By Riku Imaizumi
こんにちは。「オリジナルデッキを見つけて紹介する」デッキリスト探検隊、第52回です。
「目が覚めるようなデッキリストを見たい、というかあわよくば自分のデッキをみんなに知らしめたい」
と思っているデッキビルダーのみなさまの要望にお応えし、今日もデッキリストを紹介していきます。
オリジナリティがあるだけのデッキリストは誰にでも作れます。しかしながらそれで勝つのは至難の業。
だからこそ、オリジナリティを持ち、ある程度の成績を残したデッキリストには大きな価値があるのです。
デッキリストにはビルダーの個性が光ります。
唯一無二、この世に一つしかないオリジナルデッキたち。
そんな「デッキビルダーの作品」を今日も紹介していきます!
グリセルシュート with 《壊死のウーズ》
グリセルシュートといえば、《御霊の復讐》で《グリセルブランド》をリアニメイトし、《滋養の群れ》のライフゲインを大量ドローに変換するデッキ、という印象が強いですよね。
ライブラリーを引ききってしまえるのなら、《猿人の指導霊》から生まれるマナを起点に《引き裂かれし永劫、エムラクール》をリアニメイトしたり、《大群の怒り》でゲームが終わるまで殴り続けたり、といった形でゲームが決まります。
そのため、黒赤をベースに《滋養の群れ》のために数枚の緑のカードを投入するのが一般的なリストだと思うのですが、このデッキリストは違いました。
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ベースは黒緑。注目するべきはやはりこのカードでしょう。
墓地にあるクリーチャー全ての起動型能力を獲得する4マナ4/4。
狙う能力はもちろん《グリセルブランド》。そして《怒れる腹音鳴らし》です。
《グリセルブランド》の能力でデッキからカードを大量にドロー。その中にある土地が、ノーコストの《稲妻》と化すわけです。
自分のライフが尽きる前に7枚の土地を引ければそのままゲームエンド。デッキにはマナ・クリーチャーや《異界の進化》が入っているので、最速3ターン目にこのコンボが決まります。
さて、グリセルシュートとして紹介しましたが、実のところデッキは別物です。
一般的なグリセルシュートのように最速の2ターンキルは現実的ではありませんし、3ターンキル、4ターンキルの頻度も本家ほどではないでしょう。
では、どのような点で優れているか、チェックしていきます。
長所1. クリーチャー戦での粘り強さ
黒赤のグリセルシュートと異なり、墓地を溜める手段をクリーチャーに寄せています。
必然的に黒赤型が得意とする「狙ったカードを墓地に落とす(《傲慢な新生子》など)」ことは苦手にはなりますが、反面、「大量に墓地を溜める」ことは得意になります。
また、小型のクリーチャーを大量に採用したことで、赤単果敢などのアグロに対して時間を稼ぎやすくなりました。
コンボデッキにとって、無理なく対戦相手を減速させられるのは非常に有益です。
それだけではなく、もしも泥仕合になったならクリーチャー戦でゲームを制することも可能かもしれません。《異界の進化》から《夢の巣のルールス》をサーチすれば、ターンを経るごとにクリーチャーが増えていきますから。
裏を返せば「速度が遅くなった」という短所にも繋がるのですが、個人的には損失より恩恵の方が大きいと思います。
速度特化の黒赤型は、《思考囲い》や《否定の力》に弱いですし、そうした妨害をしてこないアグロすら、昨今のモダンではコンボに迫る速度でライフを削ってきます。勝てるかどうかは互いの回り方に左右されやすくなりますね。
こちらの黒緑型ならば、もちろん妨害には弱いものの、最悪クリーチャーで殴りまくれば戦えます。アグロ耐性は先述の通りですしね。
長所2. サーチカードが豊富で、状況打開が得意
《壊死のウーズ》のために《異界の進化》と《獣相のシャーマン》が合計8枚入っており、状況に合わせてクリーチャーをサーチできるようになっています。
メインデッキはコンボを狙うためクリーチャーの種類は多くありませんが、サイドボードには実に10種類ものクリーチャーを搭載しています。
そのマナ域は、《異界の進化》でサーチしやすい3~4にほぼ絞られています。
墓地を活用するデッキは墓地対策に弱いのが当たり前なので、サイドボードには対応策を用意しておくもの。
このデッキはサーチカードが豊富なので、状況ごとにクリティカルに刺さるクリーチャーを入れておけば十分に対応策になります。
サイドボードを黒赤型と比較すると、本家がなんとかしてサイドボード後もコンボを決めに行こうと《神聖の力線》や《否定の契約》を使うのに対し、
こちらの黒緑型は無理なく相手の対策カードを外せる構成になっていて、扱いやすそうです。
そしてなにより《夏の帳》のおかげで、サイドボード後もコンボを通しに行くプランを強行するオプションもあるのが心強いですね。
《ニヴメイガスの精霊》
《ニヴメイガスの精霊》、ご存知ですか?
スタック上の自分の呪文を犠牲に、自身のパワー・タフネスをもりもり成長させていきます。
非常に奇妙なこの生物を中心に据えたデッキがこちら。
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コンボとクロック・パーミッションの中間といったアーキタイプでしょうか。
勝利手段はほとんど《ニヴメイガスの精霊》のみ。《血清の粉末》が入っていることからも、絶対に1ターン目に出すという意志をひしひしと感じます。
スタック上のインスタントかソーサリーを食べるほどに強くなるわけですが、実はコピーでもOK。
ということで、ストーム呪文を駆使してもりもり成長させていきましょう。
事前にインスタントかソーサリーを4枚スタックに乗せてからストーム呪文を唱えれば、スタック上に9個の呪文が並びます。
それらをすべて食べれば9×2で+1/+1カウンターが18個。元のパワーも合わせて19点クロックですから、概ねゲームエンドです。
さて、コンセプトはなんとなくわかりますが、デッキの構造が特異なのでどのような動き方になるのか想像がつきにくいですよね。
各カードの枚数から、ゲームをなんとなくイメージしてみましょう。
◆土地 13枚
土地はわずかに13枚。デッキの約22%です。
22%というとだいたい5枚に1枚程度の確率ですから、初手に必要な土地は1枚ということでしょう。
そもそも4枚しか入っていない《ニヴメイガスの精霊》が初手になければ始まらないデッキなわけですから、土地13枚で驚いていてはついていけないかもしれませんね。
◆0マナの呪文 21枚
《ニヴメイガスの精霊》とストーム呪文に次ぐ、デッキの根幹を支える0マナ呪文。これを何枚唱えられるかで勝敗が変わります。
《外科的摘出》のみ1枚で、あとは4枚搭載の合計21枚。割合にして35%。3枚に1枚程度の確率で引けますから、初手(7枚)には2枚。ゲームが決まりそうな3ターン目までの手札(9~10枚)には3枚ほど引けていることが多いでしょう。
そう考えると、0マナ呪文を3回ほど唱えてからストーム呪文を使うことが多くなりそうですね。
その場合、《ニヴメイガスの精霊》のパワーは15ということになります。
◆ストーム呪文 9枚
ストーム呪文は9枚。1マナのものを優先的に採用し、次点で勝利手段にもなる《ぶどう弾》を選択、といった感じでしょうか。
残念ながら1マナのストーム呪文はこの2種類しかないので、これ以上増やしようがありません。
割合で言うなら15%。6枚に1枚ないくらいの確率ですので、初手に1枚あれば良い方でしょう。
◆サポートカード
《猿人の指導霊》は1ターン目の《ニヴメイガスの精霊》を絶対に守るための採用でしょうか。
《使徒の祝福》と組み合わせれば、《致命的な一押し》や《流刑への道》をかわせます。さながら《否定の力》ですね。
あるいは瞬間最大速度を上げるためにも使えるでしょう。
ストーム呪文のキャストにはどうしてもマナが必要ですから、《狼狽の嵐》と《大地の裂け目》を同時に唱える時に役立ちます。
《この世界にあらず》は他とは少し毛色が違いますね。
前提として、育った《ニヴメイガスの精霊》を守るために使うのでしょう。餌として使用することはほとんどないと思います。
このカードが入っていることで、常に一撃死を狙うのではなく、ある程度育てて2~3回攻撃をするプランもとることがわかりますね。
総合すると、このデッキの動きは基本的に以下のようなりそうです。
1. なにがなんでも1ターン目に《ニヴメイガスの精霊》を出す
2. 手札にストーム呪文と0マナ呪文が十分にあれば一撃死ルートを狙う。
そうでなければ、0マナ呪文を適宜唱えて《ニヴメイガスの精霊》を育てつつ、《使徒の祝福》や《この世界にあらず》で守り、クロック・パーミッションを遂行。
サイドボードには《天主の勢力》というマイナーなカードも採用されていて、実に興味深いデッキです。
クロック・パーミッションとコンボが好きな方は、試しに回してみてはいかがですか?
《大建築家》
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こちらは《大建築家》をメインに据えたデッキ。ブルースティールという呼び名もありますね。
以前から存在しているデッキタイプですが、近年のセットのリリースによりアップデートが入っているようです。
タップしているクリーチャーの数だけライフを削っていく《王神の玉座》。攻撃にいけない状態でも《大建築家》の能力でタップするだけなら簡単ですし、攻撃が通るなら単純にパワー+1をしている計算でダメージレースを仕掛けられます。
《王神の玉座》自体は『アモンケット』発売後から採用されているようですが、《フェアリーの予見者》が加わったことで序盤からの展開がよりしやすくなりましたね。
そして、頼もしいのが《石とぐろの海蛇》の加入。
構造上、《大建築家》や《エーテリウムの彫刻家》がうまく組み合わされば大量にマナが出るのですが、相手の除去で簡単に妨害されてしまうので安定しているとは言えません。
かといって大量のマナの使い道を用意しない構築にしてしまえば、長所を自ら捨てるのと同様です。
《歩行バリスタ》に続いて《石とぐろの海蛇》という候補が生まれたことで、大量マナが出る状況にもそうでない状況にもフィットしやすくなりました。
もう無理に《ワームとぐろエンジン》などをメインデッキに採用する必要はなさそうです。
地味にアップデートが入っているマナベースも見てみましょう。
どのデッキでも使いやすい《冠水樹林帯》の説明は不要ですね。
《清水の小道》は《泥水の小道》としてプレイすることで、《四肢切断》のファイレクシア・マナの支払いを [黒] で行えるようになります。
それから、このデッキリストには入っていませんが、青単のパーマネント処理に欠ける欠点を補えるよう、《仕組まれた爆薬》を採用するときにも役に立つでしょう。
また、こうした《島》に近い扱いができる土地にはもうひとつ、《沸騰》への対策になるという利点があります。
特に『ゼンディカーの夜明け』の「小道」シリーズは使いやすいので、色のタッチなど新しい選択肢も生まれてくるのではないでしょうか。
以上、デッキリスト探検隊でした。
昨今、自分のデッキを記事にする人も増えてきました。そういった発信も良い流れだと思いますが、デッキビルダーたるもの、自分のデッキが他人の記事に掲載されることこそ本懐。
あなたの作ったデッキを紹介できる日を楽しみにしています。