"感謝。20年以上マジックをやり続けて得た境地、それは感謝である。土地からマナが出る、それ以上、一体何を望むのだろうか?"
――とあるマジックプレイヤーの言葉
マジック:ザ・ギャザリング。1993年発売。すなわち現在27年目。
その歴史に基本土地が関わらなかったことはない。
根幹システムたる「マナ」に直接関与するこの基本土地は、ゲームの基本であるがゆえに無数の種類が存在する。
「《山》は何を使っても《山》」。そんなことを言う人もいるかもしれない。
だが、だからこそ自分のためだけの基本土地を選びたい。そんな人も多いのではないだろうか。(というか、多い。じゃなきゃプロモの基本土地なんて刷られないだろうし)
とはいえマジック:ザ・ギャザリング(27)には星の数ほどの基本土地が存在する。そのため「これしかない!」という一枚を見つけるのは実はかなり難しい。
そこで! 今回はBIGMAGICが腰を上げ、実力も経験も併せ持った有名プレイヤーたちにお気に入りの基本土地を教えてもらった。
BIGMAGIC所属ではないプレイヤーにもお話をいただいているので、ぜひとも基本土地の探究にこの記事を活かしてもらいたい。
それでは、さっそく読んでいただこう。
黒田正城
BIG MAGIC ELDERS所属
『インベイジョン』の《平地》
平地はあまり使うことがないのだが、このイラストが登場したときの衝撃は忘れられない。
それまでに出ていた基本土地とは明らかに方向性が異なり、抜群に美しかった。
個人的にはひまわりよりもこっち。
『戦乱のゼンディカー』の《島》
約10年ぶりのプロツアー出場を決めたときの、シミックネクサスで使っていた基本土地。
『ゼンディカー』といえばこれが一番人気でしょ! と自信満々だったのに、どうも不人気らしい。
なんでや。みんなどんぶりでご飯食べるやろ。
APACランドの《沼》(日本・お墓)
墓石に書かれている漢字も含め、ある意味ネタのようなイラストだったが、
20年近く経ってこんなに価値が出るとは夢にも思わなかった。
もっと集めておけばよかった。。。
『アングルード』の《山》
《山》は絶対これ! という時期があった。
記録的大洪水で初日が中止になった、伝説のプロツアー・バレンシアでもこの山からゴブリンを出したなあ。
いつからか、この《山》を使うと絶望的に事故るようになったので使うのをやめてしまった。
使い過ぎで変なクセがついちゃったのかもしれない。
『戦乱のゼンディカー』の《森》
《島》と同様に、シミックネクサスで使っていた。
《森》の中ではこのイラストが最高に美しいと思う。
この森に限った話ではなく、『戦乱のゼンディカー』の基本土地は立体起動装置っぽいのが全部好き。
中道大輔
BIGs所属
APACランドの《平地》(日本・ひまわり)
John Avon信者かつフルアート土地が好きなのですが、《平地》だけはひまわり土地を愛用しています。
一面に咲き誇るひまわり畑は大変美しく綺麗で、白っぽさが溢れ出てます。
最近はかなり高騰しているので手に入れるのは大変ですが、デッキを彩る1枚としてオススメです。
初めてイラストを見た時から絶対欲しいと思った土地。
「基本土地はイラストが統一されてれば何でもいいや」なんて思ってた時が昔ありましたが、今ではJohn Avonの土地じゃないとストレスが溜まる程です。
特にこの《島》はイラストを眺めているだけで爽やかな気分にさせてくれて気持ちが落ち着きますね。
MTGアリーナでも使用出来るのでお気に入りの1枚です。
個人的に好きなのは「明るいけど、やっぱり暗い沼」で、基本的な《沼》は暗黒をイメージしたようなものばかりですが、この《沼》はその両方に当て嵌まっているように感じます。
比較的安めなので入手しやすいのも良し。黒単を組む時は助かってます。
凄い黒マナが出るような感じではないですが、気持ちの良い黒マナは出せると思います(意味不明)
《山》を書かせたらJohn Avonの右に出る者はいないと思っているくらいには信者です。
実際のところ、『ミラージュ』、『ウルザズ・サーガ』、『ゼンディカー』、APACランドの富士山などいずれも素敵なイラストばかりなので目移りしますが、個人的には『アンヒンジド』の《山》が特にお気に入りです。
神々しさすら感じさせるイラストから出した赤マナなら《稲妻》は4点与えてもいいんじゃない?位には格別です。
《樹上の村》感ある(森》。
光の入り方が朝日が昇った時のような清々しい気持ちにさせます。
森も比較的暗いイメージが強いですが、『ゼンディカー』の森は明るく爽やかな感じでお気に入りです。
『アンヒンジド』の森もとても良くて迷いますけどね。
藤田剛史
BIG MAGIC ELDERS所属
基本的に土地にこだわりはなくて、その時の最新の絵が一番好きなので、数ある基本土地に関する思い出話しをいくつか。
『ウルザズ・サーガ』の《島》《沼》
昔はデッキに入ってる基本土地の絵を統一してた(もちろんリミテッドでも)。
理由は手札破壊などで手札を見られた時にどの土地を見られたかを考えてプレイする無駄な労力を無くす為。
この《島》と《沼》はプロツアー・東京で使ってた土地。
『テンペスト』の《平地》
昔APACという国際イベントのサインにTerese Nielsenさんが来てて、サインを貰おうと手持ちをカードを探したけど持ってなかったのでその時のドラフトで使ってた《平地》が偶然Terese Nielsenさんの絵だったのでラウンドの合間にサインを貰った。
そして次のラウンドでプレイしてるとドローしようとした山札のカードに謎の銀の汚れが付いていて、ジャッジを呼んでデッキを調べると、サインを貰った《平地》のインクが乾いてなくて下のカードの裏面についていたことが発覚。
当然ゲームロスを貰った後死ぬほど怒られて代理カードを出してもらった思い出のカード。
《ペンデルヘイヴン》
全く森ではないけどこれ。
競技プレイヤーとして始めだした頃MTGで最も重要な要素の一つが土地であるという認識だったので、デッキに1枚ならただの《森》+αであるこのカードに納得いかなかった記憶がある。
ちなみに自分は初心者時代マジックをやってたグループ内で少し後発で始めた身で『第4版』スタートだったので、仲間の使うデュアルランドにも「その土地だけはせこい」とずっと文句を言っていた思い出がある。(俺以外が使う凶悪カードは全部せこいと思ってた)
『アラビアンナイト』の《山》
別名アラ山。
友人のフジシューが沢山持っていてデッキに入れると必ず事故るという呪いの土地。
数多くの勇者が伝説に挑戦するも事故伝説を覆して勝利したものはいない。
元日本チャンピオン東野がその伝説に挑んだ時に至っては毎回土地を引きまくるのは勿論、《ウルザの激怒》のキッカー(9マナ)まで残り1マナの8枚まで毎回ストレートに引いてそこからピタッと土地を引かなくなる謎の現象が頻発。
以降お祓いを受けて封印された土地。
そのアラ山も今では13000円(BIG WEB調べ)の価値をつけておりフジシューも喜んでいることだろう
河浜貴和
BIGs所属
『アイスエイジ』の《平地》は、冠雪土地と一緒に並べると綺麗に絵柄がつながるデザインになってます。その夜と昼、寒さと暑さの中間の、微妙な塩梅の景色が良い。
『ウルザズ・サーガ』の《島》
まだ十代の頃、その綺麗さに惚れて無限に回収していた《島》。土地の絵柄へのこだわりはここから始まりました。
APACランドの《沼》(日本・お墓)
たぶん人生で一番置いた回数が少ない基本土地、《沼》。あまり思い入れがないですが、APACランドの《沼》は、《沼》じゃなくて墓じゃん、っていう個性的なとこが面白いなって思います。日本ぽいけど台湾イメージのイラストらしいですね。
『戦乱のゼンディカー』の《山》
《山》って赤マナ・暑いってイメージだからか、乾燥して荒れ果てたようなイラストが多いイメージなんですが、この土地は明るくて好きです。フルアートだとより楽しめます。
始まりの土地。ザ油絵な感がめちゃめちゃしぶいです。『ベータ』の土地は荘厳なイラストが多いですが、その中でもちょっと明るいこれが好きです。良い値段しますが、使い心地も良いです。
吉森奨
BIGs所属
『インベイジョン』の《平地》
躍動感のある絵がとても印象的で、トーナメントデッキから見えた時にテンション上がっていたのを覚えています。
当時はトリコロールデッキ等でよく使っていました。
『ミラージュ』の《島》
この頃の土地は手描き感が強くいかにもファンタジーな雰囲気を感じる絵が多いですが、
その中でもこの島の情景が好きでした。枚数が集められなかったためデッキでまとめて使う事はなかったですが
整理するときによく眺め楽しんだりしてました。
MPSランドの《沼》(MPS2007)
いかにもフェアリーが住んでいそうな美しく幻想的な沼。
後から通常セットに再録されたりもしましたが、イベントで集めて使うのが楽しかったです。
アリーナリーグの《山》(ラヴニカ)
以前は赤のカラーリングがあまり好きでなく《山》を使うこと自体少なめだったのですが、
その中でも『ラヴニカ』を象徴するような構築物感のある絵柄が好きでこの《山》を使っていました。
『ゼンディカー』の《森》
他の土地でもそうですが、John Avonの作品は光の差し込み方が印象的な絵柄が多く、その中でも初代『ゼンディカー』のフルアートのものが好きです。特にこの《森》は様々なデッキで使っています。
浅原晃
BIG MAGIC ELDERS所属
感謝。20年以上マジックをやり続けて得た境地、それは感謝である。土地からマナが出る、それ以上、一体何を望むのだろうか?
弘法筆を選ばずと言うことわざがある。達人は道具を選ばないという意味合いであり、そして、達人こそ、どんな道具にも分け隔てなく接し、大事に使える人物ということに他ならない。
基本地形は、マナが出るだけで楽しかったあの頃、初心を思い出させてくれるものだ。自分も不惑の年となり、虚栄や見栄に囚われず生きたいと思うようになった。飾らない基本地形を使いたい、そんな思いが日々、強くなっている。そうだ、マジックの基本地形は人格を映し出す鏡であるのではないだろうか?
もしかしたら、そこに、人の見栄や願望が見て取れるかもしれない。では、発表します。私の基本土地はGURUランド一択です。
"私の基本土地はGURUランド一択です"
"俺以外が使う凶悪カードは全部せこいと思ってた"
"なんでや。みんなどんぶりでご飯食べるやろ"
――BIGMAGIC ELDERSの言葉
以上が有名プレイヤーに聞いた基本土地特集、その3である。
長くプレイしてきた彼ら特有のこだわり、思い出、そしてマジックへの情熱を好きなように語ってもらった。
「飾らない基本地形を使いたい」。そう語る不惑の年のプレイヤーいわく、土地はGURUランド一択らしい。いつかその境地に達する時は来るのだろうか......。
最近はじめた人は、彼らの語った基本土地を試しに手に取ってみるのもいいだろうし、
昔からプレイしている人は、押入れを捜索して"あの頃"の基本土地と再会してみるのもいいだろう。
マジックが生まれて27年。ここから先の歴史にも、変わらず基本土地は共にある。
こだわりも思い出も情熱もひとまとめにして、君だけの基本土地を探していこう。
有名プレイヤーたちの基本土地特集はまだまだ続く......かもしれない。
君だけの基本土地を探せ!有名プレイヤーに聞いたお気に入り土地特集 その1はこちら
君だけの基本土地を探せ!有名プレイヤーに聞いたお気に入り土地特集 その2はこちら