デッキテク:松本 郁哉の『赤タッチ黒アグロ』
Text by Moriyasu Genki
(※スイスラウンド6回戦終了地点でお話を伺っています。)
[デッキリスト]
土地 23
10:《山/Mountain》
4:《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
4:《泥濘の峡谷/Canyon Slough》
3:《霊気拠点/Aether Hub》
2:《産業の塔/Spire of Industry》
クリーチャー 26
4:《ボーマットの急使/Bomat Courier》
2:《発明者の見習い/Inventor's Apprentice》
2:《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra》
4:《屑鉄場のたかり屋/Scrapheap Scrounger》
2:《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider》
3:《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher》
2:《ピア・ナラー/Pia Nalaar》
4:《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent》
3:《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》
スペル 11
2:《マグマのしぶき/Magma Spray》
2:《木端/Cut》
1:《稲妻の一撃/Lightning Strike》
4:《無許可の分解/Unlicensed Disintegration》
2:《霊気圏の収集艇/Aethersphere Harvester》
サイドボード 15
2:《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》
1:《耕作者の荷馬車/Cultivator's Caravan》
1:《栄光をもたらすもの/Glorybringer》
1:《蠍の神/The Scorpion God》
2:《栄光の刻/Hour of Glory》
3:《削剥/Abrade》
2:《ゴブリンの鎖回し/Goblin Chainwhirler》
3:《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》
『ドミナリア』収録の歴史的なカードが多数採用されていた"倉田 和佳の【ジェスカイレジェンズ】"とは対比的に
殆ど『ドミナリア』のカードを採用していないなかでも現環境にチューンナップを果たしたデッキで勝ち進んでいるプレイヤーがいた。
【赤単アグロ】を軸に《無許可の分解》と《屑鉄場のたかり屋》を採用した【赤タッチ黒アグロ】を選択したジョニーのお店からスポンサードを受けている松本 郁哉プロ(写真右)だ。
スイスラウンドの合間に、話を伺った。
松本プロは【緑単ガルタ】相手に《熱烈の神ハゾレト》を3枚引き込む不運でマッチを落としているが、ここまでで5勝1敗の好成績だ。
松本プロの【赤タッチ黒アグロ】は、確定除去の《無許可の分解》をメインに採用することで火力で焼きにくいサイズのクリーチャーも対応できるようにした赤アグロだ。
《鉄葉のチャンピオン》や《黎明をもたらす者ライラ》をはじめとした高タフネスの増加が黒タッチの理由としての大きいところだという。
特にサイドの《栄光の刻》は神のみならず《再燃するフェニックス》といった破壊耐性持ちにクリティカルに刺さる。
現行の【赤単アグロ】に4枚必須とうたわれている新カード《ゴブリンの鎖回し》がサイドに2枚のみなのも特徴だ。
(松本のリストで『ドミナリア』のカードはこの《ゴブリンの鎖回し》2枚のみだ。)
「《ゴブリンの鎖回し》は赤単ミラー戦など強烈に効くマッチアップもあるが、単体では超えられない相手も多いため
メインの軸ではなく"良いサイドカード"というところかな」という見通しを立てている。
前環境では【マルドゥ機体】の採用クリーチャーの基準値であるパワー3というのがダメージレースを定義するサイズであったが、
『ドミナリア』が入った今季のスタンダードでは、定義づけとなるクリーチャーのサイズはもう少し大きくなっているようだ。
そのため、キランや収集艇といった【機体】にデッキを寄せすぎるとアーティファクト破壊で対処されると一気に厳しくなる。
機体を対処されたときに残ったクリーチャーたちでは若干力不足だ、という判断を下していた。
《ゴブリンの鎖回し》ではゲームに勝ち切るためのダメージを稼ぎ出しにくいという判断のなかでの、《アン一門の壊し屋》を中心とした赤単軸のデッキ構成だ。
実際、ラウンド5の【赤単】戦でも相手の《再燃するフェニックス》をブロック不可で乗り越え、《屑鉄場のたかり屋》と《アン一門の壊し屋》がダメージレースを仕掛け、勝利していた。
松本プロの印象としてリミテッドグランプリの初日全勝を繰り返すなど「リミテッドが得意」をイメージを持つ人も多いかもしれないが、
デッキビルダーとしての部分もまたリミテッドの腕に見劣りしない松本プロの魅力であり特徴だ。
この《アン一門の壊し屋》採用は《ピア・ナラー》とどちらを何枚とるかの調整が悩ましく、《木っ端》と《稲妻の一撃》も適正枚数は決めかねているともしている。
《発明者の見習い》と合わせてこの3枠は、相手側のリストが段々と整っていくなかで整理されてくるだろうと話していた。
「プレインズ・ウォーカーとダメージの取り扱いに関するルールの変更」についても影響が大きいと多少表情を曇らせて、話しをしてくれた。
《反逆の先導者、チャンドラ》、《熱烈の神ハゾレト》、《無許可の分解》の3種はある種弱体化の煽りを受けている事実もある。
そのためにしっかりと相手のプレインズウォーカーを意識できるカード(《領事の旗艦、スカイソブリン》)の採用など、構築にも変化があったようだ。
プレインズウォーカーを多用しやすい【青白コントロール】との相性についても触れてもらった。
環境最初期のためコントロール側もリストが固定されていない、という点で【青白コントロール】側も《封じ込め》や《残骸の漂着》とカウンターの枚数内訳がまちまちだ。
その為にアグロ側の選択の裏目が相手毎に出やすい時期だとも話す。
ただしプレイできるシチュエーションが決まったカードが多く採用されている為、【青白コントロール】側のリストが成熟されることでアグロ側もまた戦い方のセオリーが出来上がってくる。
そうしたときに、【赤タッチ黒アグロ】というデッキタイプは決して不利はつかないだろう、としている。
今後【赤タッチ黒アグロ】を選択するプレイヤーに関しても「いま青白コントロールに勝てないなと思っても、諦めないでください。ということは伝えたいですね。」とも話してくれた。
松本プロの言うとおり、現況は環境の序盤も序盤だ。
強いデッキの強いリストをどこまで詰めるのか、ではなく、強いデッキはなんなのか、を探る段階だ。
《ゴブリンの鎖回し》が今以上に流行ればタフネス1のクリーチャーを多用したデッキは数を減らしていくだろう。
事実、鎖回しの流行を見越して松本プロはデッキでもタフネス1を減らしている。
サイドボード後に先手となるゲームでも《ゴブリンの鎖回し》が多めに採用されている相手にはタフネス1・クリーチャーを抜く判断が増えてきたということで、その影響力自体はかなり大きいようだ。
【赤タッチ黒アグロ】は1マナ域の減少など従来の【赤単アグロ】より多少重めに寄せているが、コントロール要素の多い【ビッグレッド】ほど重くもない。
カードパワーと小回りの良さを両立させたことで苦手を減らした絶妙なスピード感を持つアグロデッキのようだ。