岩SHOWのEssay:The Gathering 第1回『初めて剥いたもの、岩麻呂』

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 毎度、ショー岩や!毎度ってほどでもないか?しばらくプレビュー以外で何も書いてなかったもんな...最近マジックを始めた人に向けてって意味合いも込めて、改めて自己紹介。私、岩SHOW(いわしょー)と申します、いわって読むの大事ね。こないだ初見のカード屋さんに遊びに行ったら「もしかして、ガンショーさんですか?」って聞かれて、あまりにも慣れてないサウンドだったもんだから「いやちゃいます...けどそうです」とかいう意味不明な返事しちゃったって!昔は毎週配信で名乗ったり共演者(村栄さん)に名前呼ばれたりしてたからサウンドで覚えもらえてたけど、最近そういうのもめっきりやってないからしゃーないわね。


マジック日本語公式サイトにてデイリー・デッキという連載をやらせてもらってるけども、元々はBIG MAGICで広報関係を中心に働いておったんですわ。今は辞めてフリーランスで色々とやっとりますが、BMとの関係は保たれたままでこうして記事を書いたり、マジックフェストなどのイベントのお手伝いをしたりと一緒に仕事をしているというわけ。だから未だにBMの中の人という印象はあるようで、外部の人間にはわからないことを聞かれた挙句に「なんで自社のこと知らないの?」とか煽られたりも(笑)。


辞めた時には「なんでやめたの?」「クビ?」とかいうコメントが配信でもしばらく投下され続けて、自分らほんま...そういうとこやぞと思ったもんです。まあそれはええとして、そういった縁もあって改めて定期連載の記事をやってみないか?とお誘いいただいたわけですわ。返事は勿論「Hell yeah!」



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 で、書くには書くが何を書こう?プレイヤーとして何か成し遂げたこともないし、デッキ調整記とかも書けんしなぁ...と担当者(村栄さん)にLINEを送ったところ「フリーダムで良いっすよ、お待ちしております!」と頼もしい返事が。そうか、フリーダム...毎週思い付きでなんかやったらええんか。「なんであれマジックに関連していれば良いので」という認可が下りた。マジック25周年の際に、公式で色んな人にインタビューやってたん覚えてるかな?「マジックは人生」ってアンサーが多かったよね。ほんならマジック=人生が成り立つわけで、つまりは何書いてもええってことや。勝ちました!



第1回 初めて剥いたもの、岩麻呂


 


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 さあ1回目。何事も初回が大事だ。人生、どんなことでも初めての体験ってのは覚えているもんだ。例えば小学校初登校の日のこと...僕は事故に遭って後頭部を怪我して何針か縫いました。麻酔を打たれた後も全然感覚があったことはありありと思い出される(そら忘れんわな)。そんなわけで、マジックにおける初体験...初めてのパック剥きについても記憶はそこそこ鮮明に残っている。


そのパックは『ウルザズ・サーガ』で、《ファイレクシアの巨像》がデザインされたパックだ。他には《セラの伝令》《キマイラ杖》のデザインがあったね。今振り返るとサーガのブースターはシブい。メインカラーの焦げ茶色と羊皮紙っぽいクリーム色が、古の兵器とその設計図を想起させて、何の予備知識がない状態でもこのセットが遠い過去のことを扱っていることが理解できる。


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1998年10月12日に発売されたこのパックは3セットからなるウルザ・ブロックの最初のセットだ。ウルザがその弟ミシュラとの戦いを経てプレインズウォーカーとして覚醒、弟を人間ならざる者へと変えてしまったファイレクシアへの復讐を果たすため、各次元を飛び回り知識と力を得て、故郷ドミナリアのトレイリアに魔術師のアカデミーを設立。テフェリーやジョイラなど才能溢れる少年少女を集めて教育しつつ、時間に関する研究を行っていた...という壮大なストーリーを描いたものだ。全350種類のカードの中にウルザの闘いの日々が描かれている。



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主人公ウルザは白髪の老人だ。要するにジジイ。他のカードゲームがかっこいい魔法使いやドラゴン、愛嬌溢れるモンスターらを描いたわかりやすくかっこいいディスプレイなのに対して、アーマーに身を包んだジジイが左手を差し出しているマジックのディスプレイの硬派さときたら...そんなんに心を惹かれたキッズおるんか?おる!ここにおる!


「俺はもうちゃらいゲームやのうてこういうシブい世界に踏み込んでいくんや」そんな気持ちでサーガのブースターを1つ手に取った。まあ1つですよ。だって当時、希望小売価格500円よ?中1のお小遣いではそんなに買えないって!おばあちゃんに貰ったお小遣いで構築済みデッキ「疫病」と併せて1パック購入したのである。それが僕の人生最初の75枚だ。


 


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 『ウルザズ・サーガ』といえば歯車が2つ噛み合ったエキスパンション・シンボル。このセットの前作『エクソダス』より導入されたシンボルの色でレアリティが分かるという、今日まで続く親切仕様。昔はどれがレアかアンコモンか、カードリストがないと分からなかったとか今じゃ考えられんね。そういう段階を経てきているあたり、史上初のトレーディングカードゲームってことを実感できる。


何はともあれ、パックを剥けば自分が何のレアを手に入れたのかわかるように出来ているのだが、このセットから始めたばかりの中1キッズにはそんなこと知る由もない。そもそも他のカードゲームではレアはゴテゴテのギッラギラに装飾されていて一目でわかるものであるのに対し、サーガ当時はFoilもなかったのでどのカードも等しくシブめの通常仕様。そこらへんもマジックの魅力に感じたね、俺らは子供だましのキラカードには騙されん、本当にカッコイイのはこういうカードなんだぞと。まあ後にFoilかっこええ~マスターピースのゴテゴテ感良いなぁ~って先祖帰りするんすけどね。


 


話はそれましたが、要するにパックから出てくるカードのレアリティはどうこうなんてまったくわからない状態。でもそんなことは関係なく、出てくるカードの1枚1枚が放つ、これまでの人生(13年)に存在しなかった魅力に一瞬で魅了されたのである。写真かと見まがうような写実的なものから、漫画やシリアルのパッケージから切り取ったかのようなポップなテイストのものまで、様々なイラストが感性をビシビシと刺激した。こんな色んなカードが共存する世界観ってなんなんだ!とね。


 どれもこれも魅力的な15枚だったと記憶しているが、中でも注目の的だったのは2枚。


 


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 《変異種》!そう、青い悪魔と呼ばれた、ベテランプレイヤーにはお馴染みの1枚である。5マナで基本スペックは3/3、パワーが5まで上昇し飛行も得られるので打点は高い。「呪文や能力の対象にならない」後に被覆と呼ばれる能力も得ることが出来、単体除去で倒すことは至難の業。アンタップしたりタフネスを上げたりといった細かい芸当を持ち合わせており、ウルザ・ブロックの残りの2セットがリリースされた後には、これをフィニッシャーに据えた青単色のコントロールデッキが環境最強の名をほしいままにした。スタンダードにおける最強クリーチャーといえば《変異種》、そんな時代を代表するレアカードだ。


 


 なんてことは、マジックを始めたばかりの人間にはわかるはずもなく。これが現代であれば、皆パックを剥いたりMTGアリーナ上で手に入れるなりしたレアで検索をかけて、カードパワーが高いのかどうか・これを用いたデッキがあるのかを調べるのは容易。


これが1998年ともなるとそうはいかない。何せこちとら、ハ〇キルーペを装備しなければ読めないほど字が小さなルールブックしか、マジックに関する情報源は持っていない。インターネットなんてまったく発展していないんだからどうしようもない。なのでどのカードが強いか弱いかではなく、雰囲気が良いかどうか。それがカードの価値のすべてだったのだ。


 《変異種》は鏡合わせになった同じ顔の人物が同じポーズをとっているものの、片方の背後からは尻尾や羽のようなものが飛び出しており、これが人間に化けている何かだということが伝わってくる。SFにはよくあるシチュエーションで、イラストから変幻自在の存在だということが瞬時に理解できた。「多相の戦士の召喚」という一文もそれを後押ししてくれたね(当時クリーチャー呪文はすべて○○の召喚と記されていた)。《変異種》の能力は複雑でよくわからなかったが、一目でお気に入りのカードとなった。


 アンコモンである《ツリーフォークの若木》も同じく、見た目が気に入った。完全にイカゲソでしょ、こいつら。イカゲソが森から這い出てきているのである。面白くないわけがない。そんな《変異種》と若木を含む初めてのカード達を眺めつつ、構築済みデッキ「疫病」も開封し、同じ日に「速攻」デッキとサーガのブースターを買っていた友人と初めての対戦を行った。ルールに関しては間違いばかりでむちゃくちゃだったが、それでも楽しかったことを覚えている。


 


で、ゲーム後にお互いのブースターから出たカードを確認した。その時友人のパックにどんなカードがあったのかは全く覚えていないのだが、未知のカード達に触れた後にこう提案された。「こいつ、替えてくれへん?」と。こいつとは若木のことである。僕が購入した「疫病」は黒白で、友人の「速攻」は赤緑。お互いにデッキに入れることの出来るカードはその2色に絞られているのだ。なので僕の若木もプレイすることの出来ない、持ち腐れ状態ではある。だったらこっちの白か黒のカードと交換しないか?という、ごくごく自然な動機でのトレードの持ちかけだった。


その考え方には僕も同意した。懐事情からもおそらく《》はすぐに手に入らない。だったら《》を持つ友人に若木を贈ろう!そこで僕が一体何のカードを貰ったのかは全く覚えていないが、とにもかくにも初めてパックを剥いた日に初めての対戦を行い、初めてのトレードにも至った記念すべき一日となったのであった。


 


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 僕らがマジックを始めたことで、他の同級生も興味を持つようになった。マジック仲間が増え、構築済みデッキ「墓石」を購入し、青黒でデビューを切った友人が登場した。その友人からこう提案された「《変異種》欲しい!」と。僕はそのタイミングで青マナが出る土地は1枚も持っていない。若木と同じ理由で、トレードに出すことが自然な流れではある。その友人の手持ちのカードを見ると《真に暗き時間》があった。


 


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クリーチャーがすべて黒になる。僕のデッキに入っている《優雅の声》や《黒の防御ルーン》でちょっとしたコンボが出来る。そして何より、イラストがカッコイイ!雰囲気満点、黒いカードのダークさにハートを鷲掴みにされていた中1にはこれは強烈な刺激であった。当時自分の中で最強と思っていた《抹殺》が効かなくなるのは痛いが、でもまあサイクリングすれば良いか...というわけでトレード決定!


 


 と、意思表示をしようとしたとき、不意に逡巡。ここで引っかかったのは若木の存在である。使わないカードだったのでそれよりは色が合うカードを、ということ自体は正しいことだったと思う。しかしながら僕は若木を手放したことを後悔していた...と、この時に気付いた。あのイカゲソ、味わい深いイラストを眺めることは出来ないのである(もう一度パックから当てない限りね)。《変異種》も使っていないが、イラストがカッコよくて毎日勉強机にカードを拡げながら手に取ってじっくりと堪能していたカードである。マジックを日々遊ぶにつれ、初めて剥いたパックから出てきたということにも重みが生じてきていた。このカードは手放しちゃいけない。そんなわけでこのトレードは断った。


 


 それから半年ほど後に、マジックを取り扱っているお店を巡るうちに、僕らはシングル販売をしているお店と出会った。それまでは街のおもちゃ屋やテレビゲーム屋などパックのみを扱っているお店しか知らなかったので、カード1枚1枚に値段が付けられていることは衝撃的だった。そこで《変異種》は売り切れており、《真に暗き時間》は200円くらいで売っていたように思う。やっぱり《変異種》は手放さなくて良かった、あれ以降サーガのパックを剥いても全く出てこないし、一度きりの出会いを手放さなくて本当に良かったと、値段がどうこうを抜きにして安堵したのだった。


 


 今ではネットのおかげで自分が手に入れたカードが強いか弱いか、使えるか否かが瞬時にわかる時代になった。ネットショップの値段を見れば、そのカードがどれほどの価値のあるものなのかということも一目瞭然。ゲームは違うが、リセマラなんて言葉もあるくらいで、最初に手に入れたものに価値がなければ簡単にそれをなかったことに出来てしまう。それって寂しいじゃないか...と思うのだけども、最初に引いたカードを使うぞ!という情に囚われてわざわざ弱いカードやキャラで勝てないゲームを繰り返さなくて済むというのも良いことではある。


皆は初めて剥いたパックのこと、覚えているかい?その時のカードはまだ、押し入れに眠っていたりするのだろうか。僕の《変異種》は21年の年月で傷んだところに、ちょっとした事故で水没もしてしまいもはやゲームで使えないレベルでボロボロになってしまった。まさしく紙くず同然であるが、それでも大事な紙くずだ。初トレードの相手とはもう10年以上も顔を合わせていないが、彼の手元に《ツリーフォークの若木》はまだあるのだろうか?イカゲソ炒めを作る際に、ふとそんなことを思い出すことがある。


 


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 ってな感じで、それっぽいコラムを書いてみた第1回。こんな感じでええんか?いやもっともっとカードとかゲームに関して深いことを語った方が良いのか、色々模索しながら、やってやるって!無料記事なんでね、中身がないことは許してよ。ほな、また。



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