BIGs マエノソノケンタ ノソノスキー先生のモダン講座:『ゼンディカーの夜明け』参入後のメタゲームブレイクダウン 〜メタの速さや多様性にどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ〜
translated by nosonosan
やぁ、ノソノスキーだ。久しぶりだな。みんな、調子はどうだい。
オンラインでのマジックが主流になって久しいが、マジックアリーナでオンラインの盛んなスタンダードとは違い、リアルでのプレイが主となるレガシーやモダンのプレイヤーは目標となる大会がなく、どこかやりきれない気持ちを抱えながら日々を過ごしているんじゃないかと思う。
だが、そんな君たちに朗報だ。晴れる屋とBIG MAGICがやってくれた。なんと2週連続、東京・大阪2大都市での開催となるMMM Finalsとエターナルパーティーだ。そこで今回は、
『MMM Finalsに参加してみたいけど、今のモダン環境がわからなくて不安だ』というプレイヤーのために、『ゼンディカーの夜明け』(以下、ZNR)リリース後のモダン環境についての記事を書かせてもらった。
また、モダンの各デッキ案内については、あのPTチャンプことリュウジが、
レガシーに関しては、現レガシー神でMOパンダことHareruya Hopesのスズイケが、どこかできっとかたちにしてくれるはずだ。
-目次
・ZNRリリース後のメタ、ことはじめ
・ZNRリリース後のメタゲームブレイクダウン
▼TOP32のデッキ分布
▼TOP8のデッキ分布
・メタゲーム変化の実際
▼《スカイクレイブの亡霊》-白の隆盛の立役者-
・環境TOP3のデッキたち
▼赤黒死の影
▼4C原野
▼デスタク
・メタゲームのその先へ
▼オールスペルコンボの暴力
▼薄れゆく墓地対策
・おわりに
・ZNRリリース後のメタ、ことはじめ
発売からほどなくして《創造の座、オムナス》がスタンダードで禁止になるという大きな衝撃を世界に与えたこのセットは、モダンでは種々のデッキを強化するパーツが豊富で環境に大きな多様性をもたらすこととなった。
多様性の柱たち
-《遺跡ガニ》を得て最初の大会でいきなり優勝したライブラリーアウト
-《スカイクレイブの災い魔》で夢の8枚体制となった死の影デッキ
-《創造の座、オムナス》で攻守ともに磐石となった原野コントロール
-《スカイクレイブの亡霊》で台頭した各種白系デッキと石鍛冶の復権
-土地兼フィニッシャーとなる《変わり樹の共生》を得たアミュレット
-各種両面土地でトーナメントレベルまで昇華したスパイとベルチャー
などなど...
枚挙にいとまがないほどに様々なデッキが強化をされ、新たにトーナメントレベルへと躍り出るデッキも出現することとなった。そしてその一方で、《浄化の野火》という強力なアンチカードが出たトロンや、得るもののなかったドレッジなどはその数を減らすこととなったんだ。
・ZNRリリース後のメタゲームブレイクダウン
早速、マジックオンラインで行われた大型大会の上位TOP32入賞デッキの分布を見てみよう。(対象期間:9/20〜11/16、全21大会)
▼TOP32のデッキ分布
※便宜上、赤黒死の影とデスタクはその派生系を統合させてもらった。
赤黒死の影・4C原野の2大トップメタを筆頭に、5C人間、デスタク、アミュレット、白緑原野が追随するかたちとなっている。その下にも様々なデッキが続いているが、特筆すべきはOthersに分類された環境の1%に満たないデッキの割合が約20%にのぼるということだ。イコリア環境では、Othersの割合が約10%であったことを考えると、以前にも増して環境が多様化していることがわかるだろう。
モダンさんの懐の広さ感じていけ。
▼TOP8のデッキ分布
TOP8ともなると、さすがに勝ち切るパワーのあるメタ上位デッキが割合を伸ばしているが、興味深いのはその優勝回数だ。4C原野がその割合とは裏腹に1回の優勝にとどまっている一方で、デスタクと赤黒死の影は複数回の優勝をしており環境の王者に名乗りをあげている。特に、モダンにおいてこの短期間で白単系のデッキが何度も優勝するということは記憶になく、上位陣を見てみてもかつてないほどに白が強い環境と言って過言ではないだろう。
・メタゲーム変化の実際
環境が非常に多様化しているためそのすべてに言及することは難しいが、おさえておくべきことは大きく2つだ。
・ 赤黒死の影と4C原野の隆盛
・ 《スカイクレイブの亡霊》で強化された白系デッキの台頭
見た目にも分かりやすい強化パーツを得た赤黒死の影の台頭。そして《死の影》が流行るならそれに強い《流刑への道》が使える白の出番で、除去を火力に頼っていた従来のRUG原野は4C原野が主流になるとともに、《創造の座、オムナス》はその強さが認知されてデッキ内での地位を確立することとなった。そして、《流刑への道》が使用可能で土地への干渉も得意なデスタクが一躍環境に躍り出ることとなり、もともと地力のあったヘリオッドカンパニーと白緑原野は《スカイクレイブの亡霊》を得て以前よりもその数を増やすこととなったんだ。
▼《スカイクレイブの亡霊》-白の隆盛の立役者-
《スカイクレイブの亡霊》について語らずにZNR環境を語ることはできない。こいつの強さは、モダンにはびこる高マナレシオのクリーチャーに対処が容易で、除去されたとしてもバニラトークンが残るのみであり悪い交換にはならないことだ。さらに、基本的にコンバットでしか落とすことができなかったプレインズウォーカーを除去することが可能で、相手に簡単にマウントを取らせないようにしてくれる。サイドカードや《流刑への道》は強いが基本的に不器用と評される白に大きな武器をもたらすこととなった。
その強さレガシー級、モダン最強クリーチャー。
そしてその採用率では、驚くべきことに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》をおさえてモダンで最も採用率の高いクリーチャーとなっている(※。デスタク、ヘリオッドカンパニー、白緑原野を筆頭にメインサイドに採用されており、まさにモダンでの白系デッキ隆盛の立役者となっている。
(※11/21時点、MTGgoldfish調べ)
白いデッキならばとにかく採用しておけと言わんばかりの採用率。
・環境TOP3のデッキたち
ここではメタゲームの中心に存在しているTOP3のデッキを簡単に紹介したい。
▼ 赤黒死の影
《スカイクレイブの災い魔》の登場で《死の影》8枚体制となり安定性と爆発力が増した死の影デッキ。環境屈指の速さがありながら《夢の巣のルールス》のおかげで中・長期戦にも対応が可能。赤黒純正でも十分な強さを持っているが、メタが進むにつれて、肉質が上がりミラーに強くなるジャンド、妨害力を高めコンボ・コントロールに強くなるマルドゥに派生をしている。特にマルドゥは数こそ少ないものの100%のTOP8入賞率を誇り、最も環境に適した死の影の形と言えるだろう。
メタに合わせて型を変えることができる。
▼ 4C原野
死の影に強い白を採用するために4Cとなった原野コントロールデッキ。《創造の座、オムナス》はブロッカーとしても活躍できるプレインズウォーカーのような存在で不利な局面でも積極的に唱えることができ、攻守にわたり活躍する。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と合わせてメインからのライフゲインが豊富であり、アグロデッキへの耐性がさらに上がっている。多彩な妨害と強力なフィニッシャーを有しており、その強さは"土地を伸ばしてさえいれば勝つことができる"と揶揄されてしまうほどだ。
しかしその一方で、マナ基盤が脆弱なためマナトラブルでもたついてるうちに負けてしまうこともよくある。
目が潰れそう。
▼ デスタク(Death & Taxes、白単ヘイトベアー)
相手の行動を縛り上げ殴りきるというコンセプトで、モダンでは以前からヘイトベアーという名前で親しまれていたデッキだ。こいつが突如として環境に躍り出てきたのは、《スカイクレイブの亡霊》で強化されたからという理由はもちろんだが、デッキの構造上、赤黒死の影・4C原野の2大トップメタに対して有利に戦うことが可能だからだ。赤黒死の影には、横並び・再利用を許さぬ追放除去が、4C原野にはマナディナイアル戦略(いわゆる土地ハメ)が有効であり、勝ち上がってきた2大巨頭を蹴散らして優勝を重ねてきたであろうことは想像に難くない。
単色デッキゆえの不器用さのために大会序盤では雑多なデッキに負けてしまうこともあるが、それも《スカイクレイブの亡霊》で大きく改善しており、上位に勝ち上がることさえできれば最も優勝に近いデッキの1つであることは間違いないだろう。
居場所が見つかってよかったね!石鍛冶くん!
・メタゲームのその先へ
ここまで説明してきたことはすべてオンライン上での出来事だから現実の大会に当てはまるとは限らないが、そのうえでMMM Finalsにむけて少し踏み込んだ話をさせてもらいたい。
▼ オールスペルコンボの暴力
Oops!! All Spells
スパイとベルチャーの圧倒的暴力を経験したことのあるプレイヤーはどれほどいるだろうか。その強さとは裏腹にオンライン上での数もそれほど多くはなく、ましてや現実世界ともなればその暴に触れたことがあるプレイヤーはなおのこと少ないと考えるのが妥当だろう。
MMM Finalsはオールスペルコンボが世に出て初めてのリアルでの大型大会だ。デッキパワーが高いうえにわからん殺しも可能な時期であり、最も結果と話題をかっさらうことができるデッキになるだろう。
▼ 薄れゆく墓地対策
環境に少なければ少ないほど、その輝きはいっそう強くなる。
"得るもののなかったドレッジはその数を減らすこととなった"-冒頭にこう述べたが、墓地への意識が薄れた時にこそ結果を残すのがドレッジというデッキだ。現環境の主な墓地利用デッキはスパイのみであり、墓地対策は減っているかその多くが限定的なものになっている。さらに、トップメタの死の影デッキに有利であることからドレッジを使うことは理にかなっており、MMM Finalsでは元気に墓地から這いずり回る姿を見ることができるかもしれない。
ここまでのことを踏まえてデッキ選択・カード選択をしていけば、大きく道から外れることはないと思っている。オススメのデッキはといえば、当然この記事で言及したものにはなるのだけれど、せっかく久しぶりのモダン大型大会なのだから思い思いのデッキを持ち込んでぜひ楽しんでもらいたい。
・おわりに
た、耐ぇ〜っ!!
ZNRがリリースされて、モダンの環境はかつてないほどに多様性に富んだ良好な環境となっている。スタンダードにとどまらずモダンでの禁止も危惧されている《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は、その採用率もデッキ数も現時点では禁止には及ばないものだった。オールスペルコンボに関しても、1枚コンボであるという点に目をつむれば、様々な妨害が有効で数も少ないことから、ネオブランドと同じような道をたどると考えている(ひとたびモダンが競技シーンに復活すればその限りではないかもしれないが)。
ここのところ、大会を開催するにあたって何かと不運に見舞われることの多かったBIG MAGICのことだ。ややもすれば、今回も一筋縄ではいかないかもしれない。ようやく開催にこぎつけた大型大会ではあるが、世の中の状況がいまだに不安定な中、晴れる屋にしてもBIG MAGICにしても開催を決定することには大きな葛藤があったことだろうと思う。大手を振ってお祭りを楽しむことは難しいかもしれないが、粛々と大会が開催され無事に終わること、大会に参加した人たちが少しでも楽しめることを心から願っている。
最後まで読んでくれてありがとう。この記事がモダンのメタゲームを追いかける君への手助けになれば嬉しく思うよ。もし気になることや疑問に思ったことがあれば遠慮なくtwitter(@nosonosaaan)まで聞いてくれ。
モルテン・ノソノスキー