By Yohei Tomizawa
時を同じくして始まったグランプリ本戦決勝トーナメント、トップ8プレイヤーには同じBIGsである斉田 逸寛の名前があった。それだけではない。加藤 健介もバブルマッチに勝利し、オポ落ちでトップ8こそ逃したもののプロツアーへの参加権利を掴んでいる。
川崎 慧太にしても近い位置にいる。プロツアーへの参加を切望し、目の前のチャンスに対して愚直に取り組み、後3勝すればプロツアーの門戸は開くところまで来ている。
対照的にニコやかな表情なのは"八重樫会"と自身の名前を冠したコミュニティの主である八重樫 直起。"八重樫会"とは統率者戦やタワーマジックを好むコミュニティとのことだが、この『プロツアーロンドン』予選へ挑む八重樫は本気である。同じ埼玉のコミュニティである"久喜組"と連携を図り構築した「アブザンミッドレンジ」は「緑黒ミッドレンジ」戦を制するために構築されたものだ。そしてこの準々決勝で行われるのは同じ緑黒軸のデッキ同士の対決となっている。
プロツアーまでたったの3勝。それは近いようで、果てしなく遠い。
:ゲーム1
先手の川崎を襲うダブルマリガン。それでもキープした手札は《野茂み歩き》、《翡翠光のレインジャー》とストーリーの見えるものだった。
互いに《野茂み歩き》を召喚すると、先手の川崎がイニシアチブを握る。《翡翠光のレインジャー》で一気に2サイズアップしダメージレースをスタートする。
八重樫も《マーフォークの枝渡り》、《探求者の従者》を使い2度サイズアップを図るが、先手分川崎が有利に試合を進めていた。
だが、それも次の一手で瓦解する。八重樫は《貪欲なチュパカブラ》で育った《野茂み歩き》を除去してみせる。川崎の手札は除去こそあるもののクリーチャーがなく、詰め切れない。
《喪心》を効果的に使用し、一時は6まで追いつめた八重樫のライフ。それも《野茂み歩き》と探検のシナジーにより二桁まで回復され、《ビビアン・リード》が出るに至り完全にストップしてしまう。
そして《翡翠光のレインジャー》のアタックに合わせ《大集団の行進》により6体のトークンが生み出されると、攻め手を失ってしまう。
マナフラッドしている川崎に対して、八重樫は《殺戮の暴君》を召喚し、このゲームに蓋をした。
川崎 0-1 八重樫
:ゲーム2
《ラノワールのエルフ》の鏡打ちでスタートすると、八重樫は《宝物の地図》を続ける。
《喪心》、《打ち壊すブロントドン》と片っ端から対処すると、川崎は《翡翠光のレインジャー》で《貪欲なチュパカブラ》をデッキトップにキープし、クロックを刻みだす。
除去体制のある《殺戮の暴君》を八重樫が召喚したことで、ダメージレースはストップするかに思われたが、川崎は既に計算を終えていた。
一方的に破壊されるのを厭わずライフを詰め、八重樫の残ライフを2とし、《大集団の行進》のプレッシャーにも躊躇することなくアタックを敢行する。
《ヴラスカの侮辱》で1ターン延命措置が図られたが、川崎がブロッカーに向け《喪心》をキャストすると八重樫のライフは0を割った。
川崎 1-1 八重樫
:ゲーム3
《ラノワールのエルフ》から《翡翠光のレインジャー》とエンジン全開の八重樫。川崎の召喚した《ラノワールのエルフ》も贅沢に《ヴラスカの侮辱》し、アタックを開始する。
川崎も《喪心》で《ラノワールのエルフ》を除去し、展開を遅らせるが3点クロックが止まらない。先手により作られた僅かなリードは、少しずつ川崎を蝕んでいく。
《ビビアン・リード》、《ウルザの後継、カーン》と互いにプレインズウォーカーを置き合うが、やはり先手分八重樫が有利。ゲームを決める一撃、《殺戮の暴君》をプレイグラウンドへ解き放つ。
ここまで対処を迫られ、後手に回っていた川崎の盤面にクリーチャーはいない。相打つための《殺戮の暴君》もなく、クリーチャーを横並びにしてもパワーラインが6へと届かない。
盤面とライフ、クロックから致死量までのターン数を逆算し、川崎は覚悟を決める。《マーフォークの枝渡り》、《貪欲なチュパカブラ》と並べターンを返す。盤面に触れらずクリーチャーを追加するか、若しくは《殺戮の暴君》を召喚する、かなり上振れ狙いのプランだが他に解決策はない。このか細い道を辿るしか耐える術はない。
暴力的な一撃が加わり残る川崎のライフは1。《ビビアン・リード》によって《貪欲なチュパカブラ》が手札に加わったが、八重樫は別のクリーチャーを召喚する。
逆転の芽を摘む完全な一手。八重樫は自身のターンがくると、狂暴な2体を素早くレッドゾーンへ送りだし、勝利をもぎ取った。
川崎 1-2 八重樫