By Yohei Tomizawa
これより準決勝を戦うのは対照的なデッキを使う2人のプレイヤーたちだ。
2週間のバカンス休暇を利用し彼女とグランプリへとやってきたドゥーグル ウォービー/Dougal Warbyが使用するのは「デス&タックス」。レガシーを代表するヘイトベアの集まりは、今大会において海外プレイヤーがの多くが使用していたデッキの一つだ。
"DougesOnTwitch"で精力的に配信を続けるストリーマーは、その多くの時間をこの「デス&タックス」の調整へと費やしていた。本戦こそ敗退してしまったが、『競技レガシー』の場でその成果は如何なく発揮されている。
対するは本年開催された『BIG MAGIC Sunday Legacy』でトップ8入賞経験をもつ安藤 正人。その際はコンボとビートダウンのハーフ&ハーフ「アグロDD」を使用していたが、《死儀礼のシャーマン》の禁止によりデッキの改変を余儀なくされた。
元来ジャンクデッキ、もっと言えば黒いデッキを好んでいた安藤が次に選んだのは純粋な「DD」。勝ち筋を一本に絞ったことで《モックス・ダイアモンド》も上限枚数いっぱい使用でき、単純に速度自体も上がっている。それこそ1ターン目にマリットレイジ・トークンが決まることもあり得るのだ。
それでも安藤の顔が浮かないのは、予選ラウンドにおて唯一敗北した相手がこのドゥーグルに他ならないためだ。本人曰くは相性差は"1対9"。
それでもここからは勝つことでしか先に進むことを許されないトーナメント制。"1対9"の相性差を覆し、先へと進むことはできるのか。
:ゲーム1
「デス&タックス」が《霊気の薬瓶》を起点にシナジー形成をするならば、その有無は勝負を左右するといっていいだろう。ドゥーグルは先手第1ターン目に《霊気の薬瓶》をキャストする。
当然といえるこの一手は、先手後手の差を如実に印象づけるものとなった。安藤は《思考囲い》をキャスト。それこそ先手ならば《霊気の薬瓶》を落とし、ドゥーグルの動きを大きく減速できたはずだったのだ。
そうは言っても時間は戻らない。高い打点を誇る《ミラディンの十字軍》を捨てさせ、《不毛の大地》の有無をチェックする。
《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》、《暗黒の深部》とデッキが明らかになると、ドゥーグルは《リシャーダの港》でマナを拘束しつつ《不毛の大地》で動きを牽制する。
最後の1枚である《演劇の舞台》を引きパーツこそ揃うものの、《リシャーダの港》によりマナが足りない。その隙をつきドゥーグルは逆転負けの可能性を潰すため《霊気の薬瓶》から《ファイレクシアの破棄者》場に出し、《吸血鬼の呪詛術士》を指定し、2点のクロックをスタートする。
《リシャーダの港》と《不毛の大地》が絡むと、安藤はコンボを決めることははおろか呪文を使うことすらままならない。ドローゴーでターンを終えれば《護衛募集員》が《霊気の薬瓶》より着地を果たし、《ちらつき鬼火》を手札へもたらす。アドバンテージだけでなく、万が一コンボが決まった際もトークンへの対処手段を持つことになってしまう。
刻まれたクロックにより安藤のライフは13。ドゥーグルのエンドに《輪作》で《暗黒の深部》を生贄に捧げ、先ほど破壊された《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を再び場に。コンボよりも先ずは色マナを揃えないことには、この状況を打開することもできない。
ドゥーグルはエンドステップであることを利用し《霊気の薬瓶》から《ちらつき鬼火》を出すことで、場に出したばかりの《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を対象にとり、実質的に1マナ拘束する。
安藤のとれる動きは少ない。《モックス・ダイアモンド》で色マナを確保すると相打ち要員として《闇の腹心》を召喚する。ドゥーグルのクロックは今や6点となってしまっている。
無事《ファイレクシアの破棄者》と相打つが、それも一瞬だった。《ちらつき鬼火》が《護衛募集員》とシナジーを形成し、クロックアップを果たしてしまう。
そして安藤のアップキープ、変わらず《リシャーダの港》は《Bayou》をタップする。
この拘束を抜け出すことはできなかった。
Dougal 1-0 安藤
:ゲーム2
再び《霊気の薬瓶》がキャストされるが、今回は自由にさせない。安藤は《真髄の針》で素早く楔を打ち込むと、《不毛の大地》をセットした。
ドゥーグルは2枚目の《霊気の薬瓶》を置くと、こちらも《不毛の大地》をセットランド。
続くドゥーグルの4ターン目のアップキープ、安藤は《不毛の大地》を対象に自身の《不毛の大地》を起動し、それを受けドゥーグルは《Bayou》を破壊しようとする。
プラン通り。狙いすましたように安藤は《輪作》をキャストし、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》をサーチする。更に動きのないドゥーグルに対し《古えの墳墓》を《不毛の大地》で割りつつ《闇の腹心》を召喚。
これを許してしまってはゲームにならないため、ドゥーグルは《剣を鍬に》で《闇の腹心》を除去する。実はドゥーグルの土地は2枚となっており、《霊気の薬瓶》も封じられたこともあり動けない。
《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》こそ《不毛の大地》で破壊を目論むが、ここでも《輪作》により美味しく処理されてしまう。因みにここでフェッチされたのは《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》。
だが、都合3枚目となる《不毛の大地》が《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を叩き割ると、「まだあるか」といった感じで安藤は苦笑した。
《石鍛冶の神秘家》(サーチ《殴打頭蓋》)と《突然の衰微》が交換された返し、ドゥーグルは遂に《平地》を引き込み《議会の採決》で《真髄の針》を破壊する。
このフルタップを狙うしかない。安藤は必殺の《思考囲い》。
《剣を鍬に》《宮殿の看守》《殴打頭蓋》《ちらつき鬼火》
から《ファイレクシアの破棄者》を捨てさせると、《夜の戦慄》を置く。《霊気の薬瓶》の呪縛は解かれたが、今度は夜が明けない。
この漆黒の包囲網を打ち破る術はドゥーグルの手にない。《宮殿の看守》により統治者となり、毎ターンドローを重ねるも中々状況は好転しない。《異端聖戦士、サリア》を筆頭にクリーチャーを横並べするが、それも安藤の狙い通りだった。
スタックして《霊気の薬瓶》から《ちらつき鬼火》を出すことで《異端聖戦士、サリア》のみ残すが、大きくクロックダウンとなってしまう。
新たな攻め手と期待して送りだした《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も《吸血鬼の呪詛術士》で破壊。《トーラックへの賛歌/Hymn to Tourach》で《剣を鍬に》と《宮殿の看守》と除去も抜かれてしまう。
それでも《異端聖戦士、サリア》とギデオンの忘れ形見が3点クロックを刻む。淡々と縛り、殴るのだ。
相手のクロックを減らしたことで安藤も動く。先の《トーラックへの賛歌》で《剣を鍬に》が落ちたことで、コンボ完成へ向けググっと前進。《森の占術》で《暗黒の深部》をサーチすると、《闇の腹心》を召喚することで更に石橋を叩いて渡る。
ドゥーグル2体をレッドゾーンへ送り込むと安藤のライフを4とし、ターンエンド。ボブ死も期待し《闇の腹心/Dark Confidant》は残す。
そして安藤の睨んだ通り、ドゥーグルの手には更なる《剣を鍬に》が。これでは苦労してマリットレイジトークンを呼び出しても、ライフとなってしまう。
アップキープに《トーラックへの賛歌》が公開され残り2点。ドゥーグルは解決後に《リシャーダの港》を《演劇の舞台》に向け起動する。
安藤はスタックして《演劇の舞台》を起動する。優先権なく解決され、無事20/20のトークンが生成された。
ドゥーグルは《剣を鍬に》をキャストしない。それこそアタックに合わせてプレイすればいいだけ、無問題とフェイズの進行を許可してしまう。
素早くタップすると安藤は1枚の呪文をキャストする。
これこそ《剣を鍬に》に対するアンチテーゼ。まさかの黒い《投げ飛ばし》により逆転されてしまう。
前述の通り《剣を鍬に》で自身のクリーチャーを対象にとれば生き残ることは可能だが、《闇の腹心》が後詰のために待機している。
ワンチャンスを安藤が見事ものにし、勝敗の行方はゲーム3へ。
Dougal 1-1 安藤
:ゲーム3
三度《霊気の薬瓶》で始まった準々決勝最終ゲーム、ここでも安藤は一手遅れで《思考囲い》をキャストする。
しかしここで公開されたドゥーグルの手札には《剣を鍬に》こそあるものの、クリーチャーは《ちらつき鬼火》のみ。この唯一のクリーチャーが捨てられると、淡々とドローゴーとなる。
安藤もコンボパーツを揃えるも、先ほど見た《剣を鍬に》を捨てさせないことには動き出すことはできない。
クリーチャーによるダメージクロックをかけたいドゥーグル。できれば《石鍛冶の神秘家》や《護衛募集員》をのように後続へ繋がるカードを望み、ドローを続ける。
デッキは応え、先にトップデッキしたのはドゥーグル。《護衛募集員》をトップデッキし、これにより《ちらつき鬼火》をサーチすると相互にcip効果を使うことで一気に戦力を補充する。
安藤は手札破壊を引かない。代わりに《剣を鍬に》を炙り出すための《闇の腹心》を引き、それは除去される。
ベストではないまでも、ベターなドローとプレイ。相性"1対9"ながら安藤もくらいついているように見えた。ドゥーグルが1枚のカードを追加するまでは。
《梅澤の十手》。このクリーチャー戦の支配者は、《闇の腹心》を除去するだけでなく、万が一マリットレイジが出てしまった際も、ライフゲインにより1度はアタック攻撃を耐えることが可能となる。
4点、そして装備上にカウンターが載ると、再度召喚された《闇の腹心》に対しては《剣を鍬に》で除去する。あくまでも《梅澤の十手》上のカウンターは維持するようだ。
《梅澤の十手》により倍化するクロックに、安藤は対処することはできるのか?
再び、4点。《梅澤の十手》装備した《ちらつき鬼火》がプレッシャーをかけながら、着実に時を刻む。《セラの報復者》残るは2ターン。
安藤は《カラカス》を割ることで、何とかマリットレイジへと辿りつこうと目論むが、ドゥーグルのクロックがそれを許さない。
手札には《暗殺者の戦利品》こそあるが、この1枚だけでは上空のクロックは止まらず、《梅澤の十手》も残ってしまう。ダメ押しとなる《異端聖戦士、サリア》が召喚されると、安藤はカードを片付けた。
Dougal 2-1 安藤