最近、マジックで話題となっている禁止カードについて。10月、11月と立て続けにスタンダードで禁止カードが指定され、パイオニアでも週に1回のペースで禁止を指定するかもしれない...というのが2019年の秋から冬にかけてのマジックシーンの状況。
一言でまとめるなら、荒れ模様だな。正直言って嬉しい盛り上がり方ではないね。でもまあ、避けては通れないものなんでこのまったり系コラム(を目指している)でもそれについて取り上げようと思う。
個人的には禁止カードというものは、チャレンジ精神と正義感を併せ持つが故の悲劇と捉えている。エキサイティングなゲーム体験、未だかつてなかったメカニズム。いつまでも遊んでくれるマジックプレイヤーに常に新しいものを届けようとするチャレンジとサービスに満ちた精神が、時に怪物を生んでしまう。そしてその怪物を野放しにしまいとする無常とも言える決断によって、人々の心は翻弄されるのである。
禁止カードが出たことによりマイデッキが壊滅的な状況になってしまったという人を幾度となく見てきた。彼らは皆口をそろえてそのようなカードが生み出されたことに対する怒りをぶちまける。だが数週間もすれば、次なるデッキを手に嬉々としてマジックを楽しんでいる人が...かつては多かったかな。すっかりアリーナ専になってしまったのでカードショップに通っていた頃のかつて仲間達が今どう思っているかは何とも言えないが。
ただ僕自身も《死者の原野》や《王冠泥棒、オーコ》が禁止になる前の方が、文句を言いながらもなんだかんだスタンダードをプレイしていたのは間違いない。だから、これからもどんどん禁止になるようなやべーカードを作ってくれ!とは言わないが、チャレンジ精神に溢れたカードをぎりぎりまで攻めるつもりでデザインしてほしいなと思う。
さて、これで終わってもいいんだが、それじゃあコラムとして面白くもへったくれもないので、強引にネタをひねり出そう。非常に繊細な問題であり、対処1つでユーザーの神経を逆なでしてしまいかねない禁止カードという存在を、かつてオフィシャルに盛大にネタにしたことがあったことをご存じだろうか。それは2009年夏に発売された特殊セット『From the Vault:Exiled』。
そうか、もう10年前なんか...怖いなオイ。このセットは専用仕様のFoilと新枠、新絵になったりした15枚のカードを収録した豪華セットである。その内容が...流刑/Exiledの名の通り、かつてトーナメントから追放処分を喰らったことのある禁止カード達の中から厳選された15枚であったのだ。
過去のことだから、ほら許してよという姿勢。実に良し。その内容もなかなか良かったものだから、ユーザーはこれを見な好意的に受け止め、この限定生産セットを欲したものである。まだ再録されておらず、高価なカードの1つであった《狂暴化》が新規イラストで収録されているのが目玉だった。収録カード15枚は以下の通り。スタンダードのみならず、ブロック構築など今はもうなくなってしまったフォーマットで禁じられた面々も収録されている。
《天秤/Balance》
《狂暴化/Berserk》
《チャネル/Channel》
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》
《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》
《密林の猿人/Kird Ape》
《水蓮の花びら/Lotus Petal》
《神秘の教示者/Mystical Tutor》
《ネクロポーテンス/Necropotence》
《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top》
《セレンディブのイフリート/Serendib Efreet》
《頭蓋骨絞め/Skullclamp》
《露天鉱床/Strip Mine》
《修繕/Tinker》
《三なる宝球/Trinisphere》
いやさすがにこれはそら禁止(笑)って感じのぶっ壊れカードから、え?こんなんわざわざ禁止やったんか?まで千差万別のラインナップである。《ネクロポーテンス》とか《天秤》とか《チャネル》とかね、今でもレガシーで使えん太古の昔のアカンやつらですわ。
《修繕》とか《頭蓋骨絞め》が許されるわけがないし、《師範の占い独楽》はこの後に改めてレガシーで禁止になったり。そいつらと肩を並べて《密林の猿人》。い、癒し~^^なんと猿人君、スタンダードのみならずエクステンデッドというフォーマットが制定された当初からの禁止カードでもあったという(ローテーション落ちした後、『第9版』に再録されてサイレント解除)。
この『From the Vault:Exiled』はなかなか面白い試みだった。あれから10年、やんちゃをしでかして追放されてしまったカードはいっぱい増えたぞ。今こそ、流刑地に送られた者たちの饗宴を再び開催する時ではないか。ということでここから本題!
第11回 勝手に作ってやったぜ!From the Vault:Exiled Ⅱ
ちゅうわけでね、独断と偏見で15枚の禁止カード詰め合わせセットを作っちゃおうじゃないの。早速だが1枚目。
《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》
やっぱり看板はこの方でしょう。スタンダード登場からわずか49日(2019年11月)で禁止になった文句なしの最強プレインズウォーカー。色々数字間違え過ぎだろと総ツッコミの嵐、改めてコストの軽いプレインズウォーカーのデザインは難しいんだなぁと実感。
個人的には、結果として禁止になってしまったことはマイナスではあるがこれぐらい攻めたデザインのカードを作ってくれたことはプラスだと思っている。弱いカードでピチピチペチペチやるのも面白くないじゃない。今は憎くとも、オールフォーマットで活躍するようなカードがいたスタンダードをプレイしたってのはいつか良い思い出になるはずよ。
あれ、禁止だったっけ?禁止にしろしろと声高に叫んでいた記憶はあるけども...って方もいるはず。《運命のきずな》は特殊な禁止枠としてこのセットに収録することにした。「MTGアリーナのBO1(一本勝負)スタンダードにおいてのみ禁止」という狭い範囲での禁止カードだ。
そのおかげでスタンダードのデッキを構築して完了ボタンを押すと毎回毎回「禁止カード入ってるけどええんか?気ぃつけぇよ」とアラートが表示される始末。そのタイミングではBO1スタンダードはまったくプレイしていなかったので余計にいらん心配すなと思ったものである。結局は通常のスタンダードでは禁止になることはなかった。その要因となった一人のプレインズウォーカーは後に全世界から鬼のようにヘイトを買うように。誰のことかわかるよね。
2016年11月16日にパウパーにて禁止カードに。これは定期的な禁止改定のタイミングではなく緊急のものであり、そういった形で禁止となったのは《記憶の壺》以来だった。この記録もレアなものではあるが、個人的には初出から最も時間を経て禁止となったカードでもあるんじゃないかと考えている。
『ウルザズ・サーガ』の発売日が1998年10月12日なので、デビューから禁止になるまでなんと18年と1ヶ月。何故こんなことになったのかというと、元々アンコモンだったからだ。『エターナルマスターズ』にてコモンになったことでパウパーで使用可能になり、結果環境を完全に破壊してしまった。やはりタダで唱えられる類のカードは(アカン)。
2011年1月にモダンにて禁止カードに、ヴィンテージではそれよりも3年早く制限カードに指定されていた。この手のカードの強さはカードプールに左右されるもんだね。かつてはスタンダードにも存在したわけだし、個人的にはプレイヤーの腕が問われる非常に良いカードだと思っているのでまた基本セットなんかに入っても良いんじゃないか...なんて考えたりもするが、パイオニアのことを考えたらない方がええか。《選択》で我慢しろってことですわな。
《密林の猿人》リスペクト。2012年1月1日にモダンにて禁止カードに。ビートダウン=この1マナ3/3を主役にした「Zoo」ばっかやないかい!生物の多様性をこの1マナほぼノーリスクの3/3が奪っとる!《ツリーフォークの先触れ》を《包囲の搭、ドラン》で1マナ3/3にしたり、《闘争の学び手》をレベルアップさしたり色々とやってほしいわい...という理由で禁止カードに指定された。
結局、ナカティルが禁止になったところでモダンでそういったカードを使うデッキが出てくることはなく、むしろビートダウン不在という状況になったので約1年後に解禁となった。2019年現在、全然見なくなったね...昔はレガシーでも最強の1ターン目を飾るカードだったんスけどねぇ。
2017年1月20日:モダン
2017年4月24日:ヴィンテージ(制限)
2018年7月6日:レガシー
2018年7月6日:パウパー
...すんげぇ禁止遍歴。というよりも禁止にならなかった期間が長かったね。死ぬほど言われてることやけども、《のぞき見》が0マナになっただけでここまで強くなるとは。マジックから手札の読み合いという大事な、そして楽しい要素を奪った罪は大変に重い。4枚使えるフォーマットは今後なくてよろしい。
個人的には2014年くらいにレガシーの大会にオリジナルデッキを持ち込んだ際に対戦相手に「ふ~ん...ファンデッキか」とつぶやかれながらお前もう死んだやろ感全開で《実物提示教育》を唱えられた時に「この○○カードを今すぐ禁止にしろ」と思ったもんです。ファンデッキのネタバレすることもない、良い世の中になったね。
忘れられないプロツアー『ゲートウォッチの誓い』。エルドラージが大勝利してゲートウォッチとはなんですのん状態に。モダンにおいて、《難題の予見者》と《現実を砕くもの》ら中型エルドラージを《エルドラージの寺院》とこの《ウギンの目》で最序盤から高速ダンプするデッキが大暴れ。特にブン回りパターンとして1ターン目《ウギンの目》から《エルドラージのミミック》を複数体プレイする動き。これはほんまにアホやったね、フィーチャーマッチでも1ターン目に2匹出して2ターン目《難題の予見者》から8点とかいうバカげたムーブが当たり前のように飛び交っていた。
地獄と化したモダンを救うために2016年4月8日にモダンで禁止に。元々は7/7のエルドラージになったりトークンを生み出したりする、普通に①生み出す土地にしようとデザインされていたらしい。それだと良くも悪くも禁止になるようなインパクトは残せ無かったろうな。
《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
2017年1月20日にスタンダードにて禁止に。2011年の《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》以来のスタンダードでの禁止カードに皆びっくら驚いた。《霊気池の驚異》からコストを踏み倒して唱えられるこれは、強すぎてそしてどちらかといえば楽しくないゲーム体験をプレイヤーにもたらしてしまった。
カードデザイン自体はエムラクールのイメージを完璧なまでに再現したものであり、単体で見れば「なんとか工夫して使ってやるぞ」と思える面白いものだったのだが...まあ同じ時代に存在するカードがヤバすぎた。同じタイミングで《密輸人の回転翼機》と《反射魔道士》も禁止になったことで、スタンダードからは強すぎるカード・ストレスフルなカードが減った形になった。この時は3枚同時とは思い切ったなぁと思ったよねぇ(つい最近同じような気持ちになったねぇ)。
《甦る死滅都市、ホガーク/Hogaak, Arisen Necropolis》
我々は決して忘れてはいけない、あの「ホガークの夏」を。そのあまりの強さのためにホガークデッキを弱体化しなくては、でもさすがに出たばっかりの『モダンホライゾン』から禁止は出せねぇわと言わんばかりに《黄泉からの橋》が禁止されるも...意味がなかったとは言わないが、ホガークサイドはそれを意に介さなかった!
ヤツらはミシックチャンピオンシップの台風の目となり、そのせいで《虚空の力線》が最も使われたカードになるなどという歪み切った環境となってしまった。モダンを地獄にするまいと、2019年8月30日に禁止に。最高の相棒である《信仰無き物あさり》と共に追放され、死滅都市は本来の意味通りに死者が静かに眠る地となった。探査という能力はもう未来永劫封印した方が良いよね。おそらく。どうなんだろう。
今回の最古参。1996年7月1日にスタンダードで制限カードになり、翌年1月1日にスタンダードにおける制限カードの廃止と同時に禁止カードに格上げ。1998年7月1日にエクステンデッドで禁止となり、さらに2004年9月20日より新設されたレガシーでも禁止に。ただ、レガシーで禁止になっている理由は正直なところよくわからず。そりゃあスタンダード当時は強かったんだろうが、レガシーというゲームにおいてこのカードで基本土地をいっぱい手に入れることは大した問題じゃないだろう、レガシーはそういうゲームじゃないよねというわけで2012年6月29日に禁止が解除された。
8年間なんとなく檻に入っていたわけで、まあ冤罪だったねおめでとうと。結局、解禁されたこのカードが猛威を振るうなんてこともなく、さらに時代が進んで『バトルボンド』に普通に再録されるくらいには平和なカードとして認定された。まあ書いてあることは決して弱くないんだけども、なんというか現代マジックには置いてけぼりをくらってるよね。
現行禁止になっているカードばっかセットにしても売れんだろ、という冷静な判断なもと投下された購買欲そそり枠。おうオーコとリシャポ欲しいやろほら買って買って~ってなもんですよ。2000年7月1日マスクスブロック構築で禁止に。このブロック構築は《果敢な勇士リン・シヴィー》も禁止になっており、狭いプールで地味に2枚もヤベーやつがいたという記憶に残るものである。
スタンダードでも強かったけども禁止になるほどじゃなかったね。まあ多色デッキは存在を否定されたけども、そもそも多色のカード自体がスタンダードにない時代でもあったし。レガシーぐらいカードプールが拡がればそういう戦略も狙っていこうぜとむしろ肯定されるものの1つになったり。最新セットでうっかり同型再版なんか出したらそれはすぐ禁止になるでしょう。
2008年6月20日、ヴィンテージにて制限カードに。では禁止になったフォーマットは何でしょう。これを知っていたらなかなかのマニアだ。答えはプリズマティック!...何それというリアクションは正しい、僕もプレイしたことはない。このフォーマットはデッキの最低枚数が250枚、各色を最低20枚ずつ入れなければならないという5色縛りでプレイするMagic Online専用のカジュアルなものだ。
せっかく混沌としたゲームを味わうフォーマットにおいて、ライブラリーから特定のカードを探すサーチは無粋!というわけでありとあらゆるサーチ呪文が禁止されており、《商人の巻物》もその1つというわけ。リアルでやるならシャッフルだけはとにかく面倒だろうな。アリーナで期間限定フォーマットとして復活させてくれるなら遊んでみたいとは思う。
《暴れ回るフェロキドン/Rampaging Ferocidon》
禁止カード界で対となる存在である《守護フェリダー》と迷ったが、とばっちり禁止という歴史を伝える意味でもこちらに。《守護フェリダー》&《サヒーリ・ライ》の開発が意図していなかった無限コンボの対抗策としてデザインされるも、そのコンボは結局のところ禁止により消滅。置き去りにされたアンチコンボ兵器は、赤単のサイドボードに居場所を見つけたが...今度は他のデッキの台頭を抑えるための禁止が出された際に「一強が居なくなったところで結局赤単が強くなりすぎるとダメだから」という理由で、2018年1月19日に巻き添え禁止指定を被弾。
本人が悪さを働いていないのに「後の悪になるから」と半ば言いがかりで禁止にされたという事例はマジック史においても稀有なもの。そして1年7か月後の2019年8月30日、ローテーション落ちまで1か月少しのタイミングでこの恐竜の禁は解かれた。スタンダードで禁止になったカードがローテーション前に解除されるという例は史上初のことであり、フェロキドンはいろんな意味で記憶にも記録にも残る1枚となったのだ。
何度もいろんな形で再録・配布されたのでもう競技プレイヤーは持ってるっしょという理由で逆に再録はしやすそうな荒廃者くん。2005年3月20日にスタンダードで禁止に、さらにそれからジャスト1年後にミラディンブロック構築でも禁止に。ちなみにこのブロック構築で禁止となったカードは全部で10枚!マスクスブロックの比ではないとんでもねぇ環境でございますわ。
ちなみにこれらのカードが禁止されたタイミングでは、ミラディンブロックは最新のブロックではなかった。競技イベントも開催されないであろうフォーマットに何故禁止改定が?実はこれ、ブロックパーティーなるカジュアルフォーマットのためであると言われている。
お互いが好きなブロック構築のデッキを持ち寄って戦う最強ブロック決定戦という趣のフォーマットで、この平和なマジックを楽しむ場で《電結の荒廃者》とアーティファクト土地らがむちゃくちゃ暴れ回ってヒエヒエという事態を防ぐための措置なんだとか。お気遣い痛み入るね。
スタンダードというフォーマットが制定された時から制限カードであり、1996年2月1日に禁止に格上げ。エクステンデッド、レガシーでも制定当初から禁止である。ヴィンテージでは制限になっている時期もあったが現在は解除されているが、使っているデッキを見たことはない。
確かにえげつなさ極まるランダムハンデスではあるのだが、マナ効率で考えれば《トーラックへの賛歌》の方が良いので、レガシーで解禁しちゃっても良いんじゃないのという気になる。
《暗黒の儀式》とか使って全力で手札を捨てさせようとするデッキなんか登場しても、そっちも手札吐き切ってるから結局強くないと思うんですよ。同じぶっ放すなら即座に勝つコンボの方を選ぶんじゃないんスかね~って気持ちで過ごしてます。マスターピース版のイラストがカッコイイので通常枠のやつも欲しいなって思いも。
以上、独断と偏見で選んだ禁止カード15枚。いかがだったでしょうかなんて聞きませんよ、やりたいことをやらしてもらった。楽しく原稿が書けて私は満足よ。色々とショッキングでなるべく出てほしくはない存在である禁止カードではあるが、まあ後に笑ってネタに出来たら良いよねという思いを込めて。ほなまた。