ノソノスキー先生のモダン講座:
相棒ルール変更後のモダン環境予測
〜相棒ルールは本当に変更されなければならなかったのか-
『納得』は全てに優先するぜッ!!〜
translated by nosonosan
やぁ!ノソノスキーだ。また会ったな。
・・・え、今回は再会するのがずいぶん早くないかって?
そうだろう。褒めてくれ。
みんなも周知の通りだと思うが、前回の禁止改訂から約2週間(2週間という短期間でだ!)、なんとウィザーズはイコリアリリース後2度目の禁止改訂に踏み切ったんだ。その改訂内容はスタンダードにとどまらず相棒メカニズム自体のルール変更という形で行われ、いくら懐の広いモダンといえどもその影響を免れることはなかったんだ。あと1、2週間もすればある程度の環境が明らかになるだろうが、あまりに激しい環境の変化に翻弄されるカードゲームおじさんたちのために、まさに"大相棒時代"と呼ぶにふさわしい環境後半(※)のおさらいをしつつ、今後のモダン環境がどう変化していくのかを予想させてもらった。
(※)...リリース直後の"4/19〜5/10"を前半、トップメタに大きな変化が見られた"5/16〜6/1"を後半と定義した。
-目次
・イコリア参入後後半戦の変化
▼果敢デッキの変容
▼土地系デッキの台頭
・後半戦のメタゲームの実際
▼相棒の環境支配率の比較
▼相棒のTOP8支配率の比較
・ルール変更後の『相棒』のカタチ
・『相棒』として活躍する可能性を秘めたデッキ
▼ヨーリオンスケープシフト
▼ジェガンサトロン
▼ルールスジャンド
▼ルールスドルイドコンボ
・『相棒』としての活躍が見込めないデッキ
・『相棒』としての活躍が未知数なデッキ
・メタゲームのその先へ
▼Back to Basics--基本に帰れ--
▼コンボデッキの栄枯盛衰
・おわりに
・イコリア参入後後半戦の変化〜果敢デッキの変容と土地系デッキの台頭〜
後半戦に起きた変化は大きく2つ。
・トップメタ内での変化:赤白果敢→赤黒果敢→ジャンド果敢→ジャンド死の影への変容。
・土地系デッキ(緑単トロン・スケープシフト)の台頭。
果敢デッキはよりデカく。地上を固く。
▼果敢デッキの変容
前回の記事で従来型・果敢型の2種類のバーンがトップメタに君臨していることに触れたが、その翌週から突如として現れたのが赤黒果敢だ。《塵へのしがみつき》によるライフゲインとルールス耐性、ハンデスによるコンボ耐性で一気に環境のトップメタへ駆け上がり、赤白果敢を駆逐した。そして、バーン・果敢に対して強いクリーチャーである《タルモゴイフ》が採用されたジャンド果敢、直接火力が減ったことを追い風にタルモにサイズで打ち勝つ唯一のクリーチャーである《死の影》を採用したジャンド死の影が有終の美を飾るという形で幕を閉じた。
▼土地系デッキの台頭
土地系デッキの台頭は、トップメタである果敢デッキの変化に起因するものだ。土地系デッキはハンデスよりも直接火力を苦手としており、《塵へのしがみつき》も土地系デッキに対しては果敢の種にしかならない。赤黒ベースの果敢デッキは直接火力が少なく、アグロよりもミッドレンジ寄りの構成となっているため、果敢デッキ同士の潰し合いの果てに環境が遅くなり土地系デッキが活路を見出すかたちとなった。
上記2つの変化は後半のたった1ヶ月の間に起きたもので、これだけを見れば実に流動的にメタは変化をしており、今後もさらに変化をしていくことは想像に難くなく、デッキの多様性だけを見れば一見すると健全な環境に思えたんだ-少なくとも俺には、な。
でもだめだった。
令和2年6月1日、ウィザーズはバスターコールを発動したんだ。
理由はただ1つ、"相棒はあまりに環境を支配しすぎた"からだ。
『実際にどの程度の勝率・割合だったんだろ...うゎ!何をするやめろッ!!』
・後半戦のメタゲームの実際
相棒デッキの実際の勝率に関しては分からないが、支配率に関してはある程度確かめることができる。実際に後半戦の環境がどうなったのか見てみようじゃないか。
『め、目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーッ!!』
パッと見でも相棒デッキの多さが気になるところだが、前半と比較し後半ではどの程度相棒デッキが増加したのだろうか。
▼相棒の環境支配率の比較
その支配率、なんと約8割!!
相棒の環境支配率は実に約8割と圧倒的な数値へと変貌をし、『相棒デッキVS非相棒デッキ』という構図は崩れ、まさに"大相棒時代"へ突入していたんだ。
▼相棒のTOP8支配率の比較
TOP8においては相棒の支配率はなんと8割を超えてしまっており、"相棒にあらずんばデッキにあらず"を体現した結果といえるだろう。
これを見てもらえれば、相棒に好意的だったものには幾ばくかの"納得"が、相棒を憎むものには数値としてその主張への"正当性"が与えられるものだと思う。
『相棒ルールの変更はやむをえないものだったんだ』...と
・ルール変更後の『相棒』のカタチ
そのあまりの暴れっぷりから、メインで3マナを支払ってもなお手札に加えるのみというあまりに重い"相棒税"を課せられてしまった相棒たち。
ここ(ゲーム外部)
相棒たちが今までと同じように俺たちの相棒として活躍するためには、その制約を乗り越えることが必要で、その条件を満たすと目されるデッキは、
・重めのコントロールデッキ
・マナフラッドの受け皿としての使用に耐えうるデッキ
・タップアウトのミッドレンジデッキ
の大きく3つに分類されると思う。そして、それらのデッキに該当する相棒はこいつらだ。
『まだだ!まだ終わらんよ!』
・『相棒』として活躍する可能性を秘めたデッキ
▼ヨーリオンスケープシフト
ヨーリオンデッキの最右翼。《白日の下に》はお好みで。
ヨーリオンが相棒のデッキは他にも、氷雪コン・Uroza・5Cニヴ・BUG再生とあり、マナが伸びた後半戦が得意なデッキで、序盤をしのぎ切った後に構えつつ3マナを捻出することが比較的容易であり、どれも活躍できる可能性のあるデッキばかりだ。中でもスケープシフトに関しては、マナを伸ばすことに長けたコントロールデッキであり、コンボ以外での勝ち筋として明確な役割を持った相棒の運用が可能であることから、最もヨーリオンを有効活用できるデッキだと考えている。
▼ジェガンサトロン
『ジェガンサはそえるだけ』...じゃない?!
トロンの大きな負け筋のひとつに、トロンランドは揃ったが有効牌を引かないという問題があるが、それを解決してくれるのがジェガンサだ。そして、《ウルザの塔》はいとも容易く3マナをひねり出してくれるため、トロンは相棒税を最も苦にしないデッキなんだ。ジェガンサをただの5マナバニラで終わらせないために、《不屈の巡礼者、ゴロス》や《大瀑布》を採用してより有効活用する試みがなされているのが特徴で、にわかには信じがたいことだが、ジェガンサを採用したトロンが環境の76%(13/17)と主流になっている。
このデッキで懸念すべき点は《歩行バリスタ》を採用できないところで、5C人間などのアグロデッキの流行次第では従来の形に戻る可能性はある。
▼ルールスジャンド
ヨーリオンデッキの対抗馬と成り得るか?
ここにルールスジャンドをあげたことを意外に思う人が多いかもしれない。ジャンドというデッキは1対1交換の果てにトップ勝負になることが多く、最終的にはマナフラッドをするデッキだ。そして、基本的にはタップアウトデッキであるため、ルールスを手札に加えるか構えるかの2択を迫られることが少なく裏目を引きにくいため、相棒としての活躍は十分に期待できると思う。そして、その1番の要因はヨーリオンデッキの存在にある。ヨーリオンデッキが生み出す圧倒的なアドバンテージの前に従来のジャンドで勝てるだろうか。《血編み髪のエルフ》で対抗できるだろうか。どうだい、ジャンドにはルールスが必要そうに思えてきただろう?
正直なところ、《ヴェールのリリアナ》が欲しいマッチもあり、従来型のジャンドとルールスジャンドのどちらが強いかは分からないが、それはメタ次第としか言いようがない。だが、単体でも十分な性能を持つルールスのことだ、従来のジャンドが相棒としてではなく通常のカードとして採用し、真・ルールスジャンドが爆誕することも十分に考えられる。
元サヤに戻るのか否か、ジャンドくんの今後から目が離せない!
▼ルールスドルイドコンボ
『次期環境ベストアイボニスト賞最有力候補』
ドルイドコンボは数ある相棒デッキの中で最もルールスを活かすことのできるデッキだと考えている。唱えられるかわからない相棒のために《ミシュラのガラクタ》という文字通りのガラクタを入れる必要がなく、マナクリが多いためマナフラ受けとしてコンボパーツ回収の役割もあり、無限コンボが決まった後のフィニッシャーを回収することもできる。このデッキのルールスは、コンボデッキの潤滑油としてデッキの弱点を補いつつも、相棒税をあまり気にしないで済むデッキの性質とよく噛み合っており、ルール変更以前とほとんど変わらない形で運用できるはずだ。
ひとりだけ相棒を以前と変わらずに使えるデッキが次期環境で活躍するのは確実だ。
確実ッ!そうコーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実なんだ!
・『相棒』としての活躍が見込めないデッキ
ようやく日の目を見たデッキ達だったが...
活躍できる可能性のあるデッキがある一方で、多くの相棒デッキ-特にルールスを使用したアグロ系の相棒デッキが活躍することは難しいだろう。これらは、低マナ、テンポ重視のデッキであり、3マナという制約が重くのしかかる上に、相棒を手札に加えるラグが致命的で、マナフラッドの受け皿になる頃には勝負が決している可能性が高いためだ。
また、モダン版ミラクルことカヒーラミラクルも姿を消すだろう。ルールスの減少に伴う、低マナ域偏重からの離脱により《相殺》の価値が相対的に落ちるためだ。《瞬唱の魔導師》を採用した従来の青白系コントロールか、上述したヨーリオンデッキに移行する可能性が高いだろう。
・『相棒』としての活躍が未知数なデッキ
そして、今後の活躍を測りかねているデッキもある。
ジャンドと同様、従来型と争うかたちに
オボシュグルール(いわゆるポンザ)とルールスバーンだ。
ポンザは《獲物貫き、オボシュ》を得たことで、相手を妨害した挙句にフィニッシャーを引かないという弱点を補うことでポンザ史上最高に爆発力のある一線級デッキとなった。相棒税という枷を負った上でなお、《反逆の先導者、チャンドラ》や《血編み髪のエルフ》といった強力なカードを使える従来のポンザに勝ることができるのか、今後のポンザ使いの選択に注目したい。
また、ルールスバーンは上述した相棒の活躍条件から外れるにも関わらず相棒デッキとして生き残る余地を残している。それは、最後のリソースが足りずにライフを詰めきれないという展開でルールスが必要となる可能性が考えられるからだ。3点火力数枚とテンポを犠牲にした先に何があるのか先達に確かめてきてもらおうじゃないか。
・メタゲームのその先へ
"実質的な相棒禁止"を突きつけられたのは悲しいけれど泣いちゃダメだ。俺たちは前にすすまなきゃいけない。上述した相棒デッキの変化に加えて、今後のメタゲーム予想を簡単にしてみよう。
▼Back to Basics--基本に帰れ--
"大相棒時代"に数を減らしてしまったデッキが帰ってくるのは必然だ。棍棒で殴りあう古き良きモダンのメタゲームが戻ってくるだろう。
"やつら"が帰ってくる
相棒環境を生き抜いた緑単トロン・5C人間は以前にも増してその勢力を拡大するだろう。ルールスにお株を奪われてしまった《騒乱の陥落者》も赤単果敢の相棒に復帰してメタに食い込んでくるはずだ。そして、特に注意しておきたいのはルールスによって隅に追いやられたドレッジがPTQを抜けその底力を見せつけたことで、相棒が減った環境では間違いなく激増することが予想される。
絶対に!墓地対策を怠るなよ!
▼コンボデッキの栄枯盛衰
かつてないほどに一世風靡?
コンボデッキは基本的に、相互干渉せず単純に殴るだけのデッキに強いが、自分より早いか、妨害を含んだアグロには弱い。改訂後は5C人間や死の影のような撹乱的アグロと呼ばれるデッキの増加により、コンボデッキはメタの合間を縫う形での活躍を強いられることになるだろう。
そう、アドグレイス!君のことだよ!
・おわりに
これからも・・・ズッ友だょ☆(ゝω・)vキャピ
様々なフォーマットが相棒一色に染まり、最終的に...というにはあまりに早く相棒ルール自体の変更という、実質的な禁止措置がなされてしまった。今回、この記事を書いたのは、メタゲームの予想をすることはもちろんだが、『相棒ルールは本当に変更されなくてはならなかったのか?!』、モダンという限られた視点からではあるが、納得を得たかったからなんだ。
禁止改訂に限らず、理不尽と思われる措置がなされる昨今のマジック事情の中で、モチベーションを保ち続けていくためにはせめて納得することが必要なんだ。度重なる改訂措置にうんざりしているひとも、せっかくカードを買ったものの使うことなく終わってしまったひとも大勢いることだろう。この記事が、せめてもの君の納得に一役買うことができたなら嬉しく思うよ。
また、メタゲーム予想に関しては、『このトーシロが適当なこと言いやがって!』と、メタが出揃ってから笑ってもらえたら最高だ。あと、メインに積まれる可能性のある相棒カード、特に《夢の巣のルールス》に関しては大変なことになりそうだから早めに集めておけよ!早速Bigwebで注文しよう思ったが、すでに在庫が不足していて悲しみを背負ったところだ!
店舗での公認大会も解禁され、またリアルマジックが盛んになるだろう。でも、まだお店に行くのが怖いという人はBIGMAGIC主催のオンライン大会に出てみるのも良いかもしれない。せっかく用意された参加費無料の爆アド大会だ。参加しない手はないよなぁッ!
最後まで読んでくれてありがとう。もし気になることや疑問に思ったことがあれば遠慮なくtwitter(@nosonosaaan)で聞いてくれ。それじゃあ、またな。
モルテン・ノソノスキー