By Yohei Tomizawa
「今日は、いい天気だねぇ。」
早朝、空を見上げスタッフの一人はそう一言つぶやいた。
マジックの大会は、不思議と晴天に恵まれる日が多い。まるで室内で死闘を繰り広げるプレイヤーたちを嘲笑うかのように、天高く澄み渡る。例えどんなに空が晴れようともプレイヤーには関係ないのに、だ。
天気など関係ない。そもそもプレイヤーの視線に入るのは、目の前の対戦相手だけだ。意志と意志、デッキとデッキがぶつかり合う2人の間には、付け入る隙はない。決勝へ駒を進めるべく火花を散らし激突するのは、高味と三原の2人だ。
高味 祐太が使用するのは機体風味の「赤黒アグロ」。PPTQを渡り歩き、調整を重ねたデッキは自慢の相棒。思考と実践を繰り返し、辿り着いた検証結果だ。ハンデスはあるが墓地対策の薄いため、「赤青王神」は多少厳しいか。
その「赤青王神」使用するのが殿堂、三原 槙仁。カードが間に合わず「ドミナリア」による新デッキのお披露目はなされなかったが、使い慣れた「赤青王神」で悠々とTOP8入賞、このまま優勝まで突き進むのだろうか。
コンボとアグロ、電光石火のスピード勝負が始まる!
Game1
予選順位を比べると三原は6位、高味は7位。僥倖。三原自身も「まさか6位で先手が取れるとは。」とこぼす。
既にTOP8デッキリストは公開のため、お互いサイドボードを交換し、カードを手に取り効果を確認し合う。そのうちに、ヘッドジャッジから準決勝開始のアナウンスが告げられる。
1ターン目からクリーチャーを展開し、軽快にビートを刻むのは三原だ。タフネス1を咎める《狂信的扇動者/Fanatical Firebrand》は高味の《ボーマットの急使/Bomat Courier》牽制するかどうかで悩むが、結局はアタックし時計の針を進める。
高味の手に《ボーマットの急使/Bomat Courier》はない。《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》でクロックを作るが、「赤青王神」の三原がダメージレースを先行している。《戦凧の匪賊/Warkite Marauder》、《戦利品の魔道士/Trophy Mage》がレッドゾーンを駆け抜け、手札に《来世への門/Gate to the Afterlife》を加える。
祈るようにドローする高味。3点で殴り返すと《発明者の見習い/Inventor's Apprentice》でクロックアップを図り、タップアウトの隙に《マグマのしぶき/Magma Spray》で《戦凧の匪賊/Warkite Marauder》を下船させる。
趣向を変え《来世への門/Gate to the Afterlife》をキャストすると、《狂信的扇動者/Fanatical Firebrand》の2体目を召喚。戦闘せずともルーティングは行えそうだ。
高味は《来世への門/Gate to the Afterlife》のテキストを確認する。起動条件は6枚のクリーチャーだ。《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》が《戦利品の魔道士/Trophy Mage》と相打つことで先ず、1枚。第2メインに《ゴブリンの鎖回し/Goblin Chainwhirler》を召喚することで、3枚まで増える。
ゴブリン界のブンブン丸を前に三原は「これ、ゴブリンに(ダメージ)飛ばないとかないよね?」と冗談ぽく聞くが、残念ながらそんなことはない。
《狂信的扇動者/Fanatical Firebrand》2体は《発明者の見習い/Inventor's Apprentice》を道ずれに、墓地を肥やす。《戦闘の祝賀者/Combat Celebrant》が捨てられ、これでカウントは4。一連の過程でライフは20まで回復してしまっている。
《来世への門/Gate to the Afterlife》と《査問長官/Minister of Inquiries》を追加されると、待っていても解決はしないと高味は《ゴブリンの鎖回し/Goblin Chainwhirler》でアタック。これをチャンプブロックするとルーティングの《機知の勇者/Champion of Wits》と合わせ墓地のクリーチャーカウントは6に。
次のターン、《王神の贈り物/God-Pharaoh's Gift》から《戦闘の祝賀者/Combat Celebrant》復活による連続戦闘が見える。高味はターンを返さず潔く負けを認め、サイドボードへと手を伸ばす。
高味 0-1 三原
Game2
今度は高味がイニシアチブを握る。「王神」や各種アグロデッキでの《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》を強く意識し、《マグマのしぶき/Magma Spray》は4枚採用されている。《査問長官/Minister of Inquiries》を《マグマのしぶき/Magma Spray》で弾くと、《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》でビートダウンを開始する。
2度目の《査問長官/Minister of Inquiries》チャレンジも《削剥/Abrade》でいなし、3点クロックを継続する。
我、隙を見たり。三原は《来世への門/Gate to the Afterlife》をキャストする。高味の手に《削剥/Abrade》はない。
こうなればスピード勝負だ。《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》を追加し、三原のライフは14。盤面だけみれば2ターンのクロックがかかっていることになる。
この状況を受け、三原は《機知の勇者/Champion of Wits》で《戦闘の祝賀者/Combat Celebrant》を捨てる。
戦闘で三原のクリーチャーを墓地に落とすことよりは、上空からのダメージに絞り3ターンクロックをかける。残りは10。ここで追加するのは2体目の《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》ではなく、《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》。事実上のクロックアップはならなかった。
2体目の《機知の勇者/Champion of Wits》を召喚するとライフ、盤面、手札を見比べ、ちょっと考えますと一言おき、悩む。土地とアーティファクトを墓地に送ると、サモン《スカークの探鉱者/Skirk Prospector》。
4点で残り6。しかし高味はセットランドすると祈るのみだ。
《スカークの探鉱者/Skirk Prospector》を生贄に赤マナが生み出されると思わず「マジか」ここでたまらず高味は声を上げる。
1枚捨て、《歩行バリスタ/Walking Ballista》が《機知の勇者/Champion of Wits》へ向けピングするとクリーチャー数は6。
「まにあってますね」
解答を持たない高味は、投了を宣言した。
高味 0-2 三原
三原 Win!