text by Seigo Nishikawa
「"近藤Win! 事件"の話をしてもいいですか?」
フィーチャー席に座るなり田澤はいきなり切り出した。渡部と筆者が頭を?マークにしながらも話の続きを促すと、事は2年前に行われたBIG MAGIC Invitatilonalでの一幕。緒戦から順調に勝利を重ねた田澤はフィーチャー席に呼ばれたのだという。
と、そこまで話したところで、ジャッジから試合開始の合図がかかる。話の続きは試合が終わってからにしよう。
ある程度わかるかもしれないが、田澤は非常に明るい。口数も多く表情もくるくると変わる。一方でその田澤に相対するのは渡部。こちらは移動中も席についている間も沈思黙考。「厳とした」という表現がよく似合う。
そんな実に対照的な二人によるROUND6をお送りしよう
ROUND6 田澤 雅之 vs 渡部 司
Game1
先手の渡部が《血染めのぬかるみ》でターンを返すと、田澤も《血染めのぬかるみ》をあわせ打ち。だがこちらは即座に起動し《聖なる鋳造所》をサーチすると《ゴブリンの先達》が戦いの号砲をあげる。
この《ゴブリンの先達》は次のターン渡部に《タルモゴイフ》がもたらされることを示すも、この《タルモゴイフ》は未だに1/2。《ゴブリンの先達》を止められず、また渡部のいかなる火力によっても倒されてしまう。
田澤 雅之
しかし田澤はそれは選択せず《裂け目の稲妻》を待機。渡部の《ヴェールのリリアナ》で《ゴブリンの先達》を破棄するも、《稲妻》をリリアナではなく渡部本人に打ち込む。目の前の障害には目もくれず、ただただ渡部を狙い続けるということは、既に手札の中で渡部のライフ分に相当するだけの火力を保持しているということであろうか。待機のあけた《裂け目の稲妻》も渡部に落ち、残りライフは早くも7。
もう疑う余地は無い。
《ヴェールのリリアナ》で《稲妻のらせん》が捨てさせられるが、田澤に残るハンドは3枚。
それは即ち《稲妻のらせん》と《溶岩の撃ち込み》が2枚。
田澤 1-0 渡部
Game2
初手を見ると微動だにせず自分の手札を見つめる渡部。一方田澤は、と目をくれるとこちらは「いけるのかなぁー」と自嘲気味にそれでいて明るく笑っている。
マリガンの考え方までなんとも対照的な二人。
渡部 司
結局のところ二人とも初手は受け入れると、渡部は《怒り狂う山峡》、田澤は《感動的な眺望所》からの《ゴブリンの先達》スタートとなった。そしてこの《ゴブリンの先達》は今度は《漁る軟泥》を捲る。渡部にとっては待望の一枚ではあるが、田澤の《焼尽の猛火》の前にその力を発揮することなく地に落ち、早くも渡部のライフは12。
渡部は《コラガンの命令》で《ゴブリンの先達》を排除するのだが、田澤からは《僧院の速槍》そして《ボロスの魔除け》と飛び、もう後がない。ここまでの田澤の動きはとてもマリガンを悩んだものとは考えにくい。残された札は2枚であり、それが両方有効杯とは考えにくい。
渡部は《血編み髪のエルフ》をキャストし、これが《大爆発の魔道士》を招き入れるとこれで田澤の土地を2枚とし、《血編み髪のエルフ》は《ゴブリンの先達》の攻撃を受け止めるべく攻撃は行わない。
だが田澤に残っていたのは《頭蓋割り》と《溶岩の撃ち込み》。そして引き入れたのは《山》
田澤「引き強すぎでしょ!!」
実は田澤、土地が1枚のハンドをキープしていた。今日は土地1枚では始めない、と心に誓って家を出たとのことだが、ここで禁を破ってしまった、とのことであった。それでも必要な土地を順次引き込み、見事に勝利して見せたのだから、今日は田澤の日といっても過言ではないのでなかろうか
田澤 2-0 渡部
話を戻そう
Invitationalでフィーチャーに招かれた田澤の試合はカバレッジとして掲載された。そしてその文章は「近藤 Win!」という言葉で締められていた。
「ただ......」田澤は続ける「相手、近藤さんじゃないんですよね(笑)」
要はカバレッジのミスであるのだが、田澤と田澤の対戦相手のどちらでもなく、いきなり近藤と言うプレイヤーが勝利したということになってしまったのだという。この試合の敗北を境に一気に調子が変わりそこから連敗してしまったという田澤は、今回フィーチャーとして名前を呼ばれたとき、嫌でもそのときのことを思い出したのだという
だが今日の田澤はそんなジンクスなど弾き飛ばすだけの勢いを見せ付けている。だからこそ、このカバレッジはこう締めさせてもらいたい
田澤 Win!