記録より記憶だのなんだのと言うが、このカードはそのどちらにも残っている。マジックの長い歴史において、様々な悪いカードが刷られアカンデッキが生まれてきたが、この《記憶の壺》が生み出したものの危険度に並ぶものもそう多くはあるまい。というかあったら嫌だわ。記憶ウィークのトリを飾るのは、このカードしかないよね。
5マナのアーティファクトで、お互いが手札を一旦追放して7枚引く。次のエンドで各プレイヤーはそれを全部捨てて脇にどけていた本来の手札を取り戻す。青なんかにはよくある、お互い手札をリセットしようよ系呪文を封じ込めて、その期限が極端に短くなったアーティファクトといったところか。
このカードを初めて見た時は、どういうことかよくわからなかった。だって5マナ払って手にいれた手札はほとんど何もせずに捨てる羽目になるのだ。ただでさえカードを捨てることが嫌な初心者には、その危険さはわかるはずもない。
ある程度マジックがわかるようになると、5マナで7枚引くこと自体が無茶苦茶ヤバいということがわかる。今後こんなとてつもないカードが作られることはまあないだろう。同じ失敗は二度と繰り返さないはず・少なくともこのカードに関しては。
このカードが持っている記録は、セット発売より2か月後にスタンダードの禁止カードになるという最短記録だ(スタンダードを除くと、もっと早く禁止となったカードがある。何かわかるかな?)。当時はセット発売から各フォーマットで使用可能になるまでの間に1か月の期間があったため、実働は1か月と考えることも出来る。
この1か月の間に、この《記憶の壺》を用いたデッキが大きなタイトルを獲得したということはない。そうなる前に、去ってしまったということだ。
なんともはや恐ろしい話である、コイツは確実にやらかす、と事前に逮捕されたということである。そしてそれは冤罪でもなんでもなく、正しかったのだ。
《記憶の壺》と《偏頭痛》を併せたコンボデッキ、その名も「メグリムジャー」。《偏頭痛》を貼って《記憶の壺》を起動してエンドを迎えると、対戦相手は7枚引いたカードをすべて捨てて14点受けることになる。このコンボパーツのどちらかが2枚あれば28点で、即ちゲームエンド。いやいや、3マナのエンチャントと5マナのアーティファクトで1ターンで決めようと思ったら少なくとも11マナいるわけでしょ?それがそんなに危険かねと、そう思われた方がいても無理はない。
でもね、このデッキは1キルすらできてしまうのだよ。《モックス・ダイアモンド》《魔力の櫃》《暗黒の儀式》《厳かなモノリス》...マナを増やす手段はいくらでもある。とりあえずこれらを連打して《記憶の壺》に繋げて7枚ドローとやれば、カードはいくらでも揃う。何も真面目に5マナ払わなくとも《修繕》で壺を場に出したって良いんだぜ。さらには《ネクロポーテンス》《ヨーグモスの意志》とコンボを支えるカードも壊ればっかり。そらブン回れば1キルも決まるわ。
というわけで使用可能から1か月でスタンダード・エクステンデッド・レガシーの前身であるType1.5、ブロック構築で禁止に&ヴィンテージの前身Type1で制限カードとなる。Type1における「メグリムジャー」はフルパワーの状態ではなんと1キル率が90%を超えていたとか。そんなもん、アホとしか言いようがない。
《記憶の壺》の制限は勿論のこと、この後に各種サーチカードなどなんと計18枚が制限カードとなることに。過去最大級の「やっちまった」カードであることは間違いない。当時僕らは仲間内でバニラクリーチャーでど突き合う平和な初心者マジックを楽しんでいたのだが、世間はこの壺にグッチャグチャにかき回されていたというわけ。今思うとなんだか、国外のことを教えられずにぬくぬくと育った戦争を知らない子供たちって感じだな...いやまあ幸せだったよそれで。
今週は「記憶ウィーク」
岩SHOW Card of the Day 2018/04/13《記憶の点火/Ignite Memories》
岩SHOW Card of the Day 2018/04/12《祀られる記憶/Enshrined Memories》
岩SHOW Card of the Day 2018/04/11《痛ましい記憶/Painful Memories》&《苦悶の記憶/Agonizing Memories》
岩SHOW Card of the Day 2018/04/10《暗記+記憶/Commit+Memory》
岩SHOW Card of the Day 2018/04/09《倒れし者の記憶/Remember the Fallen》