By Riku Imaizumi
こんにちは。「オリジナルデッキを見つけて紹介する」デッキリスト探検隊、第6回です。
面白いデッキリストを見る機会が減ってきた昨今、
「目が覚めるようなデッキリストを見たい、というかあわよくば自分のデッキをみんなに知らしめたい」
と思っているデッキビルダーのみなさまの要望にお応えし、今日もデッキリストを紹介していきます。
オリジナリティがあるだけのデッキリストは誰にでも作れます。しかしながらそれで勝つのは至難の業。
だからこそ、オリジナリティを持ち、ある程度の成績を残したデッキリストには大きな価値があるのです。
デッキリストにはビルダーの個性が光ります。
唯一無二、この世に一つしかないオリジナルデッキたち。
そんな「デッキビルダーの作品」を今日も紹介していきます!
今回お見せするのはスタンダードから2つ、モダンから1つのデッキです!
10月も半ば、『エルドレインの王権』がマジック・オンライン、アリーナ、テーブルトップの全てで参入し、もうすぐ二週間が経とうとしています。各環境にはどんな影響があったのでしょうか?
スタンダード:ケシス・デッキの後継
日本選手権2019の決勝戦を同型戦で飾ったケシス・コンボ。
環境末期で抜群の強さを見せつけましたが、主要パーツの《精励する発掘者》や《モックス・アンバー》がローテーション落ちしてしまい、デッキの崩壊は避けられませんでした。
とはいえ、《隠された手、ケシス》は単体でもなかなかに強いカードです。
墓地から《ケイヤの誓い》や《伝承の収集者、タミヨウ》を呼び戻す様は日本選手権2019の会場で頻繁に見られました。コンボがなくとも十分なポテンシャルを持つことを多くのプレイヤーに感じさせたことでしょう。
では、コンボ抜きで新環境に対応させたらどうなるのか? という疑問への一つの回答がこちら。
Designed by Jimmy Kungle
《伝承の収集者、タミヨウ》や《夢を引き裂く者、アショク》のような墓地を溜めるカードはメインから抜け、『伝説』カードたちで闘う3色のミッドレンジ・デッキに生まれ変わりました。
墓地が増えないので、墓地から伝説呪文を唱える能力は使いづらいかもしれません。
しかし、《隠された手、ケシス》はマナ・コスト軽減能力も合わせ持っています。このリストではこちらをメインとして運用するのでしょう。
単純に考えても3ターン目《隠された手、ケシス》から4ターン目《狼の友、トルシミール》or《不和のトロスターニ》が可能。アグロデッキを抑え込む強力な動きです。
『エルドレインの王権』からは《残忍な騎士》と《探索する獣》、《呪われた狩人、ガラク》が追加。
《探索する獣》はゴロスランプに強い性質からシミック・アグロなどで使われている、いわゆる「アツい」クリーチャーですが、なんと伝説のクリーチャー。
2ターン目に《楽園のドルイド》をプレイしておけば、3ターン目《隠された手、ケシス》から4ターン目《探索する獣》+《ケイヤの誓い》、なんていう回り方も夢ではありません。
《探索する獣》のおかげで比較的早く攻められるにも関わらず、《楽園のドルイド》と《隠された手、ケシス》のおかげで6マナのプレインズウォーカーの4枚投入が可能になっています。
もちろん《隠された手、ケシス》の墓地から唱え直す能力もあるので、後半戦に非常に強いミッドレンジ・デッキに仕上がっていますね。
前環境に倣い青を混ぜると《王冠泥棒、オーコ》も入れられるので、4色にするのも考えられるかもしれません。
スタンダード:親和・リターンド
今でもモダン環境に存在するデッキの一つに『親和』というデッキがあります。
かつてミラディン・ブロック期にあった親和メカニズムを利用した軽量アーティファクト・アグロのアップデート版ですが、もはや親和能力を持ったカードは一枚も入っていないにも関わらず親和と呼ばれています。
元祖『親和』の活躍以降、軽量アーティファクト・アグロを親和と呼ぶことがあったのですが、『エルドレインの王権』参入により、その流れを汲むデッキが誕生したようです。
Designed by kurukuru from Magic Online
1マナで唱えられるアーティファクト・クリーチャーが合計16枚!
1ターン目にタップインする土地も《アーデンベイル城》だけであり、絶対に1ターン目にクリーチャーを展開したいという気持ちが強く表れています。
では、2ターン目の動きはどうでしょう。モダンの親和なら《鋼の監視者》で毎ターン自軍が全てどんどん成長していきます。
そんなカードがあるわけ......。と一瞬思うかもしれませんが、あります。《鋼の監視者》、『基本セット2020』に収録されています。
それじゃあ、他のキーカードに相当するものはあるのか気になりますよね?
《頭蓋囲い》みたいな強化カードは? あります。
《きらきらするすべて》は展開したアーティファクトとエンチャントの数だけエンチャント先を強化するオーラ。強化内容だけで見ればなんと《頭蓋囲い》以上です。
60枚中なんと33枚がアーティファクトorエンチャントなので、かなりの強化が狙えそうですね。
打点が結構出そうなのはわかりましたが、《ウルザの後継、カーン》や《実験の狂乱》みたいな後半戦に強いカードはどうでしょう?
そもそも《実験の狂乱》はスタンダードに存在していますが、わざわざ赤を使わずともよく似たカードがありました。
《神秘の炉》はアーティファクトと無色のカード限定の《実験の狂乱》。土地こそプレイできないものの、タップ能力で不要なデッキトップを排除可能。
アーティファクト限定とはいえ、《ガラスの棺》のような除去カードを唱えられるので、十分強く使えそうです。
なにより《実験の狂乱》にあった「手札のカードをプレイできない」というデメリットがないのがありがたいですね。
サイドボードは追加の《島》に《秘儀術師のフクロウ》、《人知を超えるもの、ウギン》、そして《屋敷の踊り》!
より後半戦に強くシフトするようです。相手が入れてきた大量のアーティファクト破壊を《屋敷の踊り》で無力化、が実現したら非常に気持ちよさそうですね。
何よりこのデッキ、非常に安いのも特徴的です。《黒き剣のギデオン》《神聖なる泉)》を除けばほとんどのカードが1,000円以下で手に入ってしまいそうです。
初心者にもおすすめできますし、レアカードが少ないのでアリーナで気軽に試せるのも嬉しいデッキです。
モダン:ジェネリック・ドルイドの誓い(?)
《ドルイドの誓い》といえばヴィンテージ環境で古来から活躍を続けるオース・デッキのキーカードです。
《ドルイドの誓い》の能力で巨大クリーチャー(だいたいは《引き裂かれし永劫、エムラクール》)を呼び出すデッキのことですが、そのデメリットで対戦相手の場にもクリーチャーが出てくる場合があります。
そんなオース・デッキ(?)がモダン環境にやってきました。
Designed by k_f_chicken from Magic Online
キーカードは《ドルイドの誓い》......ではなく、『カラデシュ』のソーサリー、《怪しげな挑戦》。
デッキトップ10枚をめくって、そのうち1枚を相手の場に、1枚を自分の場に出します。
相手にも自分にもクリーチャーを供給するあたりが《ドルイドの誓い》に似ていますが、単純に使っただけでは相手の場に《引き裂かれし永劫、エムラクール》、自分の場に《東屋のエルフ》という絶望的な盤面になる可能性をはらんでいます。
そもそも《怪しげな挑戦》は以前からあったカードでした。なぜ今更このデッキが取り上げられるのか不思議に思うかもしれませんが、陰のキーカードは『エルドレインの王権』にありました。
『エルドレインの王権』のブリンク(一時的にクリーチャーを追放する能力の俗称)能力を持つクリーチャー、《魅力的な王子》。これや《ちらつき鬼火》で相手の場に現れた《引き裂かれし永劫、エムラクール》を奪い返してやろうという魂胆です。
《怪しげな挑戦》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》と共にめくれれば、いずれにせよ《引き裂かれし永劫、エムラクール》を手に入れることができますね!
......と、ここまで読んだ方は「ブリンクできるクリーチャーって他にもいない?」とお思いかもしれません。
実は、《ちらつき鬼火》《魅力的な王子》以外に、対戦相手の場に現れた自分のクリーチャーをブリンクできるクリーチャーはあまりいません。
スタンダードで大活躍した《修復の天使》や《守護フェリダー》は「あなたがコントロールする」ものしかブリンクできません。
一方、《ちらつき鬼火》は「他のパーマネント」。《魅力的な王子》は「あなたがオーナーであるパーマネント」。《引き裂かれし永劫、エムラクール》を取り戻せるのはこれらのクリーチャーが持つ固有の特徴なのです。
一応、《変位エルドラージ》のように適正を満たせないことはないカードは他にも存在しますが、コストに無色マナやタップが必要な能力ばかりなので、《魅力的な王子》ほど使いやすいものはないようです。
『エルドレインの王権』参入によるコンボは《湖に潜む者、エムリー》を使ったものばかり注目されていますが、新しい時代のオース・デッキも手にとってはいかがでしょうか。
以上、デッキリスト探検隊でした。
『エルドレインの王権』参入でスタンダード以外のフォーマットにも変化が見られます。まだまだ発見されていないコンボがあるかもしれません。
昨今、自分のデッキを記事にする人も増えてきました。そういった発信も良い流れだと思いますが、デッキビルダーたるもの、自分のデッキが他人の記事に掲載されることこそ本懐。
あなたの作ったデッキを紹介できる日を楽しみにしています。