Boonsや5ブーンカードという言葉を聞いたことはあるだろうか。Boonとは恩恵・恵みのことで、『アルファ』の時点で5つの色にそれぞれ用意された5種類の恩恵を表すカードのサイクルのことである。これらのカードには共通点がある。
いずれもインスタントで、1マナで、そして3つの恩恵を受ける。《巨大化》は1マナでクリーチャーに+3/+3、《稲妻》は1マナで3点ダメージ、《暗黒の儀式》はワンランク上の強さで1マナで3マナ得る。これらの遥か上、頂点に輝くのが《Ancestral Recall》で1マナで3枚ドロー。まあアンリコはちょっと別として、残りの3枚は長きに渡り様々なフォーマットで活躍した。一番好きなカードにこれらを挙げる人もいるんじゃないだろうか。では、白は?これが残りのブーンに比べてグーンと弱くてガクーンとするのである。というわけで《治癒の軟膏》だ。
1マナでプレイヤーかクリーチャーに与えられるダメージを3点軽減するモードと、プレイヤー一人が3点のライフを得るモードの2つのモードを持つ。なので最古のモード呪文でもある。ただ...だからどうしたという話である。3点のライフ回復は、ハッキリ言ってカード1枚を使ってやることじゃない。
ダメージ軽減モードはクリーチャーを守るのに使えることもあり、戦闘でこちらのクリーチャーのみが一方的に生き延びるコンバットトリックとなるので、使い道がないという訳ではない。ただ、同じようなマナ域でもっと使いやすい呪文が多いので、構築のデッキにこれをわざわざ入れる必要はほとんどない。モード呪文の良いところは使い分けによって腐りにくいことだが、先に述べたように3点回復はカード1枚を使ってすることじゃないのが痛いところ。
ここまでさんざん性能は低いと言い続けてきた、僕はこのカードのこの絶妙に弱い感じが大好きである。学生時代に家にある雑多なカードでキューブドラフトをやっていた時には、わざと各色にこれのような構築ではどうしようもないけどカードはあんまり捨てたくないから残してたものを多めに投入し、それらに活躍の場を与えてやろうとしたものだが、軟膏は時にシブい働きをして「ちゆのなんこうつよすぎ~!」なんてセリフも飛び出して笑ったものである。活躍できないカードは、活躍する場を作ってやればよい。こういう逆転の発想がカジュアルマジックを長く遊ぶ上では肝要だ_と個人的には思っている。
なんでぬめぬめウィークにこのカードを取り上げたのか?軟膏ってなんかぬめってそうだし、その最初のイラストは背景が赤と黒のマーブル模様でぬめぬめしてて「本当に治療に使って良いのか?」と躊躇させるサイケデリック感がたまらないからである。この我が道を行くマジック黎明期のアートの数々、心から好きだ。
今週は「ぬめぬめウィーク」
岩SHOW Card of the Day 2018/05/08《苔犬/Mossdog》
岩SHOW Card of the Day 2018/05/07《のたくる塊/Squirming Mass》