以外でも気軽に使えてしまいます。
白緑は空いているのにカウンターが全然乗らない・・・という事態を避けるため、《トリュフ嗅ぎ》あたりのそこそこコモンも見たら取るくらいの気概でいましょう。
《議事会の導師》からプレイしたらなんでもレアぐらい強いので大丈夫です。
もう一つの問題は、結局のところ《議事会の導師》は多くても2枚程度しかピック出来ないということ。
だからこそ《議事会の導師》が無いときに勝てる構造を目指す必要があります。
コモンのカードだけで戦うと、白緑は他のカラーに一歩劣ります。
その不利を覆すにはアンコモン以上のカードが必要。
具体的には《活性化のうねり》《野生林の災い魔》《鍛え抜かれた古参兵》の3種。
これらが機能するようにデッキを組めれば、《議事会の導師》を引かないパターンでもかなり勝てるはずです。
【ピック方針】
基本的に強カラーの白をピックしている中で《議事会の導師》が流れてきたから緑もつまんで・・・という流れでなることが多めです。
白をピックしている中、緑の強いカードが流れてきたからふんわり緑へ・・・の流れは危険信号。
例えば白緑における《ラノワールの幻想家》はちょっと強いカード止まりですし、《節くれ拳の樫》はたいして噛み合わないし、《打ち壊すブロントドン》も《トリュフ嗅ぎ》より下回ることすらあります。
「ぼんやりした緑」はこの環境で最もやってはいけないものと考えてください。
最悪《議事会の導師》が取れないにしても、白緑をやるなら+1/+1カウンターギミックを駆使して迅速に殴り切れる構成を目指してください。
特に《誇り猫》が重要です。
《活性化のうねり》《野生林の災い魔》あたりと組み合わされば一瞬でゲームを決めてくれます。
優先度が高いコモン
《バスリの侍祭》《狩人の刃》《抵抗の妙技》《誇り猫》
優先度が高いアンコモン
《議事会の導師》《野生林の災い魔》《活性化のうねり》《鍛え抜かれた古参兵》
基本的に《議事会の導師》は神話レアクラスと思って頂いて問題ありません。
《バスリの副官》以外のレアより優先度が高いと考えています。
《野生林の災い魔》>《活性化のうねり》>《バスリの侍祭》>《鍛え抜かれた古参兵》
>《狩人の刃》>《抵抗の妙技》>《誇り猫》
大体こんな感覚です。
《エイヴンの鳥群使い》《信仰の足枷》《歴戦の神聖刃》の3枚はアーキタイプ関係なくただ強いアンコモンで、優先度の順位付けはかなり難しいのですが、《バスリの侍祭》より上で《活性化のうねり》より下くらいかな・・・というのが現状の認識です。
ちなみに一応レアケースとして白緑ライフゲインというアーキタイプもあるのですが・・・まぁ本当にレアケースなので、こちらの説明は省きます。
白赤
白赤にも2パターンのデッキがあります。
1つがオーラをぺたぺた貼って殴る「白赤オーラ」。
この構成は競合しないカードを中心にデッキを作れる、「安くてそこそこ強い白赤」です。
【概要】
1マナからクリーチャーを展開し、エンチャントしたりコンバット・トリックで場をこじ開けたりで、常に相手より早く動いてライフを削り切ることを目指します。
リソースをかなぐり捨ててでも殴ることを優先しているので、一旦受け止められてしまうと非常に脆いという弱点があります。
その点をカバーするためにも、何かしらサブプランを用意した上でデッキを構築する必要があります。
【デッキ構築】
最小限の除去は欲しいですが、最悪無くても何とかなります。
こちらが攻撃している限り相手はブロックせざるを得ないので、コンバット・トリックを使うことで除去と同じ働きを期待できます(ただしエンチャントと合わせてクリーチャー依存カードばかりで事故りやすくなるので、あくまで最悪何とかなるくらいです)。
この戦略のポイントは、《堅牢な盾仲間》に《噛み傷への興奮》がエンチャントできれば環境のほぼすべての除去の範囲外に出られる部分にあります。
先手2ターン目に成立すれば《素早い反応》かアンコモン以上の除去を要求できます。
《協約のペガサス》にエンチャントしても同様。
オーラ戦略は通常。お手軽さと共に多きなリスクを併せ持つのですが、『基本セット2021』環境に限っては比較的ローリスクな戦略と言えます。
とはいえ《素早い反応》がカードプールにあることは事実ですし、そもそも《堅牢な盾仲間》あたりの単体性能はお世辞にもよくありません。
そこで大事なのがサブプランである《破壊的細工》です。
エンチャントそのものは軽い呪文なので、相手のスキを見て一発殴るくらいは難しくありません。
その後に除去られてしまったのなら、ライフを数点削ることができたから十分と割り切りましょう。
無理やりにでもライフを削ることで《破壊的細工》のブロック不可による勝利圏内に一気に近づくことができます。
また《堅牢な盾仲間》のようなオーラのつけ先となるクリーチャーもブロックに回ると意外と厄介。
タフネスが高いクリーチャーが複数並ぶと突破するのは簡単ではないうえに、相打ちするのが役割を終えた1~2マナのクリーチャーでは割にあいません。
その上マナが起きていてコンバット・トリックを構えているように見えるなら、殴ることのできるクリーチャーは非常に限定されます。
そうやって場を止めてゲームを長引かせることで《破壊的細工》を引き入れるターンを稼ぎ、並びに並んだクリーチャー達で殴って勝利しましょう。
尚オーラ呪文やコンバット・トリックに《破壊的細工》と、クリーチャーがいないと何もしない呪文が沢山入ることになるため、結構事故ります。
多少厳しめにマリガンをする必要があることを覚えておいてください。
【ピック方針】
《高山の犬師》をはじめとし、クリーチャーは流れてくるのに除去だけが流れて来ない、そんなときの逃げ道。
《噛み傷への興奮》《叙爵》どちらも非常に安いカードなので、1パック目~2パック目は1周して暇なときに取っておくくらいで良いでしょう。
《堅牢な盾仲間》《協約のペガサス》も同じ感覚で構いません。
3パック目に入っても除去が手に入らなったら諦めて早めに《噛み傷への興奮》《叙爵》《堅牢な盾仲間》《協約のペガサス》をかき集めます。
除去がそこそこ集まったのなら、こちらではなく次に紹介するアーキタイプを目指してください。
もう一つの戦略として「白赤スペル」があります。
オーラが「安くてそこそこ強い白赤」なら、こちらは「高くてとても強い白赤」です。
【概要】
赤の優秀な軽量除去と白の優秀なコンバット・トリックを使い、1:1交換をしながらテンポやサイズアップといった差によってゲームを優勢に運ぶデッキです。
オーラ戦略と異なり単体で弱いカードが入らないため、安定して強いデッキになります。
注意点として、赤い除去と白いコンバット・トリックのどちらも卓内のすべてのデッキが欲しているため、よほどうまく協調できなければ集められないということが挙げられます。
白赤が完全に空いているベストポジションに位置できればあまり考えずに最高のデッキが完成しますが、稀です。
(ちなみにオーラと区別するためにスペルという名前を付けていますが、別にスペルに寄っているわけではありません。)
【デッキ構築】
除去があるならクリーチャーが多少弱くても何とかなりますが、こちらの白赤では《協約のペガサス》《堅牢な盾仲間》といった単体で殴れないクリーチャーは採用しないでおきましょう。
《現場保存》《金屑化》といった重い除去も極力避けて、デッキに1枚までを限度としておきたいところです。
コンバット・トリックも多すぎると手札で腐ったり事故の要因となったりするため、3枚を限度としたいですね。
飛行クリーチャーも重要で《強風の急襲者》あたりが理想的ですが、最悪《ヴリンの翼馬》でもいいので計3枚くらいはデッキに入るように意識しましょう。
【ピック方針】
《ショック》《焦熱の竜火》は大抵のアンコモンより強いカードです。
迷ったらとりあえずこの2枚を優先してもあまり間違いはないはずです。
また、これはどちらにも共通することですが、《高山の犬師》は全色のアンコモンを見渡しても最強と言えるスペックです。
1-1で単色の強力なレアと並んでいた場合は受けの広さを重視して単色のレアをピックしますが、2パック目以降であれば大抵のレアよりも優先されるほどのカードだと考えています。
例えば《一斉噴火》はとても強力なレアですが、恐らく《高山の犬師》を優先してピックします。
見たら取りましょう。
青赤
【概要】
青赤はわかりやすく、果敢クリーチャーを呪文でバックアップして攻撃することが目標になっています。
幸いコモン~アンコモンまで実に優秀なクリーチャーが揃っており、またスペルも同様に優秀なものばかり。
個人的には、この『基本セット2021』環境で最も強力なカラーだと感じています。
【デッキ構築】
青赤は果敢能力を軸にしたデッキ構築を求められます。
《ゴブリンの魔術》は非常にわかりやすいですね。
本体スペックは最低限の1/1ですが、青赤で使うと無視できない打点を作り出してくれる良コモンです。
そこで重要なのはスペルを沢山用意しつつ勝ち筋を細くしすぎないことです。
スペルの比重が低いと果敢を活かせずデッキのパワーが低下してしまいますが、逆にスペルの比重が高すぎてもクリーチャーが場に出せず勝てないデッキになってしまいます。
このバランスはドローソースの枚数やクリーチャーの質にもよってくるので非常に難しいところです。
青赤は何度か使用しているものの、未だ最適なバランスは見つけられていません。
クリーチャーの枚数や土地の枚数はともに《選択》や《大慌ての棚卸し》などのドロースペルの枚数によっても変化するため、臨機応変な構築を求められます。
各種キャントリップに加え、《大慌ての棚卸し》が3枚以上入っていてカードを沢山引ける想定、かつ《ショック》《焦熱の竜火》で序盤をしっかり守れるならクリーチャー枠の枚数は10枚以下でも問題無いと思います。
そうでないならクリーチャー枠は12枚くらい用意するのが望ましいかな、と考えています。
土地の枚数も呪文の選択次第で、5マナが頂点かつ各種キャントリップやドローが沢山入っている、《動態の占い師》のような不要な土地を捨てられるカードが全くない・・・という構成なら14枚まで切り詰めても良いでしょう。
《動態の占い師》などで土地を捨ててドローできたり、《波起こし》《溶岩噴火》などでマナ・フラッドをある程度カバーできたりするのなら、15枚に抑えておくのが無難だと思います。
また、除去の選択も非常に重要なポイントです。
青赤はクリーチャーの枚数も少ない上に、果敢を発動させなければ標準以下のスペックを持つクリーチャーばかりで構成されます。
だからこそ相手を減速させる除去は必須です。
特にクリーチャーを展開しつつ構えることのできる2マナ以下のインスタント除去。
青赤を組むうえで《ショック》《焦熱の竜火》《魂焦がし》《高尚な否定》《》の5種類のカードの内、どの組み合わせでもいいので最低3枚は確保したいですね。合計で6枚用意できると理想的です。
《捕獲球》《金屑化》は確定除去として機能しますが、目指すべきプランとはあまり噛み合いません。
一応確定除去そのものは枠として用意したいのですが、他の除去より優先度は大きく下がります。
【ピック方針】
基本的に軽量除去が最優先です。
コモンにおいては《ショック》《焦熱の竜火》を上回るものはありません。
アンコモンまで視野を広げると《魂焦がし》《動態の占い師》《心火の供犠者》《謎変化》
《難破船の探知者》《実験的過負荷》の6枚が《ショック》《焦熱の竜火》を上回ると考えています。
またもう一つ青赤を語る上で重要なポイントがあります。
それが卓内の許容人数をオーバーし、カードが足りなくなったときにどうするべきか。
人気のアーキタイプを狙う場合、常に発生する問題です。
青赤は優秀なコモン・アンコモンの種類が多い為、他のアーキタイプと比べてこの問題がより顕著に発生しやすい側面があります。
5手目、6手目に《ショック》《北風の歌姫》と流れてきたので喜んで青赤に参入したら、上家はアンコモンや《焦熱の竜火》をピックしていて完全に被ってしまった・・・
なんてことはざらにあります。
そんな時に重要なのは、どうにかして勝ち筋を作り出すこと。
こういうケースでは、大きく2つの方策があります。
一つは個々のカードパワーに頼ること。
『基本セット2021』環境においては、それ1枚でアーキタイプと称される《テフェリーの後見》がこの勝ち筋に該当します。
このカードを設置して、あとはドロー呪文を連打すれば、それだけでゲームに勝利です。
除去が取れないことはあれどドロー呪文が全く取れないことは非常に稀ですので、どうも流れがダメそうなときに《テフェリーの後見》を発見したらオールインすることをお勧めします。
もう一つが《オナッケのオーガ》。
このカードは2マナのクリーチャーと相打ちしてしまう貧弱な奴なんですが、《高揚する書物》を付けると途端にゲームを決めうる化け物に変貌します。
《オナッケのオーガ》は事故っている相手には強い・・・という弱い者いじめが得意な奴なので、かみ合わせ次第で無理やり1勝をもぎ取ってくれます。
また弱いデッキのお供《忘れられた歩哨》も忘れてはいけません。
失敗したと感じたら恥も外聞も投げ捨てる覚悟が必要です。
青赤だからと言って《空中走査器》に《噛み傷への興奮》をエンチャントすることをためらってはいけません。
失敗したときはとにかく殴れるクリーチャーをかき集め、飛行を付けたりトランプルを付けたり投げ飛ばしたりと、あの手この手で殺意を高めるのが0勝で終わらない心得です。
青黒
【概要】
青黒には2つの戦略があります。
一つがリアニメイト。
《再命》で6~7マナのクリーチャーを5ターン目に着地させ、優位を得るアーキタイプ。
もう一つが除去・カウンター・ドローで戦うミッドレンジ~コントロールタイプです。
後者は必要なカードのほとんどを他のアーキタイプを競合するため、めったにできることはありません。
前者のリアニメイトとのハイブリッドが現実的なところでしょう。
リアニメイト戦略はルーティング(ドローして捨てる効果)と重量クリーチャーについて他アーキタイプと競合しないため、比較的成立しやすい点が魅力です。
【デッキ構築】
リアニメイトはコモンだけでもデッキが組める。
そう思っていた時期が私にもありました。
確かに青黒はコモンだけでも一通りパーツが揃い、見た目にもきれいで強そうでした。
しかし、そんなコモン単青黒は《再命》した《憂鬱蒔き》を《うろつく光霊》でバウンスされたり、《有刺メガロドン》がただのブロッカーで終わってしまったりと散々でした。
あと《再命》だけ引いて手札で腐ったり、逆に全く引かなかったり。
残念ながら、青黒はアーキタイプとして強力とは言い難い面があります。
ただしそれは、青黒をやってはいけないという事ではありません。
《追われる鯨》《虐殺のワーム》という最上級のファッティを《再命》できるのならば、途端に強力無比なデッキに変貌します。
このデッキも白黒ライフゲインと同じように、明確なフィニッシャーを確保してから向かうべきレアアーキタイプと認識すべきでしょう。
青黒というカラーで2マナ域はどうしても貧弱になってしまいます。
《異臭のインプ》が良いところで、《仮面の悪党》も現実的にデッキに入ってきてしまいます。
ただ2マナ域がいないからと下手に《歩く死骸》を入れるくらいなら3マナ域を膨らませて何とかする方が望ましいですね。
《死花のサリッド》はとにかく優秀なクリーチャーですし、《テフェリーの徒弟》は1周するくらいのカードでも役割がデッキに噛み合っています。
2ターン目をパスして3で止めることを検討して、2マナ域に弱いカードばかりにならないよう注意してください。
【ピック方針】
黒が入っているデッキ全般に言える事ですが、《闇の掌握》はアンコモンまで見ても最上級のカードです(多くのセットでアンコモンのカードですしね)。
《再命》をピックしたい気持ちを抑えて、《闇の掌握》や《死花のサリッド》などの盤面を耐えることのできるカードを優先しましょう。
《再命》は1周してくることを期待してやります(1周しない卓だと大体青黒リアニメイト自体が失敗します)
フィニッシャー枠についてはこのような順位付けをしています。
《虐殺のワーム》>《追われる鯨》>《波起こし》>《有刺メガロドン》>《憂鬱蒔き》
《トレイリアのクラーケン》は相手ターン中にどのくらいドローが出来るかで価値が大きく変わり、ルーターなどで継続的に引けるカードが2~3枚+スペルでのドローが2~3枚ならメガロドンよりも上くらいな立ち位置です。
余談ですが、《死花のサリッド》のようなクリーチャーはこのようなアーキタイプにおいて非常に重要です。
序盤を支えてくれるブロッカーというのもそうですが、相手が事故り気味のタイミングで攻撃できるというところが、実は相当に重要なポイントになります。
MTGは事故るゲームです。
土地を17枚入れても2マナからずっと伸びないこともあれば、土地15枚のデッキでストレートに10マナまで伸びることもあります。
これは自分もそうですし、相手もそうです。
そういう必ず発生する事故できちんと勝利できるか、あるいはきちんと有利を得ることができるかどうかは勝率に大きく関わってきます。
青黒リアニメイトのようなコンボチックなアーキタイプは、その点相手の事故を有効活用し辛いアーキタイプだと言えます。
事故った相手をしり目にゆうゆうと土地を伸ばし、5ターン目に《追われる鯨》を《再命》できるとしても、1~4ターン目にドローしかしていないのならば、《高尚な否定》が1枚あるだけで有利が帳消しになってしまいます。
ですがもし、3ターン目に《死花のサリッド》を展開できていたなら、《再命》をカウンターされたとしても6点のライフを最低で削っていることになります。
ライフを詰めるデッキでは無い以上、その6点がゲームに大きく影響しないかもしれません。
しかし、その後相手が事故から回復してゲームが五分に戻った時、ここで削ったライフが相手の攻撃を鈍らせて、ターンを稼いでくれるかもしれません。
相手がマナ・スクリューであるとき、自分がマナ・フラッドというのはそんなに珍しい事ではありません。
こういった微妙な展開になったとき、ブロッカーとして用意しているクリーチャーが《賽銭ガニ》なのか《死花のサリッド》なのかは勝敗を分ける大きな要因になります。
リミテッドにおいて、「高いパワーを持つブロッカー」というのは実は相当に大事な要素なのです。
青緑
【概要】
青緑は・・・残念ながら、私の中ではワーストアーキタイプです。
まずそもそもとして、アーキタイプを成立させるためのカードがごく僅かしかありません。
コモンには《秘本のアニマ》《節くれの賢者》の2枚だけ。アンコモンにも《知識鱗のコアトル》《節くれ拳の樫》しかないのです。
一応《テフェリーの後見》も《トレイリアのクラーケン》も青緑カードのはずなのですが、青黒や青赤で使った方が強いのです。
条件達成のためのドローカードは山ほどあるものの、当然ドロー呪文は全てのアーキタイプで平等に使用できます。
そのうえこの数枚しかない青緑のアーキタイプカードと比較して、果敢を持つクリーチャーはコモンに枚数が多い上に本体スペックも高く、どうしてもそちらに比べて見劣りしてしまいます。
ということで「ターン中に2枚以上カードを引いたとき」をアーキタイプとして寄せるには無理があります。
必然的に青緑は強いカードの詰め合わせ構成になってしまいます。
ちなみにドラフトにおける基本なのですが、特別なシナジーを持たない青緑2色は弱カラーです。
強いクリーチャーを持つ緑が相方として欲しいのは赤・黒・白の3色。
低コスト除去を用意できる色をこそ相方として求めているのです。
それでもエキスパンションのテーマとして何かしら用意されていれば強いこともあるのですが(例えば『異界月』では「現出」というコンセプトを持ち、安定して4~5ターン目に6~8コスト相当の重量クリーチャーを唱えることができた為、とても強力でした)、残念ながら今回はそうではありません。
あるいは青のドローと緑のマナサポートを生かした多色化も青緑の生きる道です。
しかし残念ながら、この『基本セット2021』は低コストや単色で強いカードが非常に多く、多色化するメリットが薄い環境です。
その為、青緑として取れる選択肢が少なくなってしまっているのです。
【デッキ構築】
さて、そんな青緑も決して弱いだけではありません。
コモンだけで組むとどうしようも無いのですが・・・。
《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》は実質青緑専用カードにして、環境でも最高クラスのレアです。
このカードから入れたのなら、青緑でも十分強力なデッキになり得ます。
また定番ではありますが、緑の重量クリーチャーを《高揚する書物》で飛ばす動きも強力です。
特に《うたた寝するティラノドン》との相性は抜群。
青緑はコモンの2マナ域に採用したいクリーチャーが他に存在しないのもあり、是非とも複数枚集めたいところです。
また勝つために必要な要素として忘れてはならないのが、相手に干渉する軽量カードを確保する事。
青緑はとにかく呪文が重くもっさりした動きになりがちなので、《高尚な否定》《非実体化》のどちらかは欲しいところです。
アンコモンである《非実体化》が最も望ましいですが、コモンの《高尚な否定》でも十分役割を果たせます。
2ターン目にプレイする分には《対抗呪文》ですし、これを構えながら《高揚する書物》を付けて殴る動きはとても強力です。
黒緑
【概要】
黒緑もシナジーを用いないアーキタイプです。
「このターン中に死亡した」能力のために《リリアナの使用人》のようなカードを使うなんてもってのほか。
この条件はガシガシ殴ったり《闇の掌握》を唱えたりすることで達成できるので、特別意識せずデッキを構築しましょう。
そしてこの色もまた、積極的にやりたくないカラーです。
基本的には何かしらのレアから入るか、黒を中心にピックしている中、緑のアンコモンや《双刃の暗殺者》から緑黒になることが多いでしょう。
逆に、緑を中心としたピックから黒をタッチする動きには少々不安があります。
黒緑の強みはアンコモン・レアを除けば《闇の掌握》というカードに集約されます。
緑が濃いデッキになるとこの強力な除去を運用し辛くなってしまいます。
また《異臭のインプ》のようなブロッカーも地味に多数の黒マナを要求してくるため、緑が濃い黒緑は不安定になりがち。
緑ピックから強い黒のカードが流れてきて・・・というのであれば仕方ありませんが、理想としては黒単気味のピックから空いている緑に参入したいところです。
【デッキ構築】
さて、このカラーで目指す理想の構成は、黒の除去沢山に緑のクリーチャーです。
黒の除去は言うまでも無く《闇の掌握》。
緑のクリーチャーのコモンで強いと言えるのは《ラノワールの幻想家》《節くれの賢者》の2種類。
この除去とクリーチャーの組み合わせが複数枚あれば成功と言えます。
あとはまぁ、レアですね。
緑やっているときに《虐殺のワーム》を引いたからとか、黒やっているときに《漁る軟泥》が流れて来たからとか、そういう展開がやっぱり黒緑は多いです。
実際黒緑はコモンだけで勝つのは難しいので、強いレアありきのアーキタイプであると意識する必要はあります。
ちなみに《双刃の暗殺者》の優先度はそこまで高く無いと考えています。
同じパックに《闇の掌握》があったらそっちを優先します。
赤緑
【概要】
赤緑は相も変わらず力こそパワーなアーキタイプ。
ただし今回の赤緑は《ショック》《焦熱の竜火》という取り回しが非常に良い火力を持つため、ちょっと器用です。
緑には《森の守部》や《巨大な戦慄大口》といった強力な重量クリーチャーが用意されていますが、重いクリーチャーが活躍し辛い環境なので、低マナ域からしっかり動くビートダウンとして立ち回ることを目指します。
【デッキ構築】
今回赤緑にはパワー4以上を参照するという、『タルキール覇王譚』で登場した「獰猛」と同様のものがアーキタイプ能力として割り当てられていますが、実はあまり意識する必要はありません。
というのも《うたた寝するティラノドン》しかコモンでパワー4を縛るものはほぼ無く、アンコモンの《ガラクの蜂起》があって初めて意識するくらいなのです(《砲塔のオーガ》は条件達成する必要があまり無い)。
《うたた寝するティラノドン》は4マナ以降のクリーチャーをプレイしたら大体動きますし、《誇り猫》《狩人の刃》《セテッサ式訓練》でも動かすことができます。
《枝葉族の報復者》はそんなにマナ出す必要もないということで、実際パワー4を意識するよりも除去とトランプルをいかに用意するかが焦点となります。
《オナッケのオーガ》は赤緑カードというイメージが強いと思いますが、実際のところそこまで強いわけではありません。
《ガラクの蜂起》があるか、《うたた寝するティラノドン》が2枚以上あるなら採用したいところですが、そうでないなら《トリュフ嗅ぎ》を優先したいぐらいです。
2~4のマナ域のコモンクリーチャーを評価すると大体こんな感じです。
《うたた寝するティラノドン》>>>その他すべて
《ラノワールの幻想家》>《誇り猫》>《トリュフ嗅ぎ》>《オナッケのオーガ(《ガラクの蜂起》があれば《誇り猫》より上)》
《砲塔のオーガ》>>>《剣歯虎のやっかいもの》>《忘れられた歩哨(《ガラクの蜂起》があれば剣歯虎より上)》
《ガラクの蜂起》は流石に強力なのでデッキを寄せる意味がありますが、ピック出来るのが後半だとそうもいきません。
赤緑はアンコモンに強力な継続的アドバンテージソースが2種類もある色で、《猛然たる顕現》はデッキ構築に気を遣わずに使える優秀なカードです。
序盤に《ガラクの蜂起》をピック出来たら気を遣うぐらいで、ピック出来ていない段階からパワー4を意識してデッキを歪める必要は無いかなというのが私の考えです。
【ピック方針】
コモンでは《うたた寝するティラノドン》《ショック》《焦熱の竜火》の3枚が圧倒的に抜けています。
《ラノワールの幻想家》《狩人の刃》も非常に強力なのですが、他3枚が他では果たせない役割を担うため、一歩劣る印象です。
アンコモンまで見てみると、《ガラクの蜂起》《猛然たる顕現》《枝葉族の報復者》《魂焦がし》の4枚が強力で、特に《ガラクの蜂起》《枝葉族の報復者》《魂焦がし》の3枚は全てのコモンを上回っているでしょう。
《猛然たる顕現》も強力なのですが、同じリソースカードとしてみると《ガラクの蜂起》に一歩劣るため、優先度が若干下がります。
祭殿
【概要】
祭殿は非常に特殊なアーキタイプです。
場に複数種類並べて初めて有効になるカードなのですが、その全てがアンコモンとあまりにリミテッド向けでは無い・・・ように見えます。
一応一枚一枚が単体でも働かなくもない性能をしているので、ある程度数がピック出来れば強いのですが・・・
期待値が0.9枚しかないアンコモンが5種全てパックから出る確率は当然ながら高くありません。
その為、一番強い《石の牙の聖域》を持っている状態で、青・赤・白のどれかの祭殿を早い段階でピック出来て初めて祭殿デッキを作ることを「検討する」ぐらいの気持ちでいることが重要です。
《万物の聖域》が出た!これは祭殿にいくしかない!と飛び込むとほぼ失敗します。
【デッキ構築】
5色を使うため自由に構成することができますが、私は青白軸の5色祭殿が最も優れていると考えています。
まず前提として、祭殿デッキにおける各種祭殿はフィニッシャーに相当するカードです。
黒祭殿が直接のフィニッシャーで、白と赤がコントロール用、青と緑がアドバンテージ担当。
ただしどれも1枚では大きな役割は果たせず、2種類以上並んで初めて有効になってきます。
つまりこれは「道中あまり役割を果たせない上に勝つまで時間がかかる、1枚で機能しないフィニッシャーを並べる必要がある」ということ。
その為にサーチやドローが必須になってくるのです。
その点青の《大慌ての棚卸し》は最上です。
アドバンテージを稼げるうえに分割してプレイできますし、1枚目は《静かな水の聖域》で捨てても良いと最高の相性。
集めるのが大変なのでハードルは高いですが、祭殿ピックをするなら初手で取って良いレベルです。
また祭殿は勝つまでに時間がかかるデッキでもあります。
その為耐えるカードをある程度用意する必要があるのですが、幸い《穏やかな光の聖域》は単体で大型クリーチャーも止めてくれる有望な防御手段です。
このデッキは基本的にカードを引いて土地を並べて除去撃って・・・という動きになるので、祭殿が2枚並んだだけでもタップ能力2回起動が現実的になってきます。
その時重要なのが白マナの数で、相手のターンにタップ能力を起動したい都合上、《豊かな実りの聖域》では色マナの補助が出来ません。
なので、白マナは最低でも4、理想は(3回以上の起動も考えて)7枚の白マナ発生源が欲しいところです。
また序盤のブロッカーとしては《協約のペガサス》はかなり上物です。
単体ではただの弱めのカードに見えますが、《廃れた高地の聖域》1枚だけのときでも2/2サイズを一方的に止めることができますし、他のクリーチャーと合わせて複数ブロックがしやすく、《高尚な否定》の条件も達成できるという点で、2マナ域のコモンクリーチャーでは最上クラスのブロッカーなのです。
また《活力回復》もデッキに非常にマッチしています。
参考リストでは1枚しか入っていませんが、2枚取れたら2枚入る優秀なカード。
さらに白の除去はどれも防御的なデッキでは噛み合いが良く、そこそこ遅い手順で取りやすいので重宝します。
これらの理由から青白軸のタッチ3色が祭殿デッキにとって素晴らしいという事で、ご納得頂けたでしょうか。
青白軸はほとんどが安めのカードで構築できることが強みということで、《耕作》のように多少レアリティが高くともよりデッキにマッチしているカードは存在します。
カードの出方・卓の流れによってはより良い構成もありますので、あくまで一つのアーキタイプとしてこういうのもあるよ、と認識して頂ければ幸いです。
ただいずれにせよ、祭殿デッキである以上は速い手順では祭殿そのものや競合しやすいドロー、除去をピックする必要があり、遅い手順でも土地を集めなければならない都合上、暇な手順があまりありません。
なので少しでも他と競合し辛いコモンでデッキを構築する必要があります。
必ずしも青白軸である必要はありませんが、他の3色は多色土地と《プリズマイト》でなんとでもなるので、メインカラーに十分な色マナを用意した2色タッチ3色構成を軸にすることをお勧めします。
【ピック方針】
とにかく《石の牙の聖域》です。
これが無いと他4枚があっても理想形になりようがないので、スタートするなら《石の牙の聖域》を確保してからが望ましいです。
1周目が終わるくらいまでは他のアーキタイプと競合する有力な除去やブロッカーをピックしましょう。
《プリズマイト》や2色土地はこのあたりでは優先せず、1周してくるか他のパックから手に入れるようにしたいですね。
各種祭殿の1枚目と《大慌ての棚卸し》だけは優先度が非常に高いので、よほどの爆弾レアが同時にいない限りはこれらを優先してピックします。
また《波起こし》は祭殿を探すカードでありつつ、祭殿を引いていない時のフィニッシャーになり得る柔軟なカードです。
このカードも優先度を高くしておきたいですね。
ちなみに《ショック》《闇の掌握》《うろつく光霊》といった通常であれば最高クラスのコモンは特別必要ありません。
あったらあったで悪くはないのですが、色マナの都合でデッキに入らない可能性が高いので、それらをピックするときはカットしているぐらいの感覚でいた方が良いでしょう。
余談:単色ピックと耐えドラフトについて
ここまで各アーキタイプについてお話してきました。
それぞれのアーキタイプについて、完成形を理解して意識することはドラフトの勝率を上昇させる手助けになると思っています。
ただ、アーキタイプの完成形に向けて決め打ち気味に一直線で向かうのはあまり良い方法では無いとも思っています。
ピックの方法は人・環境によって千差万別で、必ずこうすれば良いというものはありません。
ですが個人的にお勧めするのなら、「単色ピック」が良いと思っています。
単色ピックとは1パック目に空いている色を探し、その色を取り続けて1色を固定化する戦略です。
この戦略では1-2~1-5くらいまではパックの中から強いカードを順にピックします。
例えば1-2《うろつく光霊》1-3《闇の掌握》1-4《ショック》1-5《バスリの侍祭》のように。
これは一見「単色ピック」とは相反しているように見えるかもしれませんが、このように強いカードを確保して空いている色を探ることによって、最終的に色を固定化することができます。
1-2~1-3に流れてくるカードはほとんど信用できません。
《虐殺のワーム》くらいすごいカードが流れてくれば一直線ですが、大抵の場合レアかアンコモンが抜けたパックが流れてきます。
トップコモンクラスのカードが来たとしても、同じ色でそれ以上に強いカードを取っている可能性が考えられるため、この段階で色を固定化することは大きなリスクとなります。
重要なのは1-4~1-5。
ここでピックした《ショック》《バスリの侍祭》は各色のトップコモン級のカードで、同じ色でこれ以上のカードが沢山あるとは考えにくいです。
自分の上5人の中に赤か白の人はいるかもしれませんが、全くいない可能性も存在します。
ここから赤か白が空いているかもしれない・・・と考えを持って、白か赤で強いカードを強く意識してピックします。
1-6《夜明けの突撃獣》1-7《高山の番犬》1-8《天界の処罰者》・・・といったように。
また、自分が開封して一周してきた1-9でも大きな情報が得られます。
以前に書かせていただいた『エルドレインの王権』ドラフトガイドにも記載したことですが、この9手目のパックから卓内で白を集めている人数が少ないことが見て取れれば大成功です。
2パック目3パック目の白いカードを独占し、白+αの強力なデッキが完成することでしょう。
もしこの段階で白が混んでいそうだ・・・とわかっても、1-2~1-4でばらばらの色の強いカードをピックしていたことで十分にリカバリーできます。
そしてどこかの色が混んでいるという事は、逆にどこかの色が空いていることに繋がります。
この場合、たまたま白のカードがパックに多く封入されていたことで卓内の白の人数が増えてしまいました。
1周後のパックから読み取れる情報と、1-4で《ショック》が流れてきた情報から、逆に赤が空いているかも?といった推測を展開する事も可能です。
初手のパックが弱くて一周後の情報が得られない事もありますが・・・。
そういったときは潔く諦めて、何とか1勝を拾いに行く「耐えドラフト」に移行しましょう。
「耐えドラフト」とは、戦略として強くはないものの、安いコモンで成立し、特定のアーキタイプには勝てるものを目指すことです。
具体的には、《オナッケのオーガ》に《高揚する書物》をエンチャントすることを目指すとか、《精神腐敗》や《取り消し》でコントロールするとか、《巨大な戦慄大口》を沢山使うとか、そういう戦略です。
どれも環境的に弱かったり、リスクが大きすぎたりと明確な欠点を抱えています。
しかしながら、自分と同じように失敗してデッキが弱くなった人や、除去を全く持たず大きいクリーチャーに弱い人、強い攻め手を持たずロングゲームになってしまう人など、何かしらその戦略がクリティカルに刺さる人が、どこかに存在します。
そういった人を狙い撃ちして0勝で終わることだけは回避する・・・弱者の戦法ではありますが、これを意識して出来るかできないかでトータルの勝率は大きく変わります。
この「耐えドラフト」は安いコモンで成立するからこその戦略なので、ピックそのものがあまり歪まないのが大きなメリットです。
2パック目からちょっと意識してピックをしたものの、3パック目で凄くいい流れが来てデッキが強くなったら普通に強いデッキを使えば問題ありません。
取るものが無くて暇なときとか、23枚目相当のちょっと弱いカードで悩んでいるときとか、そういったタイミングでこういうワンチャン作れるカードをピックするとちょっと勝率が上がるかもしれません。
4.おわりに
今回もまた長くなってしまいました。
言語化が得意でないのでわかり辛い点も多かったかと思いますが、最後まで読んで頂いて本当にありがとうございました。
少しでも皆さんにとってプラスになっていれば幸いです。
今回私が記載した内容は、この『基本セット2021』ドラフト環境初期のものです。
今後試行錯誤していく中で新たな戦略やよりよい構成、ピック方法などが見つかってくるかと思います。
その際はこの記事で触れたことに拘らず、自分で見つけたより良い方法でドラフトをして頂ければと思います。
そしてできれば、それを教えて頂けると嬉しいです。
それでは、また。